マレーシアに暮らしていると「汚い店ほど料理がうまい」という事を痛感する。エアコンのきいた小ぎれいなレストランやカフェで食事するのも洒落ていて良いものだが、地元の友人らによれば「汚い店の方が、ひっきりなしに客が入っているし、料理の味もよい」ということだ。
記者は、かつて汚い店が苦手であった。しかし、『KEDAI MAKANAN FOONG FOONG』(アンパン・パークLRT駅付近)でクアラルンプール内アンパン地区の名物料理『醸豆腐』(ヨン・トーフー)を味わって以来、汚い店の虜(とりこ)になっている。アンパン地区出身の友人によれば、「ここの店の醸豆腐を食べに遠方から足を運ぶ人も多い。日本人客だって多いんだから!」とのこと。10回近くこの店に足を運んでいるが、いまだ日本人客に出会ったことがないのだが……。
それはさておき、醸豆腐とはどんな料理なのか? 早い話が、中華風のおでん。豆腐、またはナスやオクラなどの野菜に魚のすり身(魚と豚肉を混ぜたタネを詰めることもある)を詰め、茹でた食べ物である。醸豆腐を茹でたスープと一緒に供されることもあるが、『KEDAI MAKANAN FOONG FOONG』では汁を切った状態になっている。
やや甘めのチリソースをかけて食べると、激ウマ! すり身のプリプリした食感とシャキシャキしたウォーターチェストナッツ(中華料理の食材として使用されることの多い野菜。レンコンと似ている)の食感、ジューシーな野菜の食感のコントラストが素晴らしい。野菜がジューシーなのは、すり身を挟んだ後に素揚げしているから。こちらの店では、餃子の皮や湯葉に魚のすり身を包んで揚げた醸豆腐もあり、こちらも非常に美味なのでぜひ味わってみてほしい。オーダーは1つから可能で、80セント(約30円)。うまくて安い。最高だ。
店の外では、パートらしきおばちゃんたちがせっせと醸豆腐を作っている。野菜をカットするおばちゃん、すり身を作るおばちゃん、野菜にすり身を詰めるおばちゃん、醸豆腐を揚げるおばちゃん……。店は汚いが、おばちゃんたちの愛情がこもった絶品醸豆腐、あなたもアンパン地区に立ち寄った際にはチェックしてみてはいかがだろう? 素材の新鮮さと持ち味がストレートに伝わってくる味に、びっくりするはずだ。
ちなみにアンパン地区には、醸豆腐が非常に多い。しかし『KEDAI MAKANAN FOONG FOONG』へ行きたいと伝えれば、地元の人であれば誰もが分かるとのこと。マレーシアでもシンガポールでも醸豆腐を味わうことはできるが、この店のものに勝る醸豆腐はなかなかないだろう。
Photo by Rocket News24 Staff / 撮影・執筆 鈴木香穂里記者