2025年10月7日、ファミリーマートは「オモテもウラもおいしいパン」と銘打ち、新たな商品群を発売した。デニッシュメロンパン、チーズケーキデニッシュ、アップルパイタルトの3種をアレンジし、それぞれのパンの裏側をクイニーアマン仕立てに焼き上げたとのことである。

クイニーアマンと言えば、思い出したように定期的に人気を呼ぶパンであり、近頃も静かに流行しているようだ。しかしながら、「ならば他のパンもクイニーアマンにしてしまえばよい」というファミマの奇想天外ぶりには仰天するほかない。

普段から他のパンのことを「クイニーアマンにしてやりたい」という目で見ていなければ出てこない発想にさえ思えるが、ともあれ物珍しさに興味を抱いた筆者は、3種の新商品を食べ比べてみることにした。

公式サイトによると、アレンジの元となっているパンはどれもファミマの人気商品だという。人気商品ともなればそもそも完成されているわけで、アレンジによって満足感を損なってしまう可能性も無きにしもあらずである。

その場合、「クイニーアマン以外のパンをクイニーアマンにしてしまうのはよくない」という珍妙な忠言で記事を締めざるを得なくなる。果たしてクオリティはいかほどか。まずは「デニッシュメロンパン×クイニーアマン（税込185円）」に手をつけることにした。

表側を上にして皿に取り出す。見た目は全く変哲の無いデニッシュメロンパンである。

しかし引っくり返してみると、確かに裏側ではカラメル状になった砂糖が光沢を放っていて、途端にれっきとしたクイニーアマンの風情が漂いだした。

一気に引き込まれた筆者は、気付けば何度も目の前のパンを引っくり返して表と裏を見比べていた。まさかこのパンによって、「出土ほやほやの土器片を前にした考古学者」のような態度を引き出されるとは思っていなかった。

そして勢いのまま口をつけたあとも、高揚した気分は上昇の一途をたどった。サクサクとした食感に焼き上がった香ばしいビスケット生地を楽しんでいると、ほどなくザクザクとした歯応えで味わいも力強いクイニーアマンが顔を出す。

そのグラデーションは一切違和感がないどころか、食体験に彩りと厚みをもたらすものに他ならなかった。「満足感を損なう」などとんでもない。むしろ跳ね上がっている。今後ただのメロンパンでは物足りなくなる恐れさえ植え付けられた感がある。

この時点で今回のファミマの一手が品質も伴っていることを重々理解していたが、本領はここからだった。続いて実食した「チーズケーキデニッシュ×クイニーアマン（税込198円）」が見せつけたのは、違和感のないグラデーションではなく、心地良いギャップだったのである。

クリームチーズが使われた、しっとりと柔らかなチーズケーキデニッシュから、砂糖が飴のように砕けるクイニーアマンへ移り替わる際の落差と言ったらない。目が覚めるようである。

だが不思議なことに、それら食感の大きく異なる2層が、1つのパンの中で不和なく同居している。いや、よく考えれば──そう、パフェなどを思い起こせば、ギャップを抱え込んだ菓子に心奪われることはそれほど不思議ではないのかもしれない。

食感の構造が対照的な、「デニッシュメロンパン」と「チーズケーキデニッシュ」の2品。そこへ極めつけに、3品目の「アップルパイタルト×クイニーアマン（税込198円）」がさらなる展開をもたらす。

アップルパイタルトの爽やかで優しい酸味のあと、クイニーアマンの濃厚な甘味が押し寄せる。味わいのギャップである。これに関しても憎らしいほどこちらを夢中にさせることに成功していて、なおかつクイニーアマンを最も鮮烈に演出していたことも間違いない。

というわけで、裏側が等しくクイニーアマンに仕立てられた3種類のパンは、しかしそれぞれが異なる魅力を発揮し、想像以上に筆者の心を躍らせてくれた。

改めて総評を下すなら、食感のギャップに驚きたいのであれば「チーズケーキデニッシュ」、味わいのギャップに没入したいのであれば「アップルパイタルト」といった具合で、「デニッシュメロンパン」はそれらと比べてやや面白味には欠けるかもしれない。

とはいえあくまで面白味の話であり、3種全てが完成度高く仕上がっていることはこれまで書いてきた通りである。是非とも多くの方に「オモテもウラもおいしいパン」を手に取ってもらいたい。

さて、筆を置いてしまう前に、忘れずにこの文言で記事を締めねばなるまい──クイニーアマン以外のパンをクイニーアマンにしてしまうのは、とてもよい感じである。

参考リンク：ファミリーマート 公式サイト
執筆：西本大紀
Photo：RocketNews24.