6月の下旬、北海道の無職の男性がファイル共有ソフトでアニメファイルのデータをダウンロード。そのうちの1つにウイルスが入っており、男性のパソコンは使用不能となった。この男性は被害届を提出。それを受け、警視庁ハイテク犯罪対策総合センターはウイルスをアップロードした男を逮捕した。

ウイルスを流した人物は器物損壊の容疑で8月2日逮捕された。しかしこの件においてインターネット上では「こんな同情できないウイルス被害者ってレアだろ 」や「被害者に同情できない事件」、「被害者ヅラしてるけどお前も犯罪者じゃねーかw」などの声があがっている。

ウイルスを作った人は当然悪いと思うが、アニメなどのファイルをダウンロードしまくっていた男性も悪いと思っている人が多いようだ。そこで、当編集部はインターネット上の著作権に詳しい『社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会』に男性の違法性について聞いてみた。同協会によると、この男性が行った事実が分からないため、判断はできないという。いったいどうして?

同協会はカプコン、バンダイナムコ、スクウェア・エニックスなどの大手ゲームメーカーやソフトウェアメーカーの重役らが理事を務める組織である。ソフトウェアの不正コピーやインターネット上の著作権侵害を防止するための活動を行っている。同協会の広報担当者に、今回の事件について尋ねてみた。

■ ウイルス被害者の男性は違法ではないのか?

男性が行った事実が分からないため、判断はできません。著作権法では、著作権者に無断で著作物をアップロードしたり、著作権者に無断でアップロードされている音楽や映像などを、それと知りながらダウンロードする行為は違法であると定められています。

■ ファイル共有ソフトを通じて著作物をアップロードする行為は違法か?

違法です。著作権(公衆送信権)の侵害です。刑事罰の対象ですので、著作権者から告訴されれば逮捕されることもあります。私どもが把握しているだけでもこれまでに41人のユーザーが逮捕・書類送検されています。罰則は、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方です。

■ ファイル共有ソフトを通じて著作物をダウンロードする行為は違法か?

著作権者に無断でアップロードされている音楽や映像などを、それと知りながらダウンロードする行為は違法です。刑事罰の対象ではありませんが、著作権者から損害賠償を請求されるなど民事的責任を問われる可能性があります。ファイル共有ソフトの『ウィニー』や『シェア』については、ダウンロードしたコンテンツがそのままアップロードされる機能や、ファイルの断片を勝手に送受信させられる機能があるため、ダウンロードするだけでアップロード行為に加担(かたん)してしまうことになります。そのため使わないよう求めています。

■ ダウンロードした方が「違法にアップロードされたもの」という事実を知っていたかどうかを立証するのは難しいのではないか?

著作権団体では、適法なコンテンツを配信するサイトにマークを付けたり、違法に流通するコンテンツに関する注意喚起などを積極的に行っています。私どもでは毎年行っている『ファイル共有ソフトの利用に関する調査』においても、ファイル共有ソフトでやりとりされているコンテンツのほとんどが著作権者に無断でアップロードされたものであることが明らかになっていますし、この事実も公表しています。また、ファイル共有ソフトを利用し、著作物をアップロードしていたユーザーが逮捕されたという報道も多くなされており、流通する著作物が違法であることを知らなかったと言い逃れることは事実上難しいのではないかと考えます。

■アニメをダウンロードしていたウイルス被害者の男性は、責任を問われるのか?

男性が行った事実と、著作権者の判断によります。仮に男性が違法にアップロードされていたアニメをそれと知りながらダウンロードしていたとして、著作権者が提訴すれば民事的責任を問われる可能性はあると思います。

つまり、ファイルの権利者がダウンロードした人物を訴えない限り、モラル的に問題のある行動をしていても責任を問えないということになる。非常に難しい問題だが、仮に1,000人ダウンロードした人物がいた場合、権利者はひとりひとりを訴えないとすべての人に責任を問うことはできない。時間と手間を考えると、権利者は多少は目をつむるということになってしまうようだ。

たとえダウンロードしまくっても、違法であるかどうかを立証することが難しい上に、仮に違法であっても権利者が訴えない限り責任を問えないということになる。少なくとも、ファイル共有ソフトを使わなければこのような騒動に巻き込まれる可能性は低くなるはずなので、軽い気持ちで手を出すのはやめておこう。