「予約していたホテルを実際に訪れてみたら、想像していたより部屋がみすぼらしくてショボくれた気分になった」経験はないだろうか? 私はつい先日、その状況に遭遇した。そしてそれは、私の誕生日の前日だった。

これが友達との旅行とかであれば、笑い話で済んだと思う。しかしながら、ここで1人ぼっちで誕生の瞬間を迎えるとなると……もし当たりどころが悪かった場合、最悪「何のために生まれてきたんだろう」まで落ちる可能性もなくはない。私はそういうめんどくさい女です。

とはいえ現実を変えることはできない。かくなるうえは、自分で自分の誕生日を盛り上げることにしたぞ!

・夢のキャンドル

そんな私が偶然ドンキで見つけたのが『ドリームキャンドル デラックス(お誕生日用)』(税込1738円)である。

コレはその名のとおりデラックスなキャンドルで、点火後は自動で回転、同時に音楽まで流れるというシロモノらしい。

おまけに「使用後はフォトスタンドに大変身」とある! 祝う側がサプライズ的に用意するのが一般的な使用法だとは思うが、だからといって自分のために自分で買っちゃいけないなんてことは無い。絶対に、無い。

かくして8月20日の23時45分。私はホテルでドリームキャンドル デラックスのセッティングに取り掛かった(私の誕生日は8月21日です)。

まず、「周囲15cm以内に可燃物がないことを確認して下さい」という商品説明に従い、設置スペースを確保。

それから開封してみると、想定より部品が多く、組み立て苦手民として若干「メンドくせぇ」という思いが禁じ得ないのだが……誕生日って往々にしてメンドくさいものだよね!



・ハッピーバースデー私

なおキャンドルなので当然ながら火を使う。ホテルで使用するパターンはあまり多くないと思うけど、その際はホテルの人に許可を取りましょう。

さて説明書によると「まず銅線をハサミで切る」とのこと。

が……どれが銅線かよく分からんうえ、そもそも説明書と形状が違う気がする。え、なにこれどゆこと? 私メカとか大の苦手なんですけど……文系なもんで……

……とかやってるうちに、気づけば誕生日を迎えていた。おめでとう私! 悪戦苦闘しすぎて誰からもお祝いメッセージが届いていない事実に気づかなかったという観点においては、悪戦苦闘してよかったといえなくもないだろう。

ややあって、私が悪戦苦闘していた説明書は「キャンドルとして使用した後にフォトスタンド化するための方法」を明記したものだと判明。キャンドルとしての使用法はパッケージ側面に記されていた。……うん、なら最初からそう言って? あ、言ってた?

ともかく若干分かりにくいので、今後使用する予定の方は早めにセッティングに取り掛かることをオススメする。

すったもんだありつつも、ついに点火の瞬間が訪れた。果たしてドリームキャンドル デラックスは、若干めんどくさい女の孤独な心を癒してくれるのだろうか? 失敗は許されない。


緊張の一瞬…………




・大人の階段ってこういうこと

激しく燃えさかる花火の終焉とともに開いた花びらはそのままローソクとなり、単音で奏でられる『ハッピーバースデートゥーユー』の音楽に合わせ、あまつさえクルクルと回転を始めたのだった。

なんだろう……別に「すごい」とも「嬉しい」とも思わないのだけれど、謎の達成感がヒシヒシとこみ上げてくる。 “組み立てに手間取った” ことも、もちろんある。だがそれより “自分のご機嫌を自分で取ろうと精一杯努力した” という事実に、自分自身の成長を強く感じるのだ。

私は炎が消えるまでジッとキャンドルを見つめていた。「いい誕生日だ」とも「みじめな誕生日だ」とも思わなかった。ただ「人生に一度くらいはこんな誕生日があってもいい」と思った。

せっかくなので使用後のフォトスタンド化もやってみる。フォトフレームにメッセージや写真を差し込める、シールでデコれるなど、割と自由度が高い。

翌朝、私はフォトスタンドをホテルのゴミ箱に捨てて帰った。だからといって「やらなきゃよかった」とは1ミリも思っていない。単に移動に死ぬほど邪魔だったのだ。これが自宅だったら…………まぁ、それでも捨てたかな?

だがしかし、このキャンドルを買うか・買わないかの議論において、それはあまりに些細な問題である。大阪のちょっぴりショボいビジホで自分の誕生日を祝った思い出は、私の心のフォトスタンドに飾られるのだから。


そう永遠に……。


執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
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