集英社の『ウルトラジャンプ』で連載されている人気漫画『銃夢 LastOrder』(ガンム ラストオーダー)の作者木城ゆきと先生が、自身のブログで集英社への怒りをぶちまけている。
同漫画は現在、『ウルトラジャンプ』で再開未定のまま休載中なのだが、6月10日のブログで休載の発端(ほったん)について触れ、「少し前に『ブラよろ』の佐藤先生を批判するようなことを書いたけど、全面撤回する。佐藤先生、あんたは正しい。大手出版社はクソだ」と、佐藤先生を肯定し、集英社を批判しているのだ。
『ブラックジャックによろしく』の作者・佐藤秀峰先生は、以前から出版社の漫画家に対する扱いが不十分だとして、漫画家の地位向上を目指して様々な発言をしてきた人物である。
木城ゆきと先生は、SF格闘漫画『銃夢』(ガンム)を集英社の『ビジネスジャンプ』で1990~95年まで連載していた。『銃夢 LastOrder』はその続編で、2000年から10年にわたって『ウルトラジャンプ』に連載している。現在、同作はジェームズ・キャメロン監督の手により、『Battle Angel』というタイトルで映画化が進められている。3D映画で公開されるとの噂もささやかれているのだ。
いよいよ本格的に世界に羽ばたこうとしている矢先に、集英社との間で重大な問題が発生した。その問題とはセリフの修正にまつわるものだ。今年6月、『銃夢 / 新装版』が発刊されたのだが、発刊直前に同社は「発狂」という言葉の修正の相談を持ちかけた。「発狂という言葉が統合失調症を連想させるので別の言葉にしてほしい」と説明し、新装版全7巻のうちの3か所の修正を要請。
これに対して木城先生は当初、「すでに発売されている作品であり、なぜ今になってそんな事を言い出すのか分かりません」と、申し出に不満をもらしている。それもそのはず、連載100回目の原稿の執筆中であったため、「同志と信じ切っている作家を後ろから殴り倒し、顔を土足で踏みにじるようなことを平気でやりやがった」と、悔しさをにじませていた。
しかしやむを得ずこの修正を受け入れ新装版は発刊された。先生は事前の説明に納得がいかなかったため、同社に再三にわたって十分な説明を要求。しかし同社はこれに応じなかった。続編『銃夢 LastOrder』の単行本にも「発狂」という言葉が使われており、この扱いについて同社から「問題なし」との判断が下されていたため、先生が「どうして前の作品だけダメなの?」と疑問に思うのは普通だ。
当然、先生がこの判断を容認するはずはなく、8月3日のブログで「次回ウルジャン(ウルトラジャンプ)の『銃夢LO』は休載します。再開は未定です」と、無期限の休載を伝えている。
8月5日、ようやく同社からの説明がメールで届いたと報告しているが、時すでに遅く、最新の投稿(8月18日)では「今回初めて護国寺の講談社本社におもむき、イブニング編集長とお会いしてお話ししました。『銃夢LO』(銃夢 LastOrder)および僕の全作品の移籍の可能性についてのお話です」と、とうとう出版社を移籍する話まで持ち上がったのだ。
同日、先生は最終和解案を集英社に提出しているのだが、この和解案が通らなければ、同作は講談社の雑誌『イブニング』への移籍が決定することになるだろう。新装版発刊のタイミングで、言葉の修正を持ちかけた集英社の判断は正しかったのかもしれない。しかし、連載が終了して15年を経ており、今さらという感覚も否めない。
さらに、シリーズ新作に同じ「発狂」という言葉が使われているのであれば、同様に修正するべきではないだろうか(詳細が不明なのでいい加減なことはいえないが)。木城先生が腹を立てるのも理解できる話である。この先、木城先生と同作はどうになってしまうのだろうか? 今後の動きが注目される。