11月11日放送の『アメトーーク』のテーマは「運動神経悪い芸人。」。サバンナ高橋、よゐこ有野など、お笑い界きっての運動音痴たちが一堂に会して、人並み外れた不器用な動きと情けないエピソードの数々で笑いを誘っていた。

そんな中でも、ひときわ異彩を放っていたのが、フルーツポンチの村上健志。運動音痴ぶりを検証するVTRの中で、村上は野球のノックを受けても、何でもない球を後ろに反らしてしまう。彼のあまりのふがいなさに、撮影を担当するカメラマンの辻稔はこんな一言を漏らした。

「あのコのヒザは曲がんないのかな?」

確かに、村上は、ボールを捕るときも投げるときも、常にヒザをぴんと伸ばしていた。辻の一言に触発されて、VTR明けでは村上が徹底的にいじられまくった。サバンナ高橋は「これ(村上)とひとくくりにされるのは嫌ですわ」と不満をこぼし、司会の宮迫も「村上さん、これは大事件ですよ」とあきれた。フルポン村上が、「運動音痴」の代名詞として新たなポジションを確立した瞬間だった。

VTR撮影現場でカメラマンが何気なく発した一言が、編集の過程でキーフレーズとして拾い上げられ、テロップを付けられ、それに導かれるようにして芸人同士のトークの方向性が決まっていく。このような演出の裏には、些細なことも見逃さずに番組に生かそうとする制作スタッフの笑いへの徹底した貪欲さがある。『アメトーーク』の絶対的な人気を支えているのは、制作スタッフと出演者の志の高さにあるのだ。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田

イラスト:マミヤ狂四郎