1月23日、『俺たちが司会者!!』という特番が放送された。これは、ケンドーコバヤシら個性の強い売れっ子芸人8人が、人気女優を招いてMCに挑戦する、という番組。ゲストの相武紗季が、8人の中から自らMCを選んで、一対一でトークを行っていく。

この番組の面白さのポイントは、MC候補者たちの中に、明らかに司会には不向きだと思われる芸人が含まれていて、彼らが自由に暴れ回る様子をそのまま流していた、というところにある。

例えば、最初にMCに抜擢されたウド鈴木は、「チキンorビーフ」という謎のテーマを掲げて、奔放なトークを繰り広げた。「今日は、相武紗季さんを『多数』お招きして……」などと、相変わらずの「ウド節」を連発。後ろに座って見守る芸人たちから逐一ツッコミをいれられていた。

だが、何と言ってもこの番組のハイライトは、今をときめくテキトー芸人のスーパーヒーロー・アンタッチャブル山崎の出番だ。冒頭から、中身のない話を延々と続ける「ザキヤマ」こと山崎に対して、ケンコバは「何にも準備してないな……」と不安そうにこぼした。

実際、山崎の話にはとにかく内容がない。相武が帽子をかぶっている写真を見て、「どうでしょうか、帽子へのアプローチっていうのは?」と言ったり、額縁を持ってポーズをとる写真を見て「モナリザレベルですよね、額縁の似合い方が」「額縁の持っていき方で性格が出ますからね」と語ったり。そんな山崎は、ついに話題も尽きたと思われる終盤、驚くべき台詞を口にした。

「どうですか、ちょっと。軽く踊りませんか?」

おもむろに椅子から立ち上がり、華麗にステップを踏んで踊り始める山崎。相武も仕方なく、それに付き合わされる羽目になった。「ちゃんとゴール設定してるんですか?」と言った南海キャンディーズ・山里の心配をよそに、山崎はこのくだりに何のオチもつけないまま、持ち時間を終えてしまった。バラエティの常識を超えたテキトー芸人の独壇場。怪物「ザキヤマ」が暴れた後には、草木一本残らない。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田

イラスト:マミヤ狂四郎