私の名前は褌シメタロウ。日夜日常の些細な出来事について、深く思いを巡らし、実働時間を無視して記事を書いているライターである。
好みの服装とは、当然ながら人によって異なる。本人が自分に相応しいものを取り選んで着ている場合は良いのだが、傍目に不似合いと思うものを着ている人も少なくない。特に私が、世の中でもっともミスマッチと考えてしまう服と人物のカップリングがある。それは「おばちゃん」と「ヘビメタTシャツ」だ。
ミスマッチというのは少々言いすぎかもしれないのだが、この二者の間の接点は乏しいはず。しかし時々街で、ヘビメタTシャツを着ているおばちゃんを見つけると、「どうして出会ってしまったのか」と考えずにはいられない。
この不思議の原因を探るために、緊急ミーティングを行ったのである。
今回のミーティングの参加者は、自称おっぱい上級者のS氏、最若年のZ氏の2名である。他のメンバーは、会合を開くまでもないという理由から参加を辞退した。
さて、まずは二者の接点から考えてみたい。我々が考えうる二者が出会ってしまった原因は以下の通りである。
■おばちゃんとヘビメタTシャツが出会って原因リスト
・ おばちゃんの子どもがヘビメタファンだった
・ おばちゃんがたまたまデザインを気に入った
・ もらいもののTシャツがヘビメタだった
・ 年始の福袋に入ってた
・ お父さん(おばちゃんのご主人)がヘビメタファンだった
・ まったく理由なく出会ってしまった
S氏、Z氏の2人が挙げた理由は以上である。しかし、これだけでは根拠に乏しいと考えた私は「本当にこれだけで十分か?」と尋ねざるを得なかった。と、言うのも……。
褌 「2人は根本的な原因を究明すべく、探究心に欠けている」
Z氏 「どうしてですか? ほかにないはずですよ」
S氏 「僕も十分だと思うんだけどなあ、うんうん」
甘い! 甘すぎる! 私は心のなかで叫んだ。私の考える二者の出会い。それは非常に根本的なものである。
褌 「おばちゃんがヘビメタファンかもしれないじゃないか! 元ヘッドバンカーだったらどう落とし前をつけるんだ、お前たち!」
S・Z氏 「ええ!!」
2人は衝撃を受けたようだ。もしも私の仮説が正しいとしたなら、それを着て出歩く理由も自明の元となる。いやむしろ、往年のヘビメタファンなら、ヘビメタおばちゃんに敬意を表するべきだ。すれ違い様に「デストローイッ!」と親しげに挨拶を交わしても良いくらいではないだろうか。
かくして、我々の今回のミーティングはスムーズに結論に至った。「ヘビメタTシャツを着たおばちゃんは、ヘビメタファンである可能性が高い」、この結論を持って今回のミーティングを閉じたいと思う。随分寒くなってきたから、皆さん風邪などひかないように、腰元を温めて過ごして頂きたいものだ。
文:褌シメタロウ