男同士、一つの部屋で寝泊まりした経験がある人は多いに違いない。旅行もそうだし、寮生活の経験がある人もそうだ。終電を逃し、友達の家に駆けこんだことだってあるはずだ。ただ、布団を共有した経験、つまりベッドを共にしたことがある人は多くないはず。だがしかし……。

ズバリ、私(筆者)はある。しかもそのとき、相手から最後の最後に理不尽なセリフを投げかけられたことは今でも忘れない……。あの夜の話をしたい。

・共同生活

彼は当時、私と同じ職場の同僚であった。名前を「ダイちゃん」としよう。ダイちゃんは、底抜けにいい奴で、いつもニコニコ・性格も朗らか。争いを好まない性格で、誰からも嫌われることがないタイプ。同じ年齢であったこともあり、私とダイちゃんはすぐに意気投合した。

そんな私とダイちゃんに、会社から長期出張の指令が下った。数カ月間、2人は地方のマンションで共同生活を送ることになったのだ。2LDKの物件で、トイレ・キッチン・風呂・リビングは全て共用。唯一、別々だったのが寝室である。

私とダイちゃんの共同生活は上手くいっていた。会社のため、同じ目標を共有し、昼も夜もなく働いた。お互いにフォローし合い、彼のためなら多少の無理はしたし、彼もまたそうしてくれた。そんなとある日の真夜中だった……。

・ベッドにもぐり込んできた!

自分の寝室で、寝ているとドアが開く音がする。元々眠りの浅い私は、薄目を開けて、ドアの方を確認した。ダイちゃんが立っている……。しかもフラフラとこっちへ向かってくるではないか。「!?」と思っていると、私のベッドにもぐり込んできたのだ……!

彼は私に何をするでもなく、背中を向けてただ寝ている。怖いというより「なんなの?」という気持ちの方が強かった。「ねえ、なにしてんの? あっちで寝ろよ」と話しかけるとダイちゃんは、「だから寝てるから寝るんでしょ」と、か細い声で意味不明な言葉を返してくる。

そんなやり取りが続くこと数分……。当然私は眠れない。ダイちゃんはいい奴だが、「まあいいか」とは流石に思えない。なんなんだよ……と思っていると、突然彼は体ごとこちらに反転してきた! ここで初めて恐怖の感情が発生! やべえぞ、これっ!!

・去り際の捨てゼリフ

すかさず強めのパンチをボディに叩き込み、「あっちで寝ろって!」と大きめのボリュームで告げる。すると、彼はムクッ起き上がり、ドアの方へ歩いて行った……。そして立ち止まりこちらに体を向け、首をかしげながらこう呟いたのだ。「でもこの話、絶対俺は悪くないよな」と……。

後から判明したことだが、彼は『夜の三冠王』というコードネームを持っていた。一瞬かっこよく聞こえるかもしれないが “いびき・歯ぎしり・夢遊病” の三冠王である。そう、あの夜の彼は夢遊病だったのだ。あくる朝、彼にその話をしても全く覚えておらず、ゲラゲラ笑って聞いていた。

ダイちゃんとは今でも友達である。そして今でもいい奴である。ただ……ただ……!「でもこの話、絶対俺は悪くないよな」と言われたことは決して忘れない。いや、ダイちゃん。夢遊病でもなんでも、この話はアンタが悪いよ。

Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.