
暑い! まだ6月だというのに連日真夏日すぎるだろ!! 梅雨どこ行ったねん! と、キレていても仕方がない。暑いもんは暑いのだ。そこに執着すべきじゃない。大事なのは、この先どうするかである。そんなわけでGoogleで「東京で1番寒い場所」と検索してみた。
って、我ながらその検索の仕方なんやねん。明確な答えにたどり着けるわけがない。暑すぎてぼんやり入力しちゃったけど、暑さにやられてたわ。ごめん、忘れてGoogle、気の迷いだった。
と思いきや、意外にもAIは「ここです!」とめちゃくちゃハッキリした答えを返してきた。その回答の内容とは……
・ピンポイント
「東京で一番寒い場所は、一般的には奥多摩の日原鍾乳洞が挙げられます。夏でも11℃前後と涼しく、洞窟内は特に冷えます」
こんなにピンポイントの場所が返ってくるとは。だがしかし、相手はAIだ。私(中澤)はかつて、北海道の大雪山でChatGPTにオススメの温泉を聞いた際、存在しない温泉をオススメされた経験がある。要するに、この情報は現時点では鵜呑みにすることはできない。
・行ってみた
そこで現地に行ってみることにした。まずは新宿からJR中央・青梅線青梅特快に乗って16駅。青梅の時点で東京とは思えないくらい遠さを感じたのだが……
そこからJR青梅線に乗り換えて12駅。ここまでかかった時間は約2時間だ。遠ッ! 奥多摩を舐めてた。新宿駅から茨城県の牛久駅まで1時間20分くらいで行けることを考えると、北関東より遠い都内と言えるかもしれない。
しかし、日原鍾乳洞は、鍾乳洞なんだからもちろん駅前にあるわけがない。駅からさらに平日1日5本のバスに乗り継いで山を登っていく。
30分くらい登ったところで山の斜面に家を取り付けたみたいな集落がある。これが日原集落。こんなところにも人が住んでるってホント凄い。ここからすると奥多摩駅前は都会である。
・山の謎
そんな謎の感動を覚えていると、7分ほどでバス停の「日原鍾乳洞」に到着。バス料金は570円だった。ここからは徒歩で道路を上る。すでにちょっと涼しいところが下界から離れた感じがした。雄大な景色は3年前に行った屋久島を思い出す。野生動物とかに遭遇しそうな雰囲気だ。
アスファルトの道路は舗装されているものの、人の領域ではないところにお邪魔しているオーラが少しある。山って謎だよなあ。遠巻きに見る分には1つの物体しか見えないのに、その中には別の世界が広がっているのだ。普段はそんなことありえないと知っているのに、鬱蒼とした山に入ると人語を話す猿とかいても不思議じゃないような気がしてくる。
それは私の出身地の近所に犬鳴山という霊山があって、中学から高校くらいの時に何度も自分の身長くらいあるデカイ犬を見ているせいかもしれない。詳細は以前の記事を参照していただけると幸いだ。
・バリバリ営業中
と、そんなことを考え始めるくらいには歩いたところでやっと人の営みを感じるものが見えてホッとする。ホッとする? どうやら、ちょっと不安になっていたみたいだ。まず飲食が可能な休憩所兼売店があり……
その休憩所兼売店を越えたところに日原鍾乳洞の看板があったのだが……
町中華かよ!
雰囲気も何もないゴシック体のフォントと絶妙なサイズ感のデザインが鍾乳洞の看板と思えない。今にも冷やし中華始めそうなレベル。だが、めちゃくちゃ安心する。全然まだ人の領域でした。人って凄い。
看板があるくらいなので、そこからすぐのところに鍾乳洞入口に降りる階段があった。受付があって見学料金は900円。午前9時~午後5時までバリバリ営業中である。
・オーラ
乗り物に乗った時間は2時間半くらいだったけど、渋谷の私の家を出発してからドアtoドアで考えると4時間半かかった。それゆえか……
入口の時点でちょっとオーラが漂っている。「行くか!」と気合を入れないと入りにくい感じというか。ちょっと怖いのである。いや、これは怖さというより……
寒さ。
中から漏れ出す冷気で入る前からすでに寒い。入口前でこれ!? となると、中はどうなってるんだろうか? 意を決して入ってみたところ……
さむッ!
さむッッッ!!
さッッッッむ!!!!
自然の冷蔵庫みたいな寒さである。GoogleのAIは嘘をついていなかった。ここは確かに東京で1番寒い場所かもしれない。
・入ってみると
中の様子は基本的には坑道みたいな狭い通路を進む感じなんだけど、たまに天井の高い広間みたいな空間がある。最奥にある大空洞の迫力がとにかく圧巻だった。インディ・ジョーンズみたいな世界観である。東京にもこんな場所あるんだなあ。
写真を撮りながらの行き帰りで40分だったので経路自体はコンパクトと言えるかもしれない。まあ、鍾乳洞に入ったのは初めてなので、この長さが鍾乳洞的に長いのか短いのかは分からないけど。
そんな東京で1番寒い場所の中でも、ひときわ寒かったのは出入口前の坂になっている部分。外から吹き込む風がびゅんびゅんしてて鳥肌が立ちそうなくらいだった。東京で1番寒い場所の中でも1番寒い場所と言っていいだろう。ゆえに、外の光に包まれた瞬間は、こう思わずにはいられなかった。
「現世に帰ってきた」と──。
川をキラキラと照らすまぶしい太陽。遠くに聞こえるウグイスの声。緑の山は今まさに夏を迎えようとしている。しかし、そんな生き生きとした光景すら鍾乳洞の中では忘れてしまう。どことなく現世じゃない雰囲気が漂っているのだ。だから、鍾乳洞内のネーミングも「さいの河原」とか「死出の山」とかなのかもしれない。
・実は
ちなみに、売店のポスターによると、日原鍾乳洞は日本鍾乳洞9選に選ばれているようだ。私は知らなかったけど、「結構有名」というのは帰りにひょんなことから話した全国の鍾乳洞を巡るのが趣味の夫妻の話。
じゃあ、知らなかったのになんでここに来たの? そう聞いてきた夫妻に「『東京で1番寒い場所』ってググって来ました」と答えたところ、ウケていた。確かに、そのたどり着き方はありえないかもしれない。名も知らぬ夫妻の話のタネになれたならこれ幸いだ。
知らないことは大した問題ではない。それはただの現状であり、本当に大事なのはそこからどうするかである。一歩踏み出せ! 自分の足で行くってことの楽しさを感じられた1日だった。気の迷いもたまにはいいもんである。
参考リンク:日原鍾乳洞
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]
▼弘法大師が修行した場所もある
▼半紙が一瞬でビシャビシャになりそうだ
▼新道は坑道みが強いのが良い感じ
中澤星児


































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