ソーシャルゲームの「コンプガチャ」に関する問題で、進展があったのでお伝えしたい。この問題は当初5月5日付けの読売新聞が、消費者庁が「コンプリートガチャ」と呼ばれる商法について中止要請し、応じない場合には景品表示法の措置命令を出すと報じた。

このことは大手メディアでも取り上げられ、ソーシャルゲーム大手のモバゲー(Mobage)とGREEの2社の株価は大幅に下落、ストップ安になる状況となった。しかしここへ来て、驚くべき事実が報じられている。同庁が公開した「福嶋消費者庁長官記者会見要旨」によると、同庁は中止要請を出す準備さえ行っておらず、まだ検討段階であることが明らかになった。

一部では報道内容について食い違いが見られ、情報が錯綜しているのだが、実際のところどうなっているのだろうか? 消費者庁に問い合わせてみた。

一旦ここまでの流れを整理してみたいと思う。以下が時系列にまとめた報道の流れである。

・4月24日14:59~15:18 福嶋消費者庁長官記者会見要旨
ここで読売新聞の上原記者は、福嶋長官と次のようなやり取りをしている。

(問)読売新聞の上原です。昨日、ソーシャルゲームなどを展開している事業者たちが協議会か何かを開き、今朝の報道にもあったのですが、子どもたちを中心に利用額の制限をきちんと設けていこうと。多分自主的なガイドラインのようなものだと思うのですが、そういう動きが出ました。例えば、消費者庁として、子どもたちの実際、ソーシャルゲームを巡る金銭被害、もしくはそのトラブルみたいな相談というのは、このところ増えていたり、その辺把握しているものがもしわかればあるのかということが1点と。あと今回のような業界や業界団体の動きを受けて、改めて何か対策ですとか、注意を呼びかけるといった何かアクション、お考えの部分があれば教えてください。

(答)この問題は、消費者庁としても注目をして、動きを注意深く見ています。相談件数の推移というのはわかりますか。相談件数の推移は、ちょっと今手元に資料ありませんので、また終わったら至急お知らせするようにします。事業者がそれぞれ自主的な取組みを始めているということも把握していますので、そういった取組みにもし協力できるところがあれば、協力することももちろんやぶさかではありませんし、適切なものになるように今は注視をしていくということです。消費者庁として、景表法上、場合によっては問題になるようなケースが出てくれば、そういうものには適切な対応、すぐ法的処分ということに限らず、景表法上の問題がどうなるのかということもちゃんと見ていかなければいけないと思っていますので、そういった検討も内部では今しているところです。

(問)最後におっしゃった景表法上の何かやらなければいけない部分など、検討しているということなのですけれども、もうちょっと例えばそのイメージとして、こういうケースだとこういうことが可能性としてあるですとか、何かこういう場合だと、景表法だけではなくて、場合によっては警察なんかと連絡を取り合った一種詐欺のようなことが悪質な場合には行われることもあるかと思うのですけれども、何か想像されるケース、もしくはイメージされているケースのようなものがあれば、もしわかりやすいものがあれば教えていただきたいのですが。

(答)ちょっとまだ結論を出していない段階で、余り予断でお話しするようなことは避けたいと思いますが、ソーシャルゲーム上のガチャなど、それ自体が直接景表法上問題が生じるとか、対象になるということではないと思いますが、カードを組み合わせて、組み合わせによってレアカードが当たるというような仕組みがあります。これは場合によっては、景品に当たるということも考えられますので、それを踏まえた考え方を整理をして、消費者庁の考え方をまず示すということが必要なのではないかと考えています。そういった検討もしているところです。 消費者庁HPより引用)

・5月5日 読売新聞
5月5日付けの読売新聞で「コンプガチャは違法懸賞、消費者庁が中止要請へ」と題して、次のように掲載された。

「携帯電話で遊べる「グリー」や「モバゲー」などのソーシャルゲームの高額課金問題をめぐり、消費者庁は、特定のカードをそろえると希少アイテムが当たる「コンプリート(コンプ)ガチャ」と呼ばれる商法について景品表示法で禁じる懸賞に当たると判断、近く見解を公表する。同庁は業界団体を通じ、ゲーム会社にこの手法を中止するよう要請し、会社側が応じない場合は、景表法の措置命令を出す方針」(読売新聞より引用)

・5月7日12:08 ブルームバーグニュース
ブルームバーグが同庁表示対策課の片桐一幸課長に電話取材をしたところ、次のように回答している。

「同庁表示対策課の片桐一幸課長はブルームバーグ・ニュースの電話取材に「コンプガチャは景表法違反の方向で検討している。近く見解を公表する」と述べた。コンプガチャ中止の要請先は未定としている」(Bloombergより引用)

↓ 

・5月7日15:20 ImpressケータイWatch
景品表示法の「絵合わせ」について、ケータイWatchが消費者庁に問い合わせたところ、次のようなコメントを得ている。

「表示対策課の担当者は、「会見で長官が指示した通り、検討が始まった段階。中止要請や措置命令などは何も決定しておらず、そういった考えもない。事業者名を出したこともない」とする。担当者は、検討結果を公表するかどうかも現時点では未定であるとし、報じられた件について、「記事内容とは異なる」と否定している」(Impressより引用)

・5月7日17:45 消費者庁への電話取材
これらを踏まえて、当編集部で消費者庁に問い合わせてみた。

記者:「コンプガチャ中止要請」、および応じなかった場合の「措置命令を出す」というのは事実か?
担当:現在のところ検討段階である。

記者:表示対策課の片桐一幸課長は、「景表法違反の方向で検討し、近く見解を公表する」としているが、具体的に話が進んでいるのか?
担当:検討しているのは事実。しかしどの企業の提供している、どのサービスが対象ということではなく、コンプガチャに代表される「絵合わせ」の違法性について、検討している段階。まだ始まったばかりである。

記者:片桐課長は「近く公表する」と言っているが?
担当:繰り返しになるが、まだ始まったばかりで示せる段階ではない。

以上、担当者は「検討が始まったばかり」であることを繰り返すに留まった。かねてから同庁はソーシャルゲームのガチャの問題を把握しているのだが、法的措置等については検討の段階であり、具体的な要請を出すような状況にはないようだ。したがって、以前の記事でもお伝えしたようにモバゲー・GREEともに消費者庁から要請は来ていないと回答している。

いずれにしても、この問題はどのような決着を見せるのだろうか? しばらく目が離せそうにない。

Illustration:Rocketnews24