
私(中澤)は友達が少ない。ゆえに、基本、家に遊びに来る人なんていないわけだけど、その5畳半の男所帯に後輩が遊びに来る運びになった。えらいこっちゃ!
あわあわしながら掃除したわけだけど、掃除したらより浮き彫りとなる圧倒的エンターテイメント性の無さ。やはり後輩をウェルカムするためにはアレしかない。最後のピースを調達するべく、私は千葉の山へ向かった。
・1カ月前
時は2025年12月11日にさかのぼる。猟師である仲村さんに私はあるものの調達を依頼していた。
環境省に認定を受けた有害鳥獣捕獲等事業者『株式会社TSJ』の代表取締役であり、千葉県君津市でジビエショップ兼ジビエレストラン『猟師工房』を運営している仲村さん。私がそんなジビエ肉のプロに調達を依頼したものとは……
熊の手だ。
中国で古来より高級食材とされる熊の手。『熊掌(ゆうしょう)の角煮』は、古代中国では皇帝や貴族が食した最高級の宮廷料理だったという。
・奇跡
熊の手は素人が簡単に入手できるものではないが、プロの仲村さんに相談してみたところ、仲村さんの大親友の猟師・村井さんが運営する会社『狩猟屋』に害獣駆除した熊の手が余っているとのこと。そんなことあるんですか?
奇跡すぎたから、以前の記事で迷惑をかけたお詫びにあひるねこ記者を熊の手でもてなすことにしたわけだ。なんたって、皇帝や貴族が食した最高級の珍味の1つ。おもてなしにはもってこいだろう。
・熊の手調達
その富山県のツキノワグマの手は12月18日に『猟師工房』に到着。毛抜き等の下処理は仲村さんにお願いしたんだけど、仲村さんによると、圧力鍋でガッツリ煮た上で毛を抜いて処理にトータル3時間かかったそうな。多大なるご協力感謝します。
かくして、冒頭に戻る。あひるねこ記者を鍋パに誘った後、私は房総半島の山奥にある『猟師工房』に向かったわけだ。空が広ーい。
片道3時間かけて、現地で仲村さんから熊の手をゲット。経緯が経緯だけにバトンを受け取ったかのようなズッシリとした責任を感じた。
・調理1日目
我々は1つのバトンを繋ぐチーム……受け取った熊の手の重みにそんな実感が湧く。もちろん、無駄にすることはできない。
仲村さんに、長時間煮ることをオススメされたので、鍋パの前日から調理を開始。小手調べに1時間くらい下茹でしてみたけど、確かに肉が全然柔らかくならない。カッチカチや。あと獣臭が凄い。
そこでさらに1時間ほど煮てみたところ……
急激に出汁のようなものが出始めて煮汁が白濁した。2時間経ってから突然発生した急激な変化におののきつつも、一旦出汁の味を確認してみると……
悪くない。出汁自体はそこまで獣臭もぜず、薄いコンソメみたいなまろやかさがある。これ、使えそうやな。そこで匂い消しも含めて生姜やみりんなどの調味料や野菜を投入。
さらに1時間煮てなんとなくの下準備が完了したので一晩置くことにした。
・調理2日目
と言っても、あと何時間煮れば良いのかは不明である。あひるねこ記者が来るのは13時の予定なので、できるだけ余裕を持ちたいところだ。そこで当日朝……
あひるねこ到着の5時間30分前から煮、開始。時刻で言うと7時30分。熊の手煮込み職人の朝は早い。待ってろ、あひるねこ。私が作れる最高の熊の手煮込みを食らわせてやる。
・熊の手煮込み職人
火を見ながら仕事もおろそかにはできない。だが、キッチンに暖房はないから毛布にくるまりながらノートPCで記事を書く。水が減ったら水を足していく。朝食もここで食べる。ふぅ、今朝はひときわ冷えますな。
実際、当日は冗談抜きでこの冬イチの冷え込みなんじゃないかと思うくらい寒い日だった。渋谷の家の中と思えない状況の中、熊の手の様子を観察しつつ煮込み続けて4時間……
11時30分に小指が取れていることを確認。煮崩れるくらいならさすがに火は通っているだろう。ただ、念のため、あと30分くらいは煮込んでおこう。
煮込み時間7時間30分、寝かせも含めた調理の総時間は14時間。準備期間1カ月前に及んだ料理がここに完成。あひるねこ記者が到着したのはそんなタイミングだった。
・おあがりよ
あんなにカチカチだった肉もおたまで持ち上げるだけでプルプル揺れるくらい柔らかくなっている。煮る前は食べるところあるのか不安だったけど、ガシガシしていた骨周りがほとんどコラーゲンの塊になっていて、指の間に包丁を入れたらヌッと切れた。さあ、おあがりよ!
熊の手にかぶりつくあひるねこ記者。その味の感想は彼視点の記事『先輩の家で鍋パーティーをしたら、具材が「熊の手」だった話 / 初めて体験する『最高級ジビエの味』とは』を参照していただくとして、なんやかんやでテンションが上がっている。そうそう、その顔が見たかったんだよ。
この1カ月が報われたような気分になった。
料理を誰かに作るってのは良いものである。あひるねこ記者は記事で「一生の思い出になった」と書いていたけれど、それはこちらのセリフ。私にとっても一生の思い出になったのだった。
富山の地から村井さんへ、村井さんから仲村さんへ、仲村さんから私へ繋がれたバトンは、どうやら無事あひるねこ記者に届けることができたようである。これぞ命のバトン。全ての命へのリスペクトを込めてこの言葉を言いたい。
ご馳走様でした。
参考リンク:猟師工房公式インスタグラム「@hunter_works_drivein」、狩猟屋
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼マジで切れて作った私が衝撃を受けた
▼ご馳走様でした
中澤星児





























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