「元気寿司」といえば、かつてはそれなりに見たが、昨今はとんと見なくなった回転ずしチェーン。逆に、別ブランドの「魚べい」はよく見る。元気寿司と魚べいに関する私の認識はそういう感じ。

そんな両ブランドが1つになり、「GENKI SUSHI×魚べい」としてのグローバル旗艦店を、2025年10月9日に上野にオープンするという。端的に言えば新ブランドの寿司屋だ!

どのようなものなのか気になったので、オープン前日に行われた内覧会に行ってきたぞ! ま、マジか元気……否、GENKI SUSHI!! その選択は予想外過ぎる……!! ガチで思い切った戦略だ。

・元気

「元気寿司」および「魚べい」は、元気寿司株式会社が運営する……と思っていたのだが、いつの間にか社名が株式会社Genki Global Dining Conceptsに変わっていたらしい。

寿司屋にしてはアルファベット濃度の高い社名。実は「元気寿司」こそが、日本で海外に初進出した回転寿司だったのだそう。回転寿司界におけるグローバル化の先鋒だったわけだ。

それにしたって、もはや「元気寿司」は絶滅危惧種じゃん? 頂いた資料には、国内に8店舗しかないと書かれていた。逆に勢いのある「魚べい」は178店舗もあるそう。

もう「魚べい」がメインブランドじゃん。社名も「UOBEI」にすべきだろ。そう思ったが、独り海外に飛び出した「元気寿司」は、海の向こうで繁栄しまくっていたらしい

店名を「GENKI SUSHI」とし、なんと海外に241店舗も展開! なんと、同社の他のブランドのものも全て合計した国内の店舗数より、海外の「GENKI SUSHI」の方が多い状態だ。

それなら「GENKI SUSHI×魚べい」ですわ。海外といっても広いが、特に香港や中国、シンガポールあたりがメインのもよう。日本人的にはレアな寿司屋になってしまったが、その辺りの国の人的には、「GENKI SUSHI」こそ最もよく見る回転寿司である可能性。

その新ブランドのグローバル旗艦店を東京にというのは、漫画やアニメでたまにある、海外で修業したキャラが日本に帰ってくる的な展開を連想させる。


・GENKI

前置きはこのくらいで、そろそろ店内に入ろう。


上野駅からのアクセスは、広小路口からすぐだ。交差点を渡って上野御徒町中央通りに入り、ちょっと進んだ右手側。マルイの向かい、パチンコ屋の隣に建つUeno Gateというビルの3階。


店内はこんな感じ。


さて、今日はグローバル旗艦店のお披露目の場ということで、代表取締役の藤尾益造氏と、国内と海外のそれぞれを担当する執行役員、そして上野店の店長が集結! 彼らから詳しく話を聞くことができた。


・戦略

いきなりだが、オープン最初のフェアのテーマはハワイだ! 「GENKI SUSHI」は、ハワイにいくつも店舗がある。そこで人気のメニューや、ハワイ限定のメニューを繰り出すそう。スパイシーツナとかアヒポキとかそういう。


どう思う? 

Youたちの反応、Meにはわかるぜ。えっ……って感じっしょ? もう解散一歩手前まで行くよな。私も、初手でハワイって聞いた時には、負け確ちゃうん? って思いましたもん。

日本人の、海外でアレンジされたSUSHIを初手でナメてかかる姿勢は、遺伝子レベルであると思う。せやろ。今でこそ日本でも人権を得たカリフォルニアロールだって、日本に逆輸入されて話題になった当初はボロクソに言われてたじゃんね。日本人の作った寿司にもかかわらず。

この人たち、その辺の日本人の習性わかってないんか……? 否! 当然そんなことはなく、国内担当の執行役員直々に「まさかハワイの寿司が美味いなんて……という想いはあった」と。


それでも初手でハワイコラボにした理由はシンプルだった。実際に食べてみたら美味かったからだそう。その辺のジャッジについては、私もこの後食べて正直に感想を述べる。

ハワイコラボな理由は他にもあるもよう。それは、ここがグローバル旗艦店であるということと、そもそも「GENKI SUSHI」ブランドの認知度は日本人より外国人の間での方が圧倒的であるという点に関係している。

ここ上野は、インバウンドの外国人がとても多い。その環境を利用し、まずは「GENKI SUSHI」をよく知る海外からのインバウンド客を狙い撃ち。そして、海外で進化した寿司を逆輸入して日本人にも体験させ、ブランド全体で新たな境地に……的な戦略だ。

なるほどね。「魚べい」は頑張っているが、国内でスシローや はま寿司あたりに相当に差を付けられている状態は否定できない。今さら日本人だけを相手に普通の寿司を出しても、上手くいく見込みはないだろう。

そこで同業他社には手を付けられていないが、実数としては相当なものになっている外国人を、海外での知名度を武器に引き込みつつ、同時に日本人にも食い込んで、国内ブランドの再認知を図るというのは理にかなっている。


・ジャッジ

日本における寿司屋の戦略としては、かなり攻めたものだ。まあ、海外ではスシローなどより上位にいるのが「GENKI SUSHI」。ゆえに外国人にウケる寿司のノウハウは、業界で一番持っているのだろう。

だが、日本人の舌も満足させなければ、国内ブランドの再認知は難しいぞ? はたしてこのハワイのSUSHIたちに、やれるかな!?!?


代表でお前だ! 「スパイシーツナ」!!


うぉぉ! 辛いぞ!! ハワイも日本なみに生でマグロを食うが、このスタイルは日本に無いやつ。バチバチに唐辛子の効いたホットソースと、マヨネーズだろうか。それのアヒポキって感じ。

ホットマヨソースの中に、小さく赤い魚卵が無数に入っている。正体は不明だ。とびっこではないかと思うが、確証はない。

そしてこいつは、マジで美味い。辛くてプチプチで、マグロは普通にマグロ。ずっと食えるぞこれ。というか、ホットマヨアヒポキ丼の寿司スタイル。

アヒポキはハワイで普通に日本人にも好評だろう。邪道に見せかけた王道っすわ

今回のハワイ系メニューは、多くがこのホットマヨアヒポキスタイルがベースとなっている。このラインでいくのであれば、全く問題なく日本人にもウケると思う。

他のメニューの簡単なレビューも、下の方に掲載しておく。全部普通に美味しかった。1つ、マジモンのサプライズというか、革命的なモノがあったが、それも真剣に向き合うと美味かった。

これは変なイロモノ寿司じゃない。ちゃんと美味い。外国人の寿司に対する味覚は、日本人とは方向性は違うかもしれないが、しかしその精度は我々とそん色ないのだ。

海外でウケる寿司なら、日本でもやれるということだろう。まあカリフォルニアロールでも、それは証明されていたしな。

ということで、「GENKI SUSHI×魚べい」のグローバル旗艦店。「魚べい」基準の安定の寿司だけでなく、我々の知らぬ海外で進化しまくった「GENKI SUSHI」の寿司も食える、おもしろ美味いスポットと見ていいだろう!

ハワイの後も12月からは各国のグローバルフェアを予定しているらしい。海外で圧倒的な実績をもつ「GENKI SUSHI」と、我々に馴染み深い味覚の「魚べい」。私も定期的にチェックして、未知なる世界の寿司を開拓したい。

参考リンク:Genki Global Dining Concepts
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

▼「アヒポキぐんかん」 全てのベーシック。ごま油で味付けした漬けマグロ丼みたいなもん。美味い。


▼「スパイシーツナエビフライロール」 楽しいよなこれ。エビフライのロールに、スパイシーマヨアヒポキが乗ってる感じ。お子様ランチみたい。


▼「スパム」 ハワイですから。ホクホクで美味かった。


▼「和牛サーフ&ターフロール」 マウイ島の店舗でだけ提供している限定メニューだそう。店長が考案したとかで、人気だとか。エビフライのロールを和牛で巻いてある。エビフライ入り肉巻きおにぎりみたいな。ちゃんと美味い。


▼「スパイシーツナいなり」 これが件の、革命的なヤツだ。下のいなり寿司部分は、ピュアに日本のいなり寿司。甘くてジュワっとした美味しいいなり寿司。その上に、もはやお馴染みのスパイシーマヨアヒポキが乗っている。無理だろと思ったのだが、これがちゃんと美味い。いなり寿司の解釈が異世界すぎてヤバい。でもこれは真面目にアリ。いなり寿司の持つ包容力が、日本人の想定よりはるかに強大であることを知れる1品。いなり寿司って、本当は自由なんだわ。


▼普通に日本らしい寿司もある。「魚べい」の遺伝子も入っているので、「北海道フェア」もある。

▼恒常と思しきこの辺の寿司は、「魚べい」クオリティなのだろうか。今回はハワイコラボの寿司のみの試食だったので、その辺は分からなかった。

大切りまぐろ漬け風とか気になる。