大衆演劇? どうせ、ジジババ相手の茶番劇だろ! そう思う人も多いだろう。私もそうだった。東京に二つしかない大衆演劇専門劇場「篠原演芸場」前を通りかかるまでは……。
あからさまに普通じゃない演芸場周辺の妙なギラギラ感と、三時間半の公演で全席1600円均一という破格の木戸銭が気になった私は、翌週再び、北区十条の同じ場所に立っていた。この日は映画やドラマでお馴染みの早乙女太一と並び称される、大衆演劇界の四天王・大川良太郎率いる劇団九州男の公演日。そしてこの夜、私は大衆演劇の虜となってしまったのだ!
・ドラえもんおばさんから小学生まで、意外に分厚いファン層
演芸場では開場前から熱心なファンが行列を作っている。失礼を承知で言わせていただくなら、99%が おばさん……中には おばあさん に近い人も少なくない。そんな彼女たちへの気遣いか、篠原演芸場は椅子ではなく、畳に座椅子である。
前列は連日予約でいっぱい。私はやむなく最後列近くに席をとったが、最後列といっても最前列まで直線距離で4メートルあまり。私は売店のウーロンハイをごくり。周りのおばさんは好き勝手に持ち込んだ弁当やお菓子を食い散らかしつつ、開演を待った。
・開演15分前、場内の平均年齢が一気に下がる!
ドラえもんグッズで全身を着飾った40代の女性が若手に見えるほど、おばさんばかりだった場内の平均年齢が一気に下がったのは、開演15分前。どういうわけか、ここにきて20代の若い女性が大量に雪崩れ込み、空席がほぼ埋まる。最前列には小学生とおぼしき女の子も……! そして皆が皆、常連のようだった。
9割超えのオバ率が一気に5割まで下がるのを見届けたように、静かに幕が上がる。男性客は会場全体で3名ほど。圧倒的に女の世界である。
・火花を散らすファンの女性。濃厚な世界に圧倒されまくり
公演は二部構成。第一部の歌謡ショーは正直「?」という感じだが、第二部のドタバタ喜劇は和やかな中にも毒を含んだわかりやすい笑いで、演劇の類にあまり興味がない私も充分楽しめた。参考までに、大衆演劇の演目は何と日替わり。1カ月間の公演期間中、同じ演目がかかることはないという。
大川良太郎座長の貫禄、演技力、踊りは見応え充分。座長が客席に流し目を送るたび、客席の女子たちから「良太郎!」と黄色い歓声が上がる。男の私も尻のあたりがムズムズするほど色気とオーラが半端ない。気合いの入ったファンがオキニの役者にご祝儀を渡すお約束シーンも生で見られて大満足。
写真撮影は原則禁止だが、歌謡ショーのパートは事実上、野放し状態。全てにおいて大らかである。面白い上にコスパ最高。これはもっと評価されるべき。皆さんも喰わず嫌いせず、ぜひ一度行ってみてほしい。
参考リンク:東京大衆演劇協会
Report : クーロン黒沢
Photo : Rocketnews24.
▼開場一時間前にはファンの姿が!
▼青木愛のポスターが真っ青になっていた。
▼三時間半で1600円って、安いよね。
▼座椅子の名札は予約席の意味。
▼客席は小じんまり。でも二階席もあるよ。
▼開場15分前、若い女性が大量にやってきた!
▼スーパーのレジ袋に入れたご祝儀を渡すおばさん。