11月3~7日の日程で開催されたラーメンの一大イベント「東京ラーメンショー2010」。昨年に続いて2回目の開催となる今年、全国17都道府県から100店舗以上の名店が軒を連ねた。会場となった駒沢オリンピック公園は、うまいラーメンを求める人でごった返し、各店舗には長蛇の列が。

そのラーメンショーで一風変わった催し物が行われたのだ。その名も「エア湯切り選手権」。あたかも湯切りをしているような動作を行い、そのパフォーマンスを競うというものだ。前代未聞のこの珍妙な競技(?)に私、佐藤も挑戦してみることに! 果たして結果は?

昨年初めて開催された「一般社団法人日本ラーメン協会」の主催する東京ラーメンショー。ラーメン業界の活性化を目的に全国から選りすぐりの名店が集まり、ここでしか味わえないラーメンの味を競い合った。今年の目玉は、なんと言っても名店同士のコラボレーション。ライバル店同士がガッチリとタッグを組んで、今までにない全く新しい味の創造に挑戦したのだ。当初の期待通り、「博多一風堂」、「蒙古タンメン中本」、「せたが屋」のコラボラーメンの店舗には長蛇の列が続き、期待を裏切らない味でファンを魅了したようだ。

もう1つ、このイベントで注目されていたのが、史上初の「エア湯切り選手権」。エアギターと言えば、すでに多くの人がご存知だと思う。ギターなしで行うギターの弾き真似である。同じようにエア湯切りは、ラーメンの湯切りの真似をするパフォーマンスだ。ラーメンショーの情報を受け取った私は、ラーメンよりもむしろエア湯切りに注目していた。こんな面白そうなイベントに参加しない手はない。迷わず応募し、ステージに立つことに。

選手権が行われたのはイベント4日目の11月6日である。会場に着くと、すでに出場予定者が集まっていた。私は控え室に入ってすぐに「しまった!」と思った。服装の準備を怠ったのだ。参加予定者は、ラーメン店の従業員さながらに頭にタオルを巻いたり前掛けをしたりしていたのだ。だが私は普段通り、シャツにチョッキを着て来てしまった。すでに見た目で負けている。

さらに、参加者らはエア湯切りのモーションを繰り返し練習したり、演出をイメージトレーニングしていたりする。実のところ、私は参加する気満々だったクセに、湯切りのモーションをしっかりと決めていなかった。今さら慌ててもどうしようもない。まあいいか!と開き直って出番を待つことに。

しばらく待っていると、出場予定者はステージ脇へと移動し、いよいよ大会が始まった。ルールは至って簡単だ。「いかにも麺があるように、エア湯切りをすること」、これだけである。評価基準は技の優美さ、鮮やかさ。そして何より観客の皆さんを楽しませることである。3人の審査員がパフォーマンスを評価し、優勝決定戦への出場の可否を決める。

出場順番が3番目だった私は、ステージの脇で前の2人の演技を見た。2人ともすごい。今まさに厨房に立ち、ラーメンを調理している姿がありありと浮かんでいる。熱く立ち上る湯気さえ見えてくるようだ。審査員も2人の演技を高く評価した。

そしてついに私の出番に。「3番目の挑戦者は、佐藤さんです! 佐藤さん、どうぞ」、と呼び込みが掛りステージへ。壇上に立つと多くの観客を見渡すことができた。これは緊張する。震える右手を押さえて、いざ! エア湯切り!

私が披露した演技は「心眼ファイナル・スプラッシュ」というタイトルだ。これは天高く麺を放り投げ、その落下するG(重力加速度)を利用して麺を乾かすというものだ。心の眼を見開いていなければ、麺をキャッチすることは不可能である。

「心眼ファイナル・スプラッシュ!」

……と叫んでパフォーマンスを行った。明らかに普通の湯切りではないうえに、とても地味だったせいか、審査員からは「×」の評価が。結局、優勝決定戦に出場できず、あえなく敗退となった。

残念な結果ではあったが、私自身パフォーマンスには非常に満足している。何しろ同じ発想の人はいなかったからだ。だが優勝した17歳の男性はダンスで湯切りという斬新な技を披露し、会場を湧かせていた。彼のような奇抜な動くがなかったことが、きっと私の敗因ではないだろうか。もしも来年もエア湯切り選手権が開催されるのなら、改良を重ね今度こそ優勝したいと固く心に誓ったのだった。

(文・写真=佐藤英典)