いまや、中国と言えば「模倣」や「パクリ大国」というイメージが強い。アニメ作品もそのひとつ、中国オリジナルアニメと言われてもピンと来ないのではないだろうか。だが、1960年代、かつての中国は今見ても感動するほどのハイクオリティなオリジナルアニメを作っていた。

日本との国交回復前の1961年に上海美術映画製作所が発表した水墨画アニメ『小蝌蚪找媽媽』(オタマジャクシ、お母さんを探しにいく)だ。

このアニメは、母ガエル不在中に、卵からかえったオタマジャクシたちが主人公である。オタマジャクシはどんな生物にも「お母さん」がいることを知り、お母さん探しの旅に出る。彼らは途中、ヒヨコやカニ、エビなど様々な生き物と出会い「お母さん」のヒントをもらいながら、お母さんを探すのである。

その素朴なストーリーも素敵だが、特筆すべきはその絵の美しさだ。このアニメは水墨画で描かれているのだが、淡く繊細な作画は今のアニメでは見られない質感を生み出している。ヒヨコのフワフワした体は思わずさわりたくなるほど。プリプリ動くオタマジャクシはまるで生きているようだ。

美しい絵に非常になめらかな動き。現在の中国の成熟したとは言いがたいアニメーションと比較すると天と地ほどの差である!

このアニメには中国やそれ以外の国からも「何度見ても感動する」、「まさに時代を超えたクオリティ」、「現代の中国人ではとても作ることができない」、「素晴らしい。現代に継承されなかったのが本当に残念だ」と絶賛のコメントがつけられている。

今でこそ「パクリ大国」、「悪い品質」、「チャイナクオリティ」などと言われている中国だが、かつては芸術性の高いオリジナル作品を生み出していたのだ。パクリ作品はいっときはお金になるかもしれないが、長く愛される作品にはならないだろう。昔の中国はこれだけ素晴らしいものを作ることができたのだ、今後もハイクリティな作品を生み出し、人々を感動させてほしいものだ。

参照元:Youtube上海美術映画製作所(中国語)
執筆:沢井メグ