2022年8月30日の午前0時をもって、ついに避難指示が一部解除された福島県双葉町。震災から約11年半、やっと居住可能になったぞ!

午前0時の解除の瞬間には双葉駅前で町民によるイベントが行われていたようだ。全国の様々なメディアが現地入りし、今日は朝からその様子を伝えまくっている。これほどの賑わいは常磐線全線開通時以来なのでは。

歓びに包まれる双葉町の報道を見て、皆さんの中にも「ちょっと行ってみようかな」的な気分になった方がいるんじゃなかろうか。

・2本立て

7月のことだが、私は常磐線全線開通について報じた時から約2年ぶりに双葉町へ。そこで一泊した。町がどの程度復興したのか見たかったのだ。

2年前はマジで倒壊した建物や、除染されていない場所だらけでヤバかったが、今では一部を除けばほとんど好きに見て回れるようになっていて感動したぜ。

今回の記事の前半では、現地で唯一のビジホ「ARM双葉」について。どんな感じだったか、7月に一泊した時の様子を紹介するぜ!

そして後半では、震災時からほぼ当時のまま残されている建築物と、散策時に役立つ情報などをお届けするぜ! 後半だけが気になる方は真ん中あたりまでスクロールしてくれ。


・ARM双葉

ということで前半スタート。これが2021年にオープンした「ARM双葉」だ! 1泊4500円から。


外観に関しては……周辺の取材で力尽きていたのか、昼間の写真を撮り忘れていたぜ! まあ公式HPに載ってるので、そっちを見てくれ。

夜はこんな感じ。


場所的には「東日本大震災・原子力災害伝承館」や「双葉町産業交流センター」と、道路を挟んで隣り合っている感じ。双葉駅からは2キロくらいで、海までは1キロくらいのところにある。


ずっと居住はできない状態だったが、このビジホに滞在は可能だったのだ。部屋はユニットバスとベッドとTVがある、お値段相応なクオリティ。

特筆すべき点を挙げるとすれば、無料で使える洗濯機


これは工事関係者が多い場所のビジホにありがちな仕様だ。双葉町も、復興関連の作業員が多い……というか、基本的に作業員しかいないのがデフォだったろう。あとはたまに一時帰還者とか。

私も猛暑の中の散策で服がぐっちゃぐちゃになったので活用させてもらった。バックパッカー的なスタイルの人にとっても嬉しい仕様だと思う。


この手のビジホに泊まる経験が多い方ならわかると思うが、洗濯機が無料の場合、乾燥機の出力が糞ザコで、そっちで金を取られるパターンはよくあることではないだろうか。

が、ここの乾燥機はわりと常識的なパワーで、やや厚手のデニムも2時間で乾かしてくれた。乾燥機は30分100円なので、計400円で洗濯と乾燥が完了したと思えば悪くない。


素泊まりの他、朝食と夕食の付いたプランがある。私は夜遅くまで周辺の取材をする予定だったので、翌日の朝食のみのプランを選択。

そういうわけで夕食は紹介できないのだが、ロビーにはカップ麺の自販機があるぞ! 1個230円だった。


双葉町には現時点だとコンビニもスーパーも無い。隣の「双葉町産業交流センター」にはフードコートと売店があるが、夜は閉まっている。

もし筆者のように夜遅くまで周辺の散策に興じた場合には、このカップ麺の自販機が唯一のメシの入手手段となる。


朝食はバイキング形式だった。


思っていた以上に品ぞろえが豊富で、米、麺、肉、魚、野菜と、一通り揃っている感じ。


この価格帯のビジホの朝食の中ではトップクラスだと思う。名物の “なみえ焼きそば” もあった。しっかり食え! おかわりもいいぞ!!


・当時のままの建物

唯一の宿泊施設、「ARM双葉」についてはこんな感じ。ここからは後半だ。当時のまま残っている建物を紹介していくぜ!

本当なら、2年前の常磐線全線開通時に来るのがベストだったと思う。ほとんどの建物が被災時そのままで、凄まじい光景が広がっていた。

今はかなり復興が進んで、かつての状況を思い起こさせるものは減ったが……実はロケットニュース24に、現地の写真たっぷりな記事が存在する。

さらに2年を経ての復興の進み具合がよくわかる、またしても写真が豊富な記事も。


この2本を見れば、凄まじい速度で復興が進んでいることが分かるだろう。じゃあ今となっては当時の状態が分かるものは見られないのか? 

そんなことはない。立派な「東日本大震災・原子力災害伝承館」ができている。それに実は、何件か全くノータッチのまま残されている建物もいくつかあるのだ。

例えば、シャッターの壊れ具合が印象的な「双葉町消防団第二分団」の建物。こちらが2020年3月。


そしてこちらが2022年7月。微妙に変わっているので誰かが入ったのだとは思うが、おおむねそのまま。


地震が起きたのは2011年3月11日の14時46分。直後に止まったと思われる時計も残っている。


シェルのガソスタも、若干綺麗になっていたが、だいたいそのままだった。


個人商店だろうか。「総合食品 ストアーフタバ」。


デカい建物はわりと当時のままだったりする。例えば今は廃墟の「双葉厚生病院」。


当時は、ここに工事関係者用の仮設トイレが設けられていた。


恐らく侵入者を防ぐためだと思うが、警備員が駐車場で監視していた。せっかくなので、お願いして窓から中を撮らせてもらった。


今は立ち入り禁止だったので外観のみ。たぶん盗まれたら困るようなものや、薬品などはとっくに撤去済みだろう。拡大して見た限りでは、入り口付近が綺麗になっているので。


これらのノータッチ物件がなぜそのままなのかは不明だ。あえて残しているのか、それとも何らかの事情で解体の目処が立っていないのか。

いよいよ帰還が可能になった今、復興はより一層加速すると思われる。それは非常に喜ばしいことだろう。それに、当時の状況を思い出させる建物を誰もが目にしたいとは限らない

また、建物が物理的に傷んでいるケースも心配だ。安全面での問題は軽視できない。長く残される可能性は低いと思う。

今日明日にも取り壊されるものがあっても不思議ではない。かつての様子を自分の目で見たいという方は、急いだ方がいいかもしれない。


・駅の休憩スペース

ここからは散策時のお役立ち情報だ! まず、もっと今後の復興予定が知りたいという方には、旧駅舎に設けられた「休憩スペース」がおススメだぞ! ここでは復興のロードマップや、一帯に参入予定の企業の一覧などを詳しく知ることができる。


内部にはスタッフの方もいる。実は私が双葉町関連の記事で記した情報の8割くらいは、この「休憩スペース」からだ。残り2割は職質してきたポリスや、見回っているパトロールの人から。

また駅から「双葉町産業交流センター」やホテル、そして堤防のある海までは……実はけっこう遠い。どれくらい遠いかというと、見晴らしの良い交流センターの屋上からバズーカみたいな超望遠レンズを用いるも、駅が豆粒サイズになるくらい遠い。肉眼じゃ見えない。


快適に見て回るなら何かしらの交通手段が欲しいところ。そこで神なのが、駅前と交流センターにスタンドがある、シェアサイクルだ!

数は多くないのだが、100円でロックを解除して使用できる。しかも、ちゃんと返せばその100円は返ってくる。つまり無料


この世界一コスパの良いシェアサイクルは、双葉町散策時のマストアイテムだろう。さらに、交流センター内にはコインロッカーがある。


こちらも100円で利用できるのだが、なんとその100円も返ってくる。つまり無料。マナーとルールを守って活用してくれ。


・自然たっぷり

あとはまあ、せっかく行くなら夜に星を見て欲しいところ。交流センターや「ARM双葉」周辺はバチバチに明るいのだが、人口の光はそこにしかない。

ちょっと海の方角に歩いて行けば、凄まじい暗闇になる。晴れた夜に適当なカメラと三脚を持っていけば、特殊な装備無しに誰でも10秒くらいで天の川程度は余裕。冬はきっとオリオン座が凄いだろう。流星群の夜とか最高だと思う。


1つアドバイスをするなら、虫よけの網付きの帽子(超推奨)と長袖長ズボンに、手術などに使われる系の薄いゴム手袋を装備したほうがいい。

寒くなれば減るだろうが、私が行った時は星よりも多い数の蛾や蚊やよくわからないその他の虫が3秒くらいで殺到してきて全身にバチバチとぶつかってきたからな。

夏休みはもう終わってしまったが、若干涼しくなって屋外でのアクティビティには適した気候になりつつある。

11年半ぶりに居住可能になったということで、今後は変化が加速していくのだろう。今こそ訪れてみるのはいかがだろう。

参考リンク:ARM双葉
執筆&写真:江川資具

▼今後は出しどころが激減すると思うので、2020年3月に撮った復興前の双葉町の写真を大公開するぜ! 既出もあるが、初出しも多数含まれている。ご自分の足で、これ等の場所が今どうなっているのか見て回るのもいいぞ。


▼そういや、堤防自体も見どころの一つよな。デカさが凄まじいぞ。野生動物やヌカカの群れがいるから気をつけてくれよな。