
自動販売機なんて全部一緒。私(佐藤)にもそう思っていた時期がありました。神奈川・川崎市の西生田にある、コーヒー豆の自販機は違うぞ、全然違うぞ!
その自販機はまるで19世紀に造られたんじゃないか? と思うようなスチームパンク仕様でめちゃくちゃカッコいい! あまりのカッコよさに、コスプレして自販機と記念撮影したくなってしまう。その特徴的な自販機を探し歩いていたら、コーヒーに対するアツい想いを知ることとなった。
・自販機1号機は……
取材前に私は、スチームパンク自販機についての情報をそう多く持っていなかった。「トランサイド珈琲」という豆を売っていて、自販機は小田急線読売ランド前駅の近くに2台、登戸駅にも1台ある。SNSでたまたまスチームパンクな自販機の画像を見かけただけで、それ以上のことはわからなかったのだ。
とりあえず現地に行くしかないと思い、まずは読売ランド前駅にやってきた。
お店を訪ねることはあっても、自販機を訪ねることはあまりない。厄介なのは自販機の場合、住所がわからないことだ。とにかく自販機1号機があるという「カフェ・ド・シュロ」に行ってみることに。この立て看板によると、ここから30秒のところにあるようだが。
案内にしたがって歩いて行くと、古民家を改装したようなお店にたどり着いた。店構えからスチームパンクを感じられないけど、ここに1号機があるはず。
店の大きな看板の横を見ると、百葉箱(ひゃくようばこ:気象観測用の箱)が置いてあるのかと思ったら……、これ自販機だ!
1号機はスチームパンクじゃなかった。販売商品は200グラムのコーヒー豆が1種類と、お店のマグカップのみだ。
スチームパンクが見たかったのに残念だ。仕方ない、次の自販機に行こう。……と思ったけど、せっかく来たのでコーヒーを1杯頂いていくとするか。
お店に入ると、外観からは想像つかないほどステキな設えで、店の奥にピアノが置かれていて、1階にはテラス席と暖炉がある。吹き抜けの階段を上がると2階にメインの客席があって、大型のスピーカーとレコードプレイヤー。書棚には本がズラリ。
この時はレコードがかかっていなかったが、店構えからして手入れが行き届いてそうな様子。きっとこのスピーカーは良い音がするはず。
自販機のアテは外れたけど、店の雰囲気にすっかり上機嫌になって、私はカフェ(コーヒー、税込650円:ケーキセットで100円引き)とガトーショコラ(税込780円)をお願いした。
ここで出しているのがトランサイド珈琲。まずはひと口すすると、一発でその美味しさにやられた! めっちゃ好きな味。口当たりがさっぱりとしてキレがあるのに、舌の上にザラリとした余韻を感じさせる。
苦味に重量感があり、飲んだあとも味と香りが残り、芳醇なワインのような長い余韻がつづいていく。液体が喉を通って胃袋に降りていくときに、一緒に気持ちも鎮まっていくのもわかる。
改めて香りを嗅ぐと、その香気に刺激されて頭の中で何かが弾けるような気がした。酒じゃないのに、コーヒーで酔えそうだ。気持ちが良くなる!
苦味一色の口の中に、ガトーショコラをひと欠片放り込むと、乾ききった大地に雨が降るように甘味が染み渡っていく。ほとんど黒で支配されていたオセロが、1枚の白石でことごとくひっくり返るように、舌の上を甘味が駆け抜ける!
このコーヒーとガトーショコラのマリアージュは危険だ。うっとりしてしまうじゃないか。もう私はトリコだった。今ならわかるぞ、「コーヒールンバ」のお坊さんの気持ち(恋を忘れたお坊さんがコーヒーを飲んで恋心を思い出すという内容)。
とにかくこのコーヒーを買って帰らないわけにはいかない! 家でも飲みたいもの! できれば、スチームパンク自販機で買いたい。
・3号機の場所はわかりにくい
2号機は登戸にあって、3号機は近くにあるはず。さっそく行きたいのだが、ひとつ問題がある。「棕櫚亭」ってところにあるらしいんだけど、この漢字の読み方がわからないので、GoogleMapsで検索できない……。
いろいろ手を尽くしてようやく読みが判明。「シュロ」というそうだ。したがってこれは「シュロ亭」と読む。シュロとは常緑高木のヤシ科の植物のことをいうそうだ。恥ずかしながら知らなかった。カフェ・ド・シュロに行ったのに気づかないなんて、なお恥ずかしい……。
それでその棕櫚亭は地図上でここにある。
駅の南側の川向うってことだけど、どう行ったらいいかな。一旦駅に戻ろう。
地図の指す方に進むとなると、このマクドナルドの向こうか? この先行けるの? 人が出入りしているから行けそうだな。
あ、川があって橋がかかっている。地図で見ると大きそうな川でも、実際に行ってみるとかなり小さいことはよくある。ここもそのパターンのようだ。
もしかして、あの向こう側の建物か?
・スチームパンク自販機!
あ、ここが棕櫚亭だ! ということは、ここに3号機があるはず。
あった~! これだ。間違いない。トランサイド珈琲の看板もあるしな。とても自販機とは思えないな。
映画のセットみたいだ。シルバーの本体に適度に施されたエイジング塗装が歴史を感じさせる。実際に時が経ってるわけじゃないけど。
本体だけじゃなくて、その周りにもしっかりコンセプトを感じさせる装飾がある。たとえば何気なくおかれた薪(まき)は、このマシンの燃料って設定なんじゃないかなあ。
薪をハッチに放り込んで、マシンを駆動させるってことなのかも。詳しい説明はどこにも記されていないけど、イマジネーションをかき立てられるから見ているだけで楽しい。
正面のフレームの黄色いライトがパンクしてて良いですな。夜見たら絶対キレイでカッコいいはず。販売商品は百葉箱1号機と同じく、コーヒー豆とマグカップのみだ。
このハンドルはコーヒーミルのものかな。やっぱスチームパンクにはハンドルは必要だよなあ。
ほとんどがフェイクだけど、ここの小さな扉はフェイクではないですよ。
この中には持ち帰り用の紙袋が収められている。ヒミツの扉を開ける演出まで施されていて秀逸だ!
ちゃんと豆を買うのでひとつ頂きますね。
で、実際にお金を投入すると、ちゃんと1300円って表示された。こいつ、動くぞ!
では、緑にランプを1つ押しましょう。ポチッとな!
出てきた~! 豆はジップロックに入ってました。さすがに中身までスチームパンクにはできないよな。実用性を考えてジップロックを使っているのでしょう。
トランサイド珈琲のInstagramによると、自販機はすべて空間プロデュース・内装デザインの「アトリエ・ダレル」の亀山裕昭氏の手掛けたものなのだとか。
亀山氏はテレビドラマや『マスカレード・ホテル』や『コンフィデンスマンJP プリンセス編』などの映画作品の作画担当を務め、数々の受賞歴を持っている。その実力はこの自販機を見ればよくわかるだろう。素晴らしい作品である。
・想いの重さ
もう1台、初代のスチームパンク自販機(自販機2号機)は、登戸駅の近くに設置されている。
駅から徒歩約3分のところ、登戸ゴールデン街の看板のすぐ下だ。「登戸ゴールデン街」とは、昭和レトロをコンセプトにした飲食店ビルで、こちらの内装も亀山氏が手掛けたそうである。
2号機もいいですねえ。シルバーが基調の3号機よりもコッチの方が年代モノ感が出ている。
全面サビ色で、軽く100年は経過しているような佇まい。
横から伸びた煙突から、黒煙が吹き出しそう。その下のハッチに薪を放り込むっていう設定かな。
足元にあるのはストーブ? その上にさりげなくコーヒーミルがくっついている。全体が調和しているので、コーヒー用品が隠れキャラのように自然に馴染んでいる。
これにもちゃんとハンドルが付いています。思わず回したくなってしまうのは、人の性(さが)か。
コーヒー用の紙袋はココ、これがヒミツの扉です。
本当は何の役割も持たない配管やメーター・バルブ類のはずなのに、ちゃんと役割を果たしているように見えてくるから不思議だ。
品揃えはこちらも同じく、豆とマグカップです。
よく見ると、トランサイド珈琲の歴史が貼り出されている。
1995年にカモノハシさん(先代:カモノハシに似ていたそう)が始めた珈琲焙煎工場。ブラジルを中心としたブレンドを直火焙煎したものを「トランサイド珈琲」と名付けたという。
カモノハシさんは「自分が飲みたい味の珈琲を焙煎するだけで十分だ」ということに行きつき、この味になったのだとか。カモノハシさんが他界した後に、カフェ・ド・シュロがその味を引き継いでお店と自販機で提供している。
スチームパンク自販機は見た目の印象が強いけど、販売しているコーヒーには、先代の熱意とそれを引き継ぐカフェのオーナーの思いがこもっている。トランサイド珈琲に感じる味の重さは、きっとその想いの強さのあらわれではないだろうか。機会があれば1度味わって頂きたい。奇抜な自販機もさることながら、その味にも驚かされるはずだ。
・今回訪問した店舗の情報
店名 カフェ・ド・シュロ
住所 神奈川県川崎市多摩区西生田1丁目20-1
時間 11:00~17:00 土日祝10:00~17:00(食事メニューは11:00~14:00)
定休日 火曜日
参考リンク:Instagram @cafe_do_shuro.2009、@transside_coffee、アトリエ・ダレル、トランサイド珈琲
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
Screenshot:GoogleMaps
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]
▼直火焙煎の豆は色が濃く艶やか
▼挽き立てにお湯を注ぐと……
▼ふっくらと膨らむ。豆の鮮度が高い証だ
▼お店で飲んだのと同じ豆のはずなのに、お店で飲んだのと微妙に違う。やはりプロが淹れるのには敵わないな。でもすごく好きな味
佐藤英典










































自動販売機でペットボトルコーヒーを買ったら飲めなくてビビった 【名古屋・イトウコーヒー本店】
【超高級】自販機で売ってる「1本640円の缶コーヒー」を飲んでみた!
坂口憲二さん「ザライジングサンコーヒー」の自販機を東北道「佐野SA」で発見! 『サーフィン・U.S.A』が流れるノリノリ自販機!
【ユニーク自販機】イギリススイーツの自販機が誕生! お家でブリティッシュなお茶会をやりたいなら行くしかねぇ!
JR中野駅の自販機に貼ってあった「お詫び」に誠意を感じた
110円で食べ放題! 高円寺のガチ中華「成都」のミニバイキングが斬新だったから、入店して真相を確かめてみた結果
【4コマ】魔王軍はホワイト企業 1845話目「忘年会⑪」
【なんじゃこりゃ~!】SNSで流行ってるココナッツサブレをヨーグルトに入れるヤツを試したら、ナゾに失敗してバケモノが生まれたんだがッ
【朗報】餃子の王将の「高コスパランチ」が全国展開へ! これで790円はありがたすぎィィイイ!!
【まさかの逆転劇】普通の大学生がサーカスを退団して挑んだ夢…不合格の1カ月後に起きた奇跡 / 木下サーカスの思い出:第15回
【美濃焼】おうちカフェ食器10点入り3980円の福袋が大正解! ただ、ひとつだけ不満な点もあった…
【4コマ】魔王軍はホワイト企業 1840話目「忘年会⑥」
【家焼肉】プロの料理人は言った。「そんなの業スーでザブトンですよ」と。〜ぼっち忘年会最強プラン決定戦〜
【抽選結果】マックの福袋2026に編集部16人で応募してみた → 衝撃の結果に感じた「マクドナルドの一歩」
【4コマ】魔王軍はホワイト企業 1839話目「忘年会⑤」
【本日発売】「ローソンの福袋」(2160円)があまりにパンパンに詰まってて、持って帰るのちょっと恥ずい
中国「渡航自粛要請」から2週間が経った京都市内「祇園」「清水寺」「錦市場」の様子を見に行ってみた
中国「渡航自粛勧告」から1週間経った、東京・浅草を見に行ってみた
中国の「渡航自粛勧告」から2週間、現在の「奈良公園」で目の当たりにした意外な光景
【納得】ガストの「ジョブチューンで唯一不合格だった」メニューを食べてみた → 不合格にする気持ちがわかった
【検証】10年間ほぼ毎日飲んでる「コーヒー」を1週間断ってみたらこうだった
【は?】楽天で見つけた「在庫処分セール半額おせち」を買ってみた結果 → 届いた数日後にブチギレかけた
【雑草対策】カインズで598円「撒くだけで防草できる人工砂」の効果がヤバ過ぎた / お財布にも環境にも優しい超画期的アイテム
【検証】「スタバはどのサイズを頼んでも量は一緒」という動画が出回る → 実際に試してみた
【事故】楽天で買った『訳ありB級フルーツ福袋』を開封した翌日、妻から信じられないLINEが来た「メロンが…」
東京・六本木ヒルズの『ガチャガチャコーヒー』が最高に贅沢! ただし500円のコーヒーのために1800円払わなければ……
秋葉原にマックスコーヒー狂信者すぎる自販機が爆誕してた / これはあまりに糖
【セブンイレブン】「セブンカフェ」の自販機が登場! レジでの会計不要で圧倒的に時間短縮できるぞ~ッ!!
【誰もいない】上野駅のまさかの場所でラーメン自販機を発見 / 有名店のこだわりの1杯が90秒で食べられる!
【マジかよ】日本のコンビニや自販機では当たり前の “あれ”、アメリカにはなかった / アメリカ人「それを楽しみに来日する人もいる」
【外国人目線】日本で人生の半分を過ごした韓国人が1年半ぶりの日本で改めて思ったこと
【挑戦】大阪・アメリカ村の何を売っているのかわからない自販機で水を買うことは可能なのか?
【合掌】「自販機の焼きおにぎり」は昔と変わらずマズいのか? 約30年ぶりに食べてみたら…自販機が天に召される瞬間を目撃してしまった
【ドリンクバーかよ】大阪で『10円自販機』を発見 / 本当に10円でドリンクが買えたでござる
【意味不明】「手もみラーメン 福しん」の24時間自販機が激安すぎてヤバイ! 特に『ラーメンセット』の値段が限界を突破している…!!
【謎の自販機】何が出てくるかわからない!「謎」と書かれた自動販売機に1000円ブッこんでみた
【マジかよ】鹿児島県には「クレープの自動販売機」があるらしい → 西郷さんも買い占めそうな絶品スイーツと判明!