世間はクリスマスだってのに、恋人ができない!

婚活パーティで特に何も起こらなかった私は、今年のクリスマスも例年通りひとりで迎える可能性が濃厚だ。一体どうなってんだこの世の中は。

とはいえ、「クリスマスまでに恋人を作る」という夢を完全に諦めたわけではない。人間、諦めたらそこで試合終了である。

そんな諦めの悪い私は、実はマッチングアプリなるものにも手を出していた。やはり日常生活での出会いには限度がある。それならば、文明の力にお力添えを願いたい……!

しかし結論から言うと、私はマッチングアプリに向いていなかった。そして現在は既に退会している。

今回は、なぜ自分がこの手のサービスに向いていないと感じたのか、そしてマッチングアプリだからこそ出会えた、少し珍しい男性について綴っていきたい。

・マッチングアプリとは

マッチングアプリについてあらためて説明すると、ざっくり一言「アプリひとつで出会いを探せるサービス」である。

年齢、居住地、身長、職業、年収、趣味、価値観──ありとあらゆる個人情報を自ら進んで開示し、「いいね」か「なし」かを秒で裁かれる世界だ。


そしてお互いに「いいね」を押した場合のみ、マッチングが成立し、メッセージのやり取りができるようになる。そこから関係を深めていくという現代的な出会いのツールであり、今や出会いの主流とも言われている。

周囲を見渡しても「アプリで結婚しました」という人は珍しくない。時代の波には、なるべく逆らわない方がいい。


ちなみに今回私が使っていたのは、我が編集長でもあるGO羽鳥も使っていたであろう最大大手の某アプリあっぶねー。危うくマッチングするところだったぜ。


・おや?

アプリ登録後はありがたいことに数名とマッチングした。そのうちの1人が今回の主役である。ここでは仮に名前を “Bさん” と呼ぶことにしよう。

Bさんはワイルドな服装に坊主ヘアと、なかなかパンチの効いたお洒落な風貌だった。アプリには職業の記載こそなかったものの、プロフィールからは誠実そうな人柄がうかがえたため、マッチングに至った。


「今日は何するんですか?」


──そんな他愛もない会話の中で、異変は起きた。


大島「今日は飲みに行きます。Bさんのご予定は?」

Bさん「私は今日は御法事です」


………………うん?



それはどっちだ。

身内に不幸があったのか?


それとも執り行う側なのか…?


いやしかし執り行う側がマッチングアプリなどやるだろうか? ……否。一般人は法事を「御法事」とは言わない。そう思った私は恐る恐る聞いた。



するとBさんは、「……君のような勘のいい女は嫌いだよ」と、某漫画の有名シーンばりにカミングアウトしてきた。


・まさかのお坊さんとマッチングである

こうして私は意図せずお坊さんとマッチングしてしまった。

その後もメッセージは独特で、「本日も尊いお時間でした」「皆様が通勤中にお経を唱えております」など、日常生活ではまず使わない言葉が飛び交う。宗派など詳細は伏せるが、学生時代から厳しい修行に耐えてきたという話は興味深かった。


そうしてメッセージのやり取りをすること数日、とうとうデートのお誘いが来た。お坊さんの話を直接聞ける機会なんてそうそうない。純粋な好奇心もあり承諾。


ところが直前で急な通夜が入ったとのことでリスケとなった。不謹慎だが、リスケの理由までお坊さんらしい。

そうしてようやく迎えたデート当日、合流前には「線香臭かったらごめんね」という一文まで添えられていた。人生で初めて見た気遣いである。


ちなみにBさんとは数回デートを重ねたが、行き先は決まって焼肉かタイ料理だった。なかなか偏食気味である。そして余談だが、焼肉はしっかり「上」だった。


寺の話、修行の話など、聞けば聞くほど面白く、楽しい時間ではあった。しかし考えれば考えるほど、お寺に嫁ぐ未来は、正直想像できなかった。今や嫁が寺に住むかどうかは宗派次第らしいが、それでもハードルは高い。

そんなわけで、Bさんとの恋は実らず静かに幕を閉じたのだった──。


・マッチングアプリ、向いてない

さて、ここからは私がマッチングアプリに向いていない理由についてお話ししよう。

アプリの登録期間は約3ヶ月。私は「会わなきゃわからん」派なので、メッセージを重ねて気が合いそうなら会うこと自体はやぶさかではない。実際、数人とデートもした。


ただ、どうしても引っかかる点があった。

それは、出会いがアプリであるがゆえに、すべてが「恋人前提」で進むことだ。


そういう目的のサービスであることは理解している。ただ私はじっくりコトコト派だ。人となりがある程度わからないと恋愛に発展しにくい。


振り返ると、私のこれまでの恋愛はほぼ職場内だった。完全なる自論だが、職場は人となりが最も見えやすい場所だと思う。仕事の姿勢、人への接し方、周囲からの評価。そうした日々の積み重ねの中で、ようやく意識しはじめる……といった流れが多かった。


一方で、マッチングアプリは効率的かつ合理的で、今の時代には合っている。……が、恋愛スイッチが入っていない状態で距離を一気に縮められると、私はどうしても身構えてしまうようだ。

よほどフィーリングが合わない限り、このやり方で恋愛に発展させるのは難しい。そう感じた以上、このまま続けるのは相手にも失礼だと思い、退会することにした。


・合う、合わないは人それぞれ

ここまで話しておいてなんだが、実は退会直前に、驚くほどフィーリングの合う人とマッチングした。この出会いがどうなるかはわからないが、使ってみたからこそ、思いがけない出会いが転がっているのも事実だと感じている。

だからといって、私自身にこのやり方が合っているかと聞かれれば、答えはやはり「違う」になる。

アプリがしっくり来る人もいれば、そうでない人もいる。出会いの形はひとつじゃないし、どこで誰と巡り合うかなんてわからない。だからこそ、ほどほどに肩の力を抜きつつ、婚活は続けていきたいと思う。

執筆:大島あさ未
Photo:RocketNews24.
イラスト:いらすとや

▼Bさんの占い? によると、私は「馬」にまつわるアイテムを身につけるのが良いらしい。ちなみに私のベスト相性は「午年」の人だそう。