東日本大震災における福島第一原発事故による影響で、現地では自治体や企業による除染作業が行われている。

その除染作業について、2011年~2012年に日本原子力研究開発機構(以下、原子力開発機構)が携わった事業が問題視されている。福島県南相馬市で除染現場で発生した汚染水が市内の川に排水されていたことが判明したそうだ。その川の水は農業用水としても使われていたという。

・除染モデル実証事業

除染モデル実証事業とは、内閣府が原子力開発機構福島技術本部に委託したもの。高線量地域における効果的な除染のために、必要な技術の試験として行われた事業だ。福島県浪江町、飯舘村、南相馬市などで実施された。

・除染で発生した汚染水340トンを農業用水に排水

問題になっているのは、原子力開発機構が中堅ゼネコン「日本国土開発」に発注し、南相馬市の市立金房小学校およびその周辺で行われたものだ。

共同通信によると、対象区域で除染が行われた際に発生した汚染水340トンが農業用水をとる飯崎川に流されていたのだという。その汚染水の一部には、原子力機構が排水の目安としている管理基準を超えた放射性セシウムが含まれており、総量は1600万ベクレルにも上っていたそうだ。

・南相馬市は「説明はなかった」と怒り

共同通信によると、原子力機構は汚染水の排水を知りながら、排水ルートを記載していない計画書を地元に提出していたという。

この件について南相馬市と福島県は事前の説明はなかったとコメント。さらに事後にも排水について知らされていなかったそうだ。

・原子力機構「口頭で説明しているはず」

南相馬市の反発に対し、原子力機構は書面での合意はなかったが口頭で説明しているはずとしている。

・日本国土開発「排水してもいいと理解していた」

また、事業に携わった日本国土開発は、原子力機構より説明済みだと聞いていたため排水していいと理解していたのだという。しかし、日本国土開発の東北支店南相馬工事事務所の現場代理人・陣川幸雄氏は、「地元が排水を聞いていないというなら、こちらに責がある」という旨も話しているそうだ。

実際に口頭での説明があったのかどうかは、証拠がないのでわからない。だが、このような重要な事項を口頭のみで合意を取り付けるというのはありうることなのだろうか。これ以上、国民に不安を与えるような行為はつつしんでほしいのだが……。

参照元: 東京新聞環境省 除染情報サイト