あなたの家の隣には、何が建っているだろうか。住宅だろうか。お店だろうか、工場だろうか。大自然に囲まれて生活している人もいるだろう。となりが海、となりが山、なんて人もいるだろう。あるいは、家のとなりがパチンコ屋という人もいるかもしれない。

だが、「家の両どなりがパチンコ屋」という人は、そう多くはないだろう。まるでオセロのように、我が家がパチンコ屋に挟まれているのだ。今回は、家の両どなりをパチンコ屋に挟まれて育った私(筆者)の体験談を、あるある形式でお伝えしたい。

【家の両どなりをパチンコ屋に挟まれて育った人あるある50】

その01:午前10時になると『軍艦マーチ』がステレオで聞こえてくる。
その02:窓を開けると目の前に換気扇がある。
その03:窓を開けるとタバコくさい。
その04:違う窓を開けると焼き肉の匂いがする。
その05:そのまた違う窓を開けると便所の匂いがする。
その06:そのまたまた違う窓を開けるとゲロ臭がする。
その07:自分の部屋の窓を開けると、「ウチを追い出してウチのビルをブッ壊したら新しいパチンコ屋のビルを建てて連結します的なドアサイズの仮窓」が見える。
その08:夜になっても屋上はネオンサインがあるから夜10時すぎまで昼間のように明るく、ちょっとした遊園地気分。
その09:天体観測が好きだったのに、空を見上げても星がまったく見えない。
その10:長州力の入場テーマ曲『パワーホール』がよくかかっている。
その11:武藤敬司の当時の入場テーマ曲『HOLD OUT』がよくかかっている。
その12:たまにアントニオ猪木の『猪木ボンバイエ』も流れている。
その13:窓を開けたら、パチンコ屋の場内アナウンスがクッキリと聞こえる。
その14:集中して耳を澄ませばパチンコ玉の「ジャラジャラ」も聞こえてくる。
その15:自分の部屋の窓を開けたら、手が届くくらいの距離にパチンコ屋の縦型ネオンサインがある。
その16:部屋の電気を消しても、窓がピカピカとカラフルに光ってる。
その17:毎日がディスコ状態。
その18:姉のお誕生日会の時、ウチの屋上でワーワーと姉の友達たちと遊んでいたら、パチンコ屋の仮眠室っぽい部屋の窓が開いて「ウッセーこのやろう!」とパンチパーマ男が一喝して、せっかくのお誕生日会がお通夜みたいな空気になる。
その19:姉と二人で屋上でワーワーと遊んでいたら、パチンコ屋のオーナーが住んでいるらしきパチンコ屋上階のベランダからオーナーの息子らしき少年が見下ろしていて、こっちにキットカットを投げてくる。
その20:とりあえず「ありがとう!」とお礼を言って、それを拾って「こんなのもらったよ!」と祖父に報告たら、「そんなもん絶対に食うな! チキショウめ!!」と激怒。
その21:今思えば完全に「ギブミーチョコレート状態」なので、ジーちゃんが怒るの無理はない。
その22:ひとりで屋上で遊んでいたら、パチンコ屋の上階ベランダから「パチンコ屋のビルに入っているフィリピン・パブで働いているらしき色っぽいフィリピーナ」が、ずっとこっちを見ていたが、特に被害はなし。
その23:パチンコ屋の店員が、パチンコ屋の上階からウチに向かってゲロを吐いて、バーチャンが烈火のごとく激怒してパチンコ屋に殴り込みをかける事件が発生。
その24:ウチをパチンコ屋の換金所だと勘違いしたパチンコ屋の客が、「なんで出てこねーんだよ!」と発狂しながら、ウチの玄関ドアを蹴破ってくる事件が発生。
その25:ガンガンと蹴破ろうとしている最中に警察が到着して一件落着。
その26:よく父や叔父が「謎の暴漢」みたいなヤツに白昼堂々襲われるも、父の兄弟は共に柔道有段者なため必ず勝つ。
その27:が、あるとき、謎のヒットマンを「柔道式の押さえ込み」でホールドしていた叔父が、下からボールペンで目を刺されるというバイオレンス事件も発生。
その28:ウチの軒先に空き缶とかのゴミを置いていくパチンコ屋の客がいて、そのたびにジーちゃんが烈火のごとく激怒し、最後は必ず「テヤンデチキショ!」とか叫びながら塩をまく。
その29:何か事件があると、ジーちゃんが「バーちゃん塩もってこい!」と叫ぶ。
その30:毎日が戦争。
その31:ファイナルファイトのステージ1みたいな空気。
その32:どんどん治安が悪くなる。
その33:夜になると、当時の「チーマー」がウチの下でたむろってる。
その34:もう時効だから告白するが、俺もパチンコ屋と戦わねば……と思い込み、エアガンでパチンコ屋の「パ」を射撃して「チンコ」にしたことがある。
その35:が、2日後には直っていた。
その36:近所のゲーセンに毎日通っていたころ、両隣のパチンコ屋に対し「焼肉屋とかカラオケじゃなくてゲーセン入れろよ!」と見当違いのブチギレをする毎日。
その37:そもそも両隣がうるさいから、音楽ガンガン鳴らしても平気だけど、あるときゲームのサントラCD『テトリス』をフルボリュームで流してたら親父に殴られた。
その38:大型トラックが乗り付けて真夜中に行われる『新台の入れ替え作業」を、静かに窓から見守る。
その39:ちなみに、なぜパチンコ屋に挟まれたのかというと、私が幼稚園の頃にウチの隣にパチンコ屋ができる → 数年後にパチンコ屋が「土地を売ってくれ」 → ジーちゃん「けえれ(帰れ)!」&塩で抗争勃発。
その40:その数年後、パチンコ屋がウチの隣にあった広い駐車場の土地を買い取って、さらにデカいパチンコ屋を建てる → オセロ状態 → 抗争激化。
その41:夜、まわりが明るくないと落ち着かない。
その42:夜、まわりがうるさくないと落ち着かない。
その43:なんやかんやあって挟まれてから約6年後、深い事情があったらしいが、いきなりパチンコ屋がウチの土地を買い取ることになり、急転直下の引っ越しが決まる。
その44:バタバタと賃貸の「仮住居」に引っ越ししたら、そこが木造のオンボロ平屋で、まわりは静かで、ネオンサインなんて当然ないから真っ暗で、家の前の道路をトラックが通ったら家全体がガタガタと揺れるような住居で、静かに泣いた。
その45:引っ越した翌日にウチを見に行ったら、もうビル全体に白い工事用のカバーがかけられていた。
その46:引っ越した翌々日にウチを見に行ったら、もう完全にぶっ壊されていた。
その47:がれきの山から、私の部屋にあった「プロレスラーのポスターをベタベタに貼ったふすま」が見えて、ポスター内の蝶野正洋が悲しげな目でこちらを見ていた。
その48:家がとんでもない貧乏になったのかと思い込み、いきなりそば屋の出前のバイトを始めた。
その49:今でも夜10時ごろになると、家の両サイドからステレオで聞こえてきた『蛍の光』を思い出す。
その50:でも、エキサイティングで楽しかった。

執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.