2013年9月1日より、東京・新宿で新たな条例が施行された。「新宿区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例」である。これは以前から問題になっていた、客引き行為や勧誘行為により発生する問題を、防ぐために設けられたものである。
・罰則のない条例
条例の施行は非常に有難いものだ。しかしこの条例には罰則がない。はたして、どれだけの効力を発揮しているのだろうか。日本一の繁華街、新宿歌舞伎町の様子をたしかめてみた。
・条例の内容
この条例は以下の3つの行為を禁止している。また客引き行為が多いと認められる地域は「特定地区」に指定されている。
1.客引き行為
通行人等の不特定多数から相手を特定し、居酒屋・カラオケ店・キャバクラ・ホストクラブ・風俗店等に来店するよう誘う客引き行為を禁止します
2.勧誘行為
通行人等の不特定多数から相手を特定し、キャバクラや風俗店で働くことやアダルトビデオへの出演等を勧誘する行為を禁止します。(相手が勧誘に応じるかどうかは問わない)
3.客待ち・勧誘待ち行為
上記1、2の行為をする目的で、公共の場所で相手を待つ行為(うろつき、たたずみ、たむろすること)を禁止します
・客引き行為等防止特定地区
歌舞伎町1丁目・2丁目
新宿2丁目・3丁目
西新宿1丁目
・客引き行為等防止指導員
さらに「客引き行為等防止指導員」がパトロールを行い、もしもこの条例に違反する行為をしているものを見つけた場合、中止するように指導できることになっている。施行から数日が経って、条例の効果は出ているのだろうか?
・歌舞伎町の「表の顔」は変わらず
歌舞伎町の様子をたしかめてみたところ、いつもと変わらない雰囲気だ。居酒屋店員と思われる前掛けをつけた男性グループがおり、「このあとカラオケ、ないっすか?」と声が聞こえてくる。罰則のない条例はやはり効果がないのか? 靖国通り沿いに面した歌舞伎町の「表の顔」はいつも通りで、横断歩道ごとに客引きグループが三々五々、たむろしている。
・キャッチは警戒
だが、通りのなかに入ると、普段と少し様子が違うようだ。いつもと比べるとキャッチ(付き合いのあるお店に客を誘導する客引き)の数が少ないように思う。声をかけてきたキャッチの1人に、「9月から条例でしょ」と聞いてみた。すると次のように答えた。
キャッチ「そうなんすよ。9月1日から(条例が)厳しくなっちゃって。自分の連れ(キャッチ仲間)もあんまり出てないですね」
記者「でも、罰則がない条例なんでしょ?」
キャッチ「いや、どうなるかわかんないですよ。わかんないから、みんな様子を見てる感じですかね」
記者「じゃあ、落ち着いたらまた出てくることになるんじゃないの」
キャッチ「どうっすかねえ……」
・客引きの間に温度差
どうやら客引きの間でも、条例については温度差があるようだ。居酒屋やカラオケ店の客引きは、あまり普段と変わらないのに対して、キャッチは警戒感を強めている。それもあってか歌舞伎町界隈は、微妙に張りつめた空気が漂っているように感じられた。今後さらに条例の効果はあらわれてくるのだろうか。気になるところである。
▼新宿区の周知動画「新宿区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例」
▼歌舞伎町の様子。区役所付近の交差点、前掛けをした居酒屋の客引きと思われる男性2人が立っている
▼歌舞伎町1丁目旧コマ劇付近、ホストクラブの客引きと思われる男性。女性に声をかけたがスルーされる