詐欺師との攻防における「チャーハンスチール(盗炒飯)」は、格闘技そのものだ。しばし、お互いに手を出しながら様子をうかがう。脱力して、さぐり的なパンチを打ち合う。


「ここぞ!」というタイミングは唐突にやってくる。そのチャンスをモノにできるかどうか。それが勝敗の分かれ目であり、“百戦錬磨の迷惑メール評論家” としての腕の見せ所でもある。


渋谷区在住のネイルアーティスト「ゆきこ」との勝負は、まさに一瞬で双方が “チャーハンの打ち合い” になるという、大変珍しい一戦になった。


・なぜハルピンなのか

どんな攻防だったのかは後々解説するとして、まず最初にゆきこが教えてくれたチャーハンレシピを紹介したい。題して「ハルピン腸詰チャーハン」。


無論、ゆきこが言うレシピそのままではなく(そのままでは到底作れない)、調理師免許所持の私(GO羽鳥)による解釈とアレンジしたものが以下だ。


■デートクラブ詐欺師ゆきこの「ハルピン腸詰チャーハン」

【材料】(1人前)


・ご飯(できれば一晩寝かせた冷飯) 大盛り1杯分
・卵 2個
・ハルピン腸詰 半分(サイコロほどの大きさにカット)
・玉ねぎ 半分(みじん切り)
・万能ねぎ 適量(小口切り)
・黒コショー 適量
・醤油 小さじ1
・鶏ガラスープの素(小さじ半分)
・サラダ油 適量


※ポイント

ゆきこは「ソーセージ」と言ったが、玉ねぎやごはんの分量に対して普通のソーセージ1本だと少なすぎる。これは一体……と、都内某所の中華食材屋さん店主に相談したところ、「腸詰ではないか」との予想。


その店には、やや甘めの味付けな台湾式の腸詰(香腸)と、中国北東部「ハルピン(ハルビン)」に伝わる、スモーキーな味付けの『ハルピン腸詰(哈爾賓紅腸)』があった。

どちらがこのレシピに適しているのか中国人店主と相談の結果、「味や大きさ的にハルピン腸詰(半分)では?」となり、ハルピン腸詰をチョイスした次第である。



【作り方】
その1:熱した鍋に油をひき、溶き卵を加えて素早く炒め、半熟になったら取り出しておく。


その2:鍋に再度油を加え、カットした腸詰を入れて軽く焦げ目がつくまで焼くと、腸詰から旨味を含んだ油が出てくる。


その3:みじん切りにした玉ねぎを加え、柔らかくなるまで炒めて香りを出す。そこにごはんを加えてほぐし、具材と混ざるように炒(チャオ)る。


その4:醤油(小さじ1)と、黒コショー適量を加え、さらに鶏ガラスープの素(小さじ半分)を加え味を整える。


その5:最後に「その1」で作った半熟卵と万能ネギを散らし、全ての材料がよく混ざるまで均等に炒(チャオ)って……


完成!


そのお味は……


うまい。うまいのだが、ちょっと小さくまとまりすぎている感もある。いわゆる普通の「腸詰チャーハン」といった感じで、もっと尖った、振り切った味付けでも良かったのではないか、なんて思ったりも。


腸詰チョイスに関しては、甘めと言われる台湾式ではなく、スモーキーなハルピン腸詰で正解だったと確信。


なぜ甘めの台湾式でなくて正解だったのかというと、具材の玉ねぎがかなり甘いから。ここに「甘」な腸詰が来たら、ちょっと甘々で早々に飽きてしまったおそれもあった。中華食材屋さん店主にシェイシェイ。


仮にハルピンでなかったとしても、このチャーハンは日本のソーセージではなく、ぜひとも中国本場の「腸詰」を使ってほしい。段違いで本場度マシマシだ。


なお、最後までおいしくいただけたが、非常に「おとなしい」味付けだったので、個人的にはもっとパンチが欲しかった。たとえば刻みニンニクを入れたり、唐辛子を入れたり……。


しかしそうなると、国際ロマンス詐欺師かなえのカーチャン式「台湾チャーハン」に近くなるので、今回のコレはコレ(ハルピン)で良かったのではないかと思ったりも。



・デートクラブ詐欺師ゆきこについて

ゆきことは、その後もかなり長いやりとりをした。設定的には、架空の「デートクラブ」で紹介された同士であり、大きく分類すれば「ロマンス詐欺」にあたる詐欺展開だった。


具体的には、普通にLINEでとりとめのないやりとりをし、徐々に親密に。そして「会う」となったら、「デートクラブの会員カード」が必要とくる。


そしてその「会員カード」に登録するためには、さまざまな個人情報を入力しなければならない。また、それにともない、登録費用なども請求される……という流れになるのだ。


一般的にロマンス詐欺は、いきなり女性から連絡が来て「好きです」など、ダイレクトにやりとりしてくるパターンもあれば、このような「デートクラブ」を装ってくるパターンもある。


後者の場合、「紹介者」から連絡が来たと思ったら「誰が良いですか?」と選ばせて(ワンクッション置いて)、その後はその人と……みたいな流れになるのが主流にして王道。


それゆえ私は、今回のゆきこは、ロマンス詐欺師(国際ロマンス詐欺師)ではなく、より細かい「デートクラブ詐欺師」と表現してみた次第である。



・チャンスは一瞬。見逃さず畳み掛けろ

最後に、今回の攻防のポイントを簡単に説明しておきたい。流れ的には、やや長い「自己紹介」 → 「好きな食べ物は?」という質問が来たので、間髪入れずカウンター気味に「チャーハン」を放った。


すると! なんとゆきこは……


間髪入れずにチャーハンの写真を送ってきたのだ。質問が来てから私が炒飯カウンターを放ち、それに対するクロスカウンター(チャーハン写真)が放たれるまでの時間はわずか1分。もしや、ゆきこはAI……?


とまあれ、「誘い」 → 「チャーハン」 → 「チャーハン(写真)」と、どちらかといえば私がチャーハンを食らった感じになっているのだが、そこからはズルズルと寝技に持ち込み、

なんだかイイ雰囲気になったりもした。


・詐欺を防ぐためにはどうしたらいいのか

いずれせよ、ゆきこは典型的なロマンス詐欺師。そして、いまだ、毎日のようにロマンス詐欺による被害のニュースが報じられている今日この頃。


ちょっと調べただけでも、つい先日、会社役員の70代男性が4000万円の被害に。数日前には70代女性が1億1000万円を騙し取られたと。少し前には60代男性が3860万円の被害に……。


これらを防ぐためにはどうしたらいいのか。その答えは、難しいかもしれないが「孤立させないこと」である。


ロマンス詐欺は、「孤独」や「寂しさ」につけ込んでくる詐欺だ。これだけロマンス詐欺のニュースが飛び交っていても、孤立しているからそれが詐欺だと気づかない。


警視庁などがいくら注意喚起をしても目に入らない。なぜなら騙される人たちは、相手が詐欺師だなんて思っていないので、詐欺師の情報を流布しても他人事と感じ読んでくれないのである。


もしも知り合いに「騙されているのでは?」という人がいたら、ぜひとも私の書いた「GO羽鳥の迷惑メールシリーズ」を教えてあげてほしい。


なぜ私が真面目なテイストではなく、こうしてチャーハンをからめたり、笑えるような体で書いているのかといえば、「面白かったら読んでくれるかもしれない」からである。


読んでくれたら、頭の中にうっすらでも「詐欺」が残る。その結果、詐欺に直面したら「もしかしたら……」となり、被害を防げるかもしれない


今も昔も、私は1人でも騙される人が減ることを願っている。


執筆:迷惑メール評論家&チャーハン探求家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.



こちらもどうぞ → 『GO羽鳥の迷惑メールシリーズ

▼実食の感想はノーカット動画(6分)にて

▼スタート(自己紹介)から口説き(チャーハンスチール)までノーカットで掲載。開始から1時間チョイで聞き出せるのは一瞬のチャンスを絶対に見逃さないからである。

▼めちゃめちゃイイ仲になっている。ちなみにゆきこは麺派である。

▼調理中の動画などはGO羽鳥のインスタをチェック!