先日、中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)で、温家宝首相が「インターネット利用の管理を強化する」との発言をし、国内外で話題となっている。
中国では現在、YoutubeやFacebook、Twitterなど外国の特定のサイトや「社会を揺るがす」内容や禁止ワードを含むサイトにアクセス禁止となっている。中国のネットユーザー数は既に4億人を超え5億人に迫る勢い、もちろん母数が大きいからではあるが、世界一のネットユーザーを有する国である。「有害サイト」へのアクセス禁止を開始した当初とは、状況が変わり、ネットは重要な情報発信手段の地位を占め始めているようだ。
世界一のユーザー数を誇るだけあって、ネットサービスが一度支持され始めると、その成長速度は急激なものがある。なかでも、「中国版Twitter」ともいえるミニブログの勢いは凄まじく、アクティブユーザーは昨年末で6500万人を突破。2011年中に1億人を突破する見込みである。主要メディアが5000万人規模の普及を果たすのに、ラジオの場合38年、テレビが13年、インターネットが4年かかっている。これに対して、ミニブログはたった14カ月でそれを達成しているのだ。
ミニブログの魅力はやはり「スピード」だ。Twitter同様にリツイートのような機能がついており、1つのつぶやきがあっと言う間にユーザーを介して広まっていく。巷の話題をいち早く知ることができ、多くの新聞や雑誌記者も参考にしているそうだ。
これらつぶやきにより発覚、解決した事件も多い。例えばある団体はミニブログを失踪した子どもの救出活動として利用、昨年8月の甘粛省土石流災害ではミニブログでの呼びかけで全国から20トン以上の救援物資の寄付が集まった。また、河南省大学入試合否発表ミス事件は、不合格とされた学生のつぶやきに多くのユーザーが反応したことが事件発覚の契機となったなどが挙げられる。社会的に有益な作用を見せていると言えよう。
ネットでのつぶやきが人や公共機関を動かす契機となっており、中国においてのインターネットは最早娯楽だけでなく民衆の情報発信・情報共有のツールと成長したことは間違いない。
しかし、ネットは政府にとって都合の良い作用があるだけではない。アフリカや中東で起きている民主化運動はインターネットによる呼びかけが端を発したものであり、中国でも最近「中国ジャスミン革命集会」の呼びかけに使用され、政府も神経をとがらせている。全人代での発言はそれを受けたものだろう。
だが、成熟しつつある中国インターネットを表立って規制すれば反発を招くのは必至。また既に商業主義に染まっている各インターネットサービス提供会社がどこまで政府の意向に沿うことができるのかも疑問だ。今後、中国でのネット市場の成長と規制政策の方向性、そしてネットユーザーの動向に注目したい。