ムシムシと蒸し暑いのが日本の夏。そんなムシムシとした状態が大好きな昆虫といえば、家庭内を爆走する黒いギャングことゴキブリ(以下「G」と略す)である。その姿は、思い出したくないくらいのインパクトをほこり、その動きはトラウマさえ植え付ける。

しかし同時に、思い出したくもないが、思い出深い“出会い”、“戦い”、“経験談”が誰にでもひとつくらいはあるのも「G」である。寒い地方に住んでいる人も、海外の暑い国に行けば「G」が待っているので油断は禁物。

ということで今回は、私(記者)がインドで体験した最悪の「G」体験をご紹介したい。場所はデリーからバラナシまでの夜行列車。インド庶民が乗る激安価格の寝台席であり、私の席は2段ベッドの下段だった。

・寝転んで見上げたら無数の「G」がいた
ベッド横の壁には小物入れ的なポケットがあり、ガイドブックなどを入れるのに丁度良いサイズ。しかし、車内は暗く、さらにベッド下段ということもあり、ただただ眠って過ごすことにした。

ベッドに寝転び、ふと上を見上げる。見えるのは上段ベッドの床裏面だけなのだが、何かがモゾモゾと動いている。よく見ると、チャバネサイズの「G」だった。2匹いた。持参したトイレットペーパーでつぶすも、どこからともなく、また2匹あらわれた。

トイレットペーパーでつぶした。しかし、またも2匹……3匹……4匹……と、続々と目の前の天井に現れたのだ。さながら「G」会場と化した二段ベッド上段の裏面と、私の顔との距離は4~50センチ。潰さないと、ポロリと落ちてくる。

・「G」の巣は壁横のポッケだった
一体どこから湧いてくるのかと思っていたら、なんと「G」の登場地点はベッド横のポケットだった。試しにポッケをグシャグシャと力強く押してみた。すると、次々と小さな「G」がはい出てきたのだった。

今にして思えば、なぜ逃げなかったのか謎であるが、「これがインドか」と納得している部分もあり、とにかく一匹一匹トイレットペーパーでつぶした。何十匹つぶしたのか分からない。しかし結局、つぶしてもつぶしても壁ポッケから「G」は出続けるのである。

・床にも無数の「G」がいた
さらに、ふと床に目をやると、床にも常時5~6匹の「G」がウロチョロと歩き回っていた。そのうちにトイレットペーパーも全て使い切り、何も対抗できなくなった。いや、対抗するのは無駄だと思った。

そして私は寝袋をカバンから取り出し、息苦しいがチャックを全閉じして寝ることにした。一体なぜここまで「G」がいたのかは謎であるが、「これがインドか」と納得せざるを得ない大変貴重な経験である。

もしも夏休みにインド旅行をする際には、価格の安い寝台列車には十分気をつけていただきたい。特に逃げ場のない2段ベッドの「下段」には要注意。できるかぎり「上段」を買うようにしよう。

執筆:GO
Photo:RocketNews24.