
豊かな自然が魅力の沖縄県宮古島。観光というよりは海や空やジャングルを舞台にしたネイチャーアクティビティが主役だが、島の南岸沿い、シギラセブンマイルズリゾートの一角に非常に気になる建物があった。トロピカルな海を背景に、突如としてヨーロッパ風の古城が登場するのだ。
名前は「うえのドイツ文化村」。ウェブで宮古島の観光スポットを調べると必ず上位に出てくるのに、具体的に「何があるのか」「どんな体験ができるのか」に触れている情報は少ない。旅行者のクチコミに至っては「敷地内を散歩した」という声くらいしか見当たらないほどだ。
いったい「うえのドイツ文化村」とは何なのか。城の中はどうなっているのか。なぜ沖縄でドイツ村なのか。数々の疑問を解消すべく筆者は足を踏み入れた。
・宮古島「うえのドイツ文化村」
村内にはいくつかの施設がある。敷地内を散策するだけなら無料で、季節ごとのイベント会場にもなっているようだ。
冒頭の建物はドイツのマルクスブルグ城を再現したもので、「博愛記念館」という有料施設になっている。入場料は大人750円、子ども400円。
古色蒼然(こしょくそうぜん)と表現したくなる外観で、「営業していると思わなかった」というクチコミも見かけたのだが、これは “沖縄あるある” 現象だと思われる。沖縄の建物がすぐに黒くなるのは、塩分をたっぷり含んだ海風と高温多湿な気候によるものだそう。
小さな入口から中に入ると、そのギャップに驚く。手入れの行き届いた、非常に立派な玄関ホールが迎えてくれた。高い天井に石造りの壁。しかし設備は近代的で、バリアフリーもばっちり。
見学者はエレベーターでまずは最上階の展望室へ。近隣の風景を一望できるが、島全体がオーシャンビューのようなものだから、筆者はさくっと通過してしまった。しかし実は、ここから見える海が「うえのドイツ文化村」誕生に深く関わっていることを後から知る。
3階、2階と降りながら展示を見学する。館内はドイツの文化や歴史がわかる博物館になっている。
ドイツらしいビール文化を説明する展示や……
実物大の食品サンプルを使った食文化の紹介……(イメージに違わず、パンとソーセージの国であることがよくわかる)
筆者は童話が好きなので、1900年代の農家の台所の再現なんて「うわ、世界名作劇場だ!」とテンションが上がってしまった。ドールハウスみたい。
インパクト抜群のマネキンの立ち姿など、時代を感じるところもあるが、実物を用いた民族衣装の展示。
流行りのイマーシブ展示のような最先端のものではないが、実際の家具や生活用品をふんだんに使った展示内容は、かなり具体的で充実している。絵画のコレクションもすごい。立派な博物館だ。
後半では大きな模型やジオラマを多用し、マルクスブルグ城のあるライン地方を紹介。中世ヨーロッパの雰囲気を色濃く残すライン川のリバークルーズは日本人にも人気だろう。
どの展示も国立や県立の博物館にあってもおかしくないような立派なものばかりで、ちょっとびっくりしてしまう。外観を見ただけでは、こんな展示があるとは想像もしなかった。
・マルクスブルグ城の内部を再現
最大の見どころはマルクスブルグ城の内部「騎士の間」「婦人の間」「礼拝堂」を原寸大で再現した一角だ。
天蓋つきのベッドや、人の身長ほどもある大きな暖炉など、中世ドイツの雰囲気たっぷり。甲冑をまとった騎士や、ロングドレスの貴婦人が歩いていそう。
なかでも筆者が大興奮したのはここ! この凹んだスペース、なんだかおわかりだろうか。
中世のトイレである! といっても原始的なもので、壁の外に少しせり出すように便座が設けられ、穴から崖下の地面に垂れ流す仕組み。
中世ボヘミア(チェコ)を舞台にしたゲーム『キングダムカム・デリバランス』にハマっていた筆者。とくに第2作目ではトイレが印象的なクエストがあり、展示を見た瞬間「あぁぁぁぁこれはぁぁぁぁぁ!」と心中で叫び声を上げていた。知識として知っていたものが現実と結びつく瞬間。
・はじまりは遭難者の救助
ところで、どうして宮古島にドイツ村があるのか。バブル時代に各地に乱立した異文化テーマパークの名残かと思ったが、まったく違う。
そもそも話は明治6年にまでさかのぼる。ドイツの商船「R.J.ロベルトソン号」が、現在の「うえのドイツ文化村」沖合で座礁。地元の漁師を中心に救助にあたり、時のドイツ皇帝にあつく感謝されたのだという。
時代が流れ、そんな歴史も忘れられていた昭和4年、当時の記念碑が再発見された。美談として教科書にのるなど「博愛」の精神が全国に広く知られるようになったのだそう。
ああ、だから「博愛記念館」なのか! 近隣にも「シースカイ博愛」「博愛漁港」「博愛記念碑」などのスポットが点在。耳慣れないネーミングだと思っていた。
後世に歴史を伝えるためと、文化交流の場として「うえのドイツ文化村」が誕生。ドイツ本国から正式な許可を得て、見取り図をもとにマルクスブルグ城を原寸大で再現したそう。
2000年の沖縄サミット時にはシュレーダー首相が来島し、現在でも「シュレーダー通り」という地名が残る。へぇぇぇぇ!
現在「博愛記念館」は火・木を除く毎日開館。もし旅行前に検索で見つけて、「ここって何だろう?」と思っている人がいれば、ぜひ入館をおすすめする。素晴らしい展示なのに、外観を見るだけではもったいない。
海で遊ぶことに忙しすぎて……という人には向かないが、ミュージアム好きならきっと楽しめると思う!
参考リンク:うえのドイツ文化村
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
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冨樫さや





















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