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『ナターシャ通信』は、ウクライナに住むナターシャがお届けするコラム。今回はウクライナ東部の現状について、ナターシャが切実な思いで伝えています。今まさに起きていることを、彼女の言葉で綴っています。ぜひ目を通してください。

皆さんこんにちは、ナターシャです。実は正直いうと、書きたいことが1つあったのに、ずっとこの話から逃げていた気がします。「パリ」やほかの軽い話について書いたりして、すごく痛い話があるのに、私の実家であるウクライナの東部の話を書けませんでした。

でも今朝起きた時に、「誰かが助けてぇぇぇ」とものすごく叫びたくなりました。これからする話は重いかもしれません。正直過ぎるかもしれません。まじめ過ぎるかもしれません。でも一番書きたい話です。もしよかったら、私の実家の話を読んでくれませんか?

・自由と平和を愛する

「ウクライナ人はどんな人ですか?」と聞かれた時に、「自由と平和を愛する国民だ」と私はいつも答えました。今は東部のウクライナ人が「平和」を夢でしか見られません。いや、彼ら達が夢さえもみることが出来ません。夜中に他の人達が甘い夢を見ている時に、東部のウクライナ人は弾丸が発射している音を聞きながら、地下で神様に「平和」を祈っています

・デモではなく戦争が起きている

東部では分離主義者と軍隊との間の戦争が続いています。あそこではデモの規模ではなく、本当の戦争が続いています。東部の(ルガンスク州とドネツク州)町の中には普通に戦車が走ったりして、森の中には軍人や分離主義者の死体がたくさんあります(涙)。

でもどこかで、いなくなった息子のことをまだ知らずに、「息子が無事に帰られるように」とお祈りし続けているお母さん達も少なくはありません。いったいあと何日後? いや、あと何カ月後? もしかして何年後に、「平和を愛する」ウクライナ人が平和な毎日に戻れるの? あとどのぐらい涙や血が必要なの? 神様……。

・心の中は爆発しそう

実は、私の実家は東部にあります。強いお父さん、優しいお母さん、昔話が上手でリンゴのパイがすごく美味しく出来るお婆ちゃん、格好いいお兄ちゃん、全員が東部に住んでいます。この2カ月毎晩彼らに電話をするときに、「電話に出ることは出来ません」とアナウンスが流れると心の中は爆発しそうです。朝、起きる前に「今日も私の一番大切な人が無事に生きますように」と祈るしかありません……。

・「ゼッタイにどこも行かない!」

ウクライナの大統領は、「東部の人は避難して下さい」と呼びかけていますが、実際に自分の家を捨てられない人がたくさんいます。年配の人たちは「ゼッタイにどこも行かない! 自分の故郷をゼッタイ捨てない!」と言い続け、「避難したいが、子供3人いるし、どこかで新しい生活を始めるお金がない、いや電話代さえたりない」という人もいます(涙)。

ですから、毎日戦争のなかに生活をしている家族も少なくはありません。東部の男の子たちは戦争ごっこが大好きだったのに、今は「戦争」と聞くと泣き始めます。一方、「子供を守りたい、家を捨てても避難したい!」という人もいます。スーツケース1つとパスポートだけを持って、全然知らない町で生活を始める人もいます。

・祈るしかない

今は私の頭の中に

「東部の人はどうすればいい」
「今の戦争は誰のせいなの?」
「あとどのぐらい東部の人が苦しむの?」
「誰か助けて!」

そんな言葉でいっぱいです。どうして戦争(第2次世界大戦)を1回経験したことがある人達が、再び恐ろしい経験をしなければなりません!? 当時4歳だった私のお婆ちゃんは、弾丸の発射の音は一生忘れないと言っていましたが、今年の4月からまた聞いている。どうして!?

人間って、おもしろいですね。平和な一日一日が、どれぐらい大事なのか今になってやっと分かりました。「ゼッタイ平和がもどる」と信じるしかない国民。「私の一番大切な人が無事に生きますように」と祈るしかない私……。

画像参照: ria.ru(ロシア語)
執筆: ナターシャ

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