『シティ・オブ・ゴット』の世界! ブラジルのスラム街「ファベーラ」に入ってしまったらこうなった(後半)
・頑丈な鉄網で覆われた窓
坂道は緩やかな傾斜で、歩くこと自体はほとんど苦痛ではなかった。だが、私は坂道を上り始めてからすぐに、あることに気が付いた。それは、多くの家の窓が、目の細かい鉄網で覆われていること。ブラジルのホテルなどでも同様の光景が見られることはあるが、今まで見たことがないほど頑丈な防備である。
・引き返すことを決意させた理髪店店主の目
「もうそろそろ引き返した方がいい」そう思いながらもなかなか戻らずに坂道を上り続けていた時、私はある理髪店の前を通り過ぎた。店内には、あらゆるものが散乱しており、理髪店だと理解するのにしばらく時間がかかる、そもそも店なのかどうかを理解するのにも時間がかかる、そんな店だ。
中で店主らしき男性が散髪用の椅子に腰掛けながら休んでいたのだが、私はその男性と目があった。というより、男性が私を睨みつけたと言う方が正確かもしれない。その目は、あまりにもウェルカム感ゼロ。むしろ不信と拒絶の色が浮かんでおり、ささくれ立っているにも程があるような視線であった。
この時点で、私は薄々感づきながらも、どこか認めたくなかった現実を受け入れた。この坂道を上って行けば確実にヤバいことになる。旅行者が来るような場所ではなかったと。
・響き渡る口笛
そのまま私は180°ターン。来た道を引き返すことにした。ところが、しばらく坂道を下っていると、丘の下の方から口笛が聞こえてきたのである。それも1人ではない。何人もが同時に吹いている。その方向に目を凝らすと……10人前後の集団がいたのだ。
一瞬、心臓が跳ね上がりそうになった。「こんな所に入った自分が馬鹿だった! 殺(や)られる!!」と思ったが、そこに戦闘的な空気はまるでない。むしろ逆である。よく見ると彼らは、腕を上げて動かし「帰ってこい!」のジェスチャーをしていたのであった。
・声をかけたブラジル人の青年を発見
その集団との距離が近づいていくに連れて、私は彼らの中に声をかけた青年がいることに気がついた。しかも彼らのうち何人かは、ちょっと前にこの近くのバス停で降りた人ではないか。
つまり、こういうことである。坂を登っていく私の姿を、この近くの誰かが見ていたようなのだ。その人は恐らく「おい! ヤバい場所へ行こうとするヤツがいるぞ!」と周囲の人に伝えたに違いない。
彼らは丘を登っていく私の後ろ姿を見て、何とか危険を知らせようとしてくれたのかもしれないが、私は全く気付かない。そこで、周りにいた人をかき集めて、口笛やらジェスチャーで危険を知らせてくれたのである。
私がそのサインに気がついた時には、集まった人数は10人前後になっており、中には私が声をかけた青年やバスで降りた人も含まれていた、というわけだ。
・手で拳銃の形を作ってレクチャー
私が坂を下りきると、彼らが周囲に集まってきた。そのほとんどの人が、坂の上の方を指差した後で、手で拳銃の形を作る。「ファベーラ!」と言う人もいる。言葉は全く通じないが、言っている意味は完全に理解できる。理解するのが遅過ぎたが、痛いほどに分かる。
私は彼らに何度も「オブリガード!」と言い、「もうあそこには行かない、ホテルへ帰るよ」ということを何とか伝えると、彼らはやっと解散したのであった。
・ブラジルの怖さと優しさ
彼らブラジル人が、大人数で口笛を吹いて必死で危険性を知らせてくれたことからも、ファベーラのヤバさを窺(うかが)い知れるだろう。確かに、恐ろしい。だが同時に、そのために集まってくれた人、必死に口笛やジェスチャー教えてくれた人が大勢いたのもまた事実だ。
ブラジルには、実際に入るのも危険なほど恐ろしいエリアは存在する。しかしその一方、親切で、心暖かい人も多い。それが身にしみた一件であった。
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
▼これが誤って上ってしまった坂道である
▼その周囲にあった坂道。最後に教えてくれたブラジル人いわく、この道も非常に危険とのこと
▼ブラジルのスラム、ファベーラ。これ以上は近づけなかった
▼無数のパラボナアンテナが立つファベーラの家の屋根。写真がブレている理由はお察し下さい……
▼美しい海岸線と観光客が泊まるホテル、そして治安のよくないエリアが混在している。ブラジルを象徴するような光景だ
▼治安の悪いエリアのすぐ近くには海岸線。その海岸線には、多くのホテルが立ち並んでいる
和才雄一郎






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