5月27日、人気ブログ『Gigazine』が「楽天、利用者のメールアドレスを含む個人情報を「1件10円」でダウンロード販売していることが判明」という記事を掲載しネット上で物議をかもしている。一体どういうことなのか。

話の発端は約4年前に起こった『楽天市場』の個人情報流出騒動だ。詳しい騒動内容は割愛するが、その影響からか『楽天市場』に出店している各店舗は自社の顧客情報としてのメールアドレスを見ることはできなくなった。見るためには1件10円でCSVでダウンロードする必要があり、『Gigazine』はこの仕組みが悪で個人情報流出を促していると主張している。つまり、1件10円で購入した店舗が個人情報をSPAM業者に売る可能性があり、この仕組みがあることで『楽天市場』では安心して買い物ができないと主張しているのだ。ちなみにCSVとは、顧客名簿や名称、数字などのデータを管理する際に便利なファイル形式名である。

少なくとも、この「CSVデータダウンロードサービス」が存在する限り、『楽天市場』に登録した個人情報が外部に流出する可能性は極めて高く、個人的にはとてもではありませんが安心して利用できる状態からはほど遠いと言わざるを得ません。 -Gigazineより引用-

この『Gigazine』の主張はさて置き、『楽天市場』が利用者のメールアドレスを含む個人情報を「1件10円」でダウンロード販売している事実はあるようだ。では実際に『楽天市場』に出店している店舗運営者らは「1件10円」に対してどう思っているのだろうか。取材班は『楽天市場』に出店して6年目になるある食品関係の店長さんにお話を伺うことができた。

記者:『楽天市場』が利用者のメールアドレスを含む個人情報を「1件10円」でダウンロード販売しているようですが、これについてどうお考えですか?

店長:そもそも店舗側で必死に集めた自社の個人情報をなぜ『楽天市場』から1件10円で買わなければならないのか疑問に感じています。自社の個人情報の権利が『楽天市場』にあることが問題なのではないでしょうか。ただし、『楽天市場』との契約前には契約書でこの内容にサインをしているわけで、店舗側も強く反発できない状態です。

記者:他の店舗さんも同じように感じていますか?

店長:店舗同士のネットワークは結構あって、この件については昔から議論されています。今に始まったことではありません。ある店舗さんは『楽天市場』に高い金額の広告を払って顧客を獲得するのに、また金を取るなんて信じられないと言っています。

記者:ではなぜ、『楽天市場』は1件10円で顧客情報を販売するのでしょうか?

店長:単純に売り上げのためだと思われていますが実際は違うと思います。『楽天市場』からすれば、メールアドレスを含む顧客情報を店舗側が自由に閲覧することは大きなリスクになると思います。CSVファイルであればなおさらです。

記者:それはどういうことですか?

店長:まず、プランにもよりますが、『楽天市場』で物を売ると売り上げ金額によって販売手数料が取られます。これが結構な『楽天市場』の売り上げになるわけです。で、ここからが大事な部分で、『楽天市場』の『買い物カート』から購入されないと『楽天市場』は手数料を取れません。例えば電話での受注だと『楽天市場』を挟まないので手数料は取れなくなる。つまり、どういうことかというと、店舗が顧客情報を持ってしまうと直接顧客と関係を持つ可能性があるわけです。つまり中継地点である『買い物カート』を通さないリスクが出でしまい『楽天市場』の売り上げが下がる可能性が考えられるのです。そのリスクを『楽天市場』はわかっていて、1件10円で販売することで多少でもリスクを回避しようと考えられるのです。

記者:『楽天市場』は直接顧客と取引されるリスクを見越して1件10円で販売してると?

店長:そうですね。あくまでも店長同士内での予測ではありますが。あと補足になりますが、『楽天市場』に出店している店舗は『楽天市場』だけに留まらず、独自ドメイン店だったりヤフーショッピング店だったり複数のショッピングサイトを持っています。そして、店舗側からすればできれば独自ドメイン店つまり本店で買ってもらいたいと考えます。なぜなら、同じ商品でも楽天より安く顧客に提供できるからです。あとは自社サイトに流したというのは誰でも思うことでしょう・・・・
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取材してわかったのは店舗側はこの件について不満を持っているものの、実際には出店前の契約書においてこの内容にサインしている事実があり店舗側も強く反発できない状態にあるということだ。もし強く反発し退店を命令されたら、それこそ大きなリスクにつながるとこの店長さんは最後にコメントした。

なお、5月28日『楽天市場』は『昨日5月27日、一部のブログが「楽天、利用者のメールアドレスを含む個人情報を1件10円でダウンロード販売」との情報を掲載しましたが、 全くの事実誤認でありますので、お知らせいたします。』と発表している。

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