「オペラ」というとどんな印象があるだろうか。「難しそう」や「敷居が高い」というイメージが強いのではないだろうか。

なかなか敷居が高い印象が強いが、11/23(金)~25(日)に上演されるオペラで新しい試みが行われ話題となっている。なんと、オペラがアニメ・映像の企画制作会社である「ガイナックス」、そしてダンスカンパニー「コンドルズ」とコラボしたのである。

ガイナックスもコンドルズもそれぞれのフィールドで、革命を起こしたことで知られている。聞いただけでワクワクするが、その彼らとオペラが出会うと一体どのような作品になるのだろうか。その初日の様子をご紹介したい。

今回、異色のコラボが実現したのは、オペラ劇場あらかわバイロイトの公演「ガイナックス オペラwithコンドルズ『ラインの黄金』」だ。

『ラインの黄金』はリヒャルト・ワーグナー作の『ニーベルングの指環』4部作の第1部(序夜)だ。北欧神話をベースにしたこの作品は、後にファンタジーの巨匠・トールキンの『指環物語』にも影響を与えたと言われている。

そのオペラを、ガイナックス代表、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』監督、『トップをねらえ!』の脚本などを担当した山賀博之氏が演出・日本語翻訳を手がけた。

山賀氏演出の「ラインの黄金」でまず、目をひくのが舞台の上に浮かぶ巨大なリングだ。ここには日本語字幕や、場面場面の情景が映像として映し出される。物語は主にこのリングの下で進んでいく。後に登場人物たちが指輪に翻弄される姿が暗示されているかのようだ。

書き下ろした歌詞の日本語翻訳も見所のひとつだ。一般的にオペラの字幕は文学的で難しい言い回しが多い。だが、今公演では小難しい言い回しは存在しない。まるでアニメや漫画の台詞を彷彿とさせるような口語的で短く簡潔な歌詞である。

外国語で上演される舞台の字幕は作品の付属的な扱いをされがち。だが、ここではストーリーも字幕も全て舞台中央のリングに集約されている。ごく自然な目線で日本語訳を楽しむことができるのだ。字幕さえも舞台の一部、作品の一部なのである。

そして、オペラでは珍しい「ダンサー」の存在。コンドルズの4人のメンバーは、ダンスでストーリーを盛り上げる。だが、彼らの役割はそれだけではない。時に黒子として、時に劇中のモブキャラクターとして、舞台上をしなやかに駆けていくのだ。もちろん、主要キャラとのからみもあり、それより主要キャラたちは生き生きして見えた。

それにしても、なぜ、山賀氏はこのような演出方法をとったのだろうか。ワーグナーを研究しているうちに、ワーグナーの作品は映像向きで、当時の舞台技術だけでは表現しきれないものだという考えに至ったそうだ。そこで、現代の技術を使っての“忠実”な上演を目指したところ、このような演出にたどり着いたのだという。

130年も前から人々を魅了し続けていた物語に斬新な演出が加わることによって、作品には動きと奥行きが生まれたと言える。なお、こちらの公演は話題となり前売り券は完売、当日券のみの扱いになるという。好評ではあるが、今のところ、再演や2部以降の製作は特に具体的な予定はないそうだ。たった3日間の公演だけでは勿体ない気もするが……是非とも続きが見てみたい作品である。

ガイナックス オペラwithコンドルズ『ラインの黄金』
上演期間:2012年11月23日(金)~25日(日)
場所:サンパール荒川大ホール
東京都荒川区荒川1-1-1

参考リンク:ガイナックス オペラ
(文=沢井メグ
photo:Rocketnews24.

▼舞台に浮かぶ直径7メートルのリング

▼ストーリーはリングの下で繰り広げられる

photo:Yu Iwasaki

▼リングは場面によって表情を変える


photo:Yu Iwasaki

photo:Yu Iwasaki

▼コンドルズのダンサー、彼らのダンスでオペラに動きが生まれるぞ

photo:Yu Iwasaki

▼物販もあったよ!

▼登場人物の名前をロボットアニメっぽく表記したTシャツ、これはアツい!


▼終演後はキャストの皆さんが物販に立ったりお見送りをしてくれる

▼こちらが演出・翻訳を手がけた山賀博之氏だ