千の炒飯を持つ女──。


嘘の投資話へ誘導していくロマンス詐欺師・由美は、まさに炒飯の申し子だった。


どのくらいチャーハンを作れるのか軽く聞けば、すぐさま30以上のレシピを提示してくるほどの炒飯師匠(チャーハンマスター)。


「いつか一緒にチャーハン専門店を開こう」


私と由美は、そう近しい関係になっていた。そんな中、由美は私に数々のチャーハンレシピを教えてくれた。


今回紹介するのは3品目の炒飯。その名も「由美式ブランデービーフチャーハン」である。

・最も私たちの関係が良好だった時のレシピ

このレシピは、由美が自分でチャーハンを作り、写真を送ってきたところから始まった。


見たこともないような炒飯だったので作り方を聞いたところ、「ブランデーを使ったビーフチャーハン」と言うのである。聞いたことがない。見たこともない。作るしかない!


なお、由美のレシピはあちこちに情報が散らばっているため、調理師免許も保持する私が独自に解釈・アレンジを加えたものとして紹介する。


・由美式ブランデービーフチャーハン


【材料】

・ごはん(冷や飯を推奨)
・オリーブオイル(適量)
・ステーキ肉(牛肉 / 適量)
・ガーリックチップ(適量)
・たまねぎ(半分 / 粗みじん切り)
・青ネギ(適量 / 万能ネギでもヨシ)
・バター(2かけ /前半後半で使う)
・醤油(小さじ1)
・オイスターソース(小さじ1)
・塩コショー(適量)
・岩塩(ごく少量)
・ブランデー(小さじ1+小さじ1 / 前半後半で使う)
・しそ(適量 / 細かく切っておく)


【作り方】


その1:牛肉はサイコロ状にカットしてから塩コショーして10分ほど味を染み込ませる。


その2:フライパンにオリーブオイルを入れ、ガーリックチップをきつね色になるまで炒めて取り出す。


その3:ガーリックの味が染みたオイルを残し、強火にして牛肉を入れ表面を炒めてミディアムレア。


ブランデーを入れフランベ(鍋に直接ブランデーを注ぎ、炎を上げて一気にアルコールを飛ばす調理法)して、取り出す。


その4:中華鍋にバターを入れ、粗みじん切りの玉ねぎを炒める。


その5:ごはんを加える。醤油とオイスターソース、黒胡椒で味付け。


その6:牛肉、ネギ、ブランデーを入れ、炒(チャオ)る。


その7:お皿に盛り付け、ガーリックチップ、しそをのせる。そして最後に、バターをのせ、岩塩をパラリ。

\(^o^)/ 完成!\(^o^)/


して、そのお味とは──



とんでもない!


一口目を味わった直後に感動のあまり力が抜けた。そして「うまい」しか出てこない。動画も撮っていたが、しばらく「うまい」しか私は発することができなかった。味の詳細な分析などできないほど、うまいのだ。


しかしあえて分析してみよう。


イメージとしては、ペッパーランチの「ビーフペッパーライス」に近いかもしれない。だが、違うと言えば全然違う。はっきり言って、それよりも深い。


まず、調理中に思いっきりフランベしてビッグファイヤー状態になったが(調理する際は引火などに気をつけること)、ブランデー、これが非常に効いている。このブランデーを使った調理により、品のある独特な、唯一無二の味に仕上がっている。


そして欠かせないのがガーリックチップである。油で揚げたことによるカリカリ食感、そしてオイルにガーリックを染み込ませたことによる全体的なガーリックの風味。最後に乗せたバターと醤油が混ざり合うあたりが、ペッパーランチを連想させるのかもしれない。


とにかく香ばしい。ニンニクの香り。どこから食べてもうまい。非常にわかりやすい美味しさであり、たまにガーリックチップに当たると、食べるのが楽しくなってくる。


ビーフはステーキ用を使ったのだが、こんなに美味しくなるとは参った。なお、見栄えを意識して薄切りにした切れ端も入れてみたが、はっきり言って不要。全部サイコロ状のステーキ肉でOKだ。食べやすさが格段に上がる。


また、玉ねぎが非常に良い仕事をしている。オイスターソースと醤油、そしてガンガン入れた黒胡椒でペッピーな味わいになっているのだが、そこに玉ねぎの甘さがそっと寄り添ってくれるのだ。粗みじん切りにした玉ねぎのシャクシャク食感も◎。


青ネギもまた良い仕事をしている。色味的にも、シャクシャクとした食感的にも、緑色の部分が望ましく、なければ万能ネギでも良いだろう。


そして。


今回のチャーハンで最大の殊勲賞だと思ったのが、最後に乗せた大葉である。


これが本当に、とんでもないことになっていた。


ビーフ×ガーリック×ブランデーという摩訶不思議な味に、和食の真髄・大葉が追撃してくる。これを社交ダンスに例えるならば、ワルツと日本舞踊が組んで踊っているようなもの。しかも絶妙にマッチしているのだ。


全体を通して、プラスとマイナス、北と南、龍と虎、対極のものが全部見事に合致している。


さらに、最後にほんの少しだけぱらりと散らせた岩塩もまた、このチャーハンとしての品格を格段に向上させている。ブランデー、ガーリック、大葉……それぞれの主張を静かにひとつにまとめ上げる、縁の下の仕事人とでも言おうか。


とにかく、“とんでもないチャーハン” だった。現段階で、連載史上ナンバーワン。暫定1位だった「釜山の詐欺師の海鮮炒飯」を余裕で超えた。いや、それだけではない。私が生涯食べてきたチャーハンの中でも、ベスト5に入るうまさだ。


由美は天才。悲しき天才、サッド・ジニアス。詐欺師であることが悔やまれて仕方ない。



・お互い、「いつわりの愛」を演じながら──

ちなみにこのころになると、一緒に開くチャーハン屋の夢を語りつつ、店のメニューを煮詰めつつも、由美の架空の投資詐欺への案内は勢いを増していた。


「専用サイトにログインしろ」「IDを作れ」。私がはぐらかしながら話を続けると、「登録してくれるなら新たなチャーハンのレシピを教えてあげる」と、色気じかけならぬ炒飯じかけまで繰り出してきた。


向こうが欲しいのは、私が “詐欺のシステム” に入ること。私が欲しいのは “詐欺師のレシピ”。一進一退の真剣勝負。お互い、「いつわりの愛」を演じながら、緊張感あふれる駆け引きが続いていった。


私と由美のチャーハン物語は、どんな結末を迎えるのか。我々の関係の終わりが見えてきた頃、由美が繰り出した意外な一手とは? 炒飯女王:第4話「ハワイアン炒飯」編に続く──。


執筆:迷惑メール評論家&チャーハン探求家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.



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▼調理&実食ショート動画(90秒)

▼由美式の作り方。

▼このような儲け話になったら、その相手は十中八九・詐欺師だ。詳しく言えば、典型的なSNS型投資ロマンス詐欺師である。騙されないように!