
日々進化する生成AI。私(耕平)も仕事やプライベートで使用していて、複数のサービスに課金している。ひと昔前なら専門的な指示が必要だった命令(プロンプト)も、日本語の理解力の精度が上がっていて、誰でも手軽に扱えるくらいになっているのではないだろうか?
そして先日、人生初めて旅行することになった鹿児島県でふと考えがよぎる……「AIに観光コースを聞いたら、どんな提案をしてくれるのだろう?」。
半信半疑で試してみたら、なんとビックリするくらい精度が高そうなコースを提案してくれたぞ! ただ、そのコースは本当に正しいのか? はたまた楽しめるのか? 実際に回ってみたら思わぬ結果が待っていた──。
・3分で最適なコースを提案?
今回の検証にあたり、私が使用した生成AIはGoogleが提供している「Gemini(ジェミニ)」だ。この「Gemini」の中で「ディープリサーチ」という機能を使って、最適な観光コースを提案してもらう。
ただ飛行機と宿はすでに予約していることから、その条件を盛り込んだうえで質問する。今回、私のケースはこうだ。
・日時:2025年4月18日~20日
・行きの飛行機は、鹿児島空港に9:30着
・宿泊は「グッドイン鹿児島」に2泊
・帰りの飛行機は、鹿児島空港を10:10発
「こんな条件だけで、本当に最適解が得られるのか?」と半信半疑で見ていたところ、「こういう手順で検索するよ」みたいな提案が来て、OKをクリックすると検索が始まる。
すると100以上のサイトを同時に調査するという、人力では不可能な “ググり” が始まった。
待つこと約3分、通常なら悩みに悩んで何時間かかるか分からないプランを、完全にカスタマイズしたコースが3000文字はあろうかという結果で出力された。
マジで “驚愕” 以外の言葉が見つからない……パッと見だがガイド本の存在意義に疑問を呈するくらいの内容っぽいぞ。
あとは余計なことは考えずAIの導きに従うのみ。果たして、人生初めての鹿児島旅行は楽しめるのか……?
・1日目
旅行当日、早朝の成田空港に到着。7:30発のフライトを待つ。
そして出発。2時間後の9:30に鹿児島空港到着。
ここから、いよいよAIが提案した旅がスタート。1日目のテーマは「維新の息吹と市街パノラマ」だ。
まずは空港リムジンバスに乗り、鹿児島中央駅に向かう。
約40分後、鹿児島中央駅に到着。
AIの指示によると、そこから徒歩3分程度にある宿泊するホテル「グッドイン鹿児島」に、余計な荷物を預けるとのこと。
チェックイン前に荷物って預けられるのか? と半信半疑でフロントに向かう。
宿泊予約をしていることを伝えると、チェックイン前でも問題ないとのこと。しかも支払いまで先に済ませることができた。私が知らなかっただけかもしれないが、AIすげぇな!
身軽になったところでAIの指示に従い、昼食を取ろうと鹿児島中央駅に戻る。まだ時刻は11:00だ。
ここでもAIが「必食グルメ」ということで、鹿児島の名物や郷土料理などを提案してくれている。
鹿児島最初の味……さて、何から食べようか? 15分ほど駅前繁華街をウロウロして、最初の鹿児島グルメに決めたのは「鹿児島ラーメン 豚とろ」だ。
注文したのは、一番人気の「半熟玉子入り豚とろラーメン」。
鹿児島最初の味を堪能する。
あっ、鹿児島に来たんだな……
と思えるほど、普段食べている豚骨ラーメンとは一味違う、鹿児島が全国に誇る名産品「黒豚」の風味を全面に活かした絶妙な味わい! 言わずもがな、味覚のファーストコンタクトとしては、大満足の食材だった。
次のAIの指示、それは「鹿児島中央駅総合観光案内所で「CUTE(キュート)」2日券(1900円)を購入」というもの。
「CUTE」とは、鹿児島市が運営する市電・バス・フェリーが乗り放題のフリーパスのことだ。しかし事前に調べたところ、アプリでも購入できるということでペーパーレス推奨派の私はアプリで購入した。
この選択が、のちに間違いだったことは後述しよう。次にAIの誘(いざな)いで向かう場所は、鹿児島中央駅から徒歩で約8分の場所にある「維新ふるさと館」。
ここでは「薩摩の歴史 入門編」みたいな感じで、歴史にあまり興味が無い私のような人間でも、気軽に薩摩の歴史に触れられる展示品がズラリ。
鹿児島初心者として、この「維新ふるさと館」は1番に訪れるべき施設だと思った。というのも、こんなに分かりやすく薩摩の歴史を伝えてくれるコンテンツは無いのでは? と思うほど工夫されていると思った次第だ。
薩摩スチューデントの劇場や幕末の資料に見入っていたら、あっという間に時間が過ぎ……と思いきや、まだ13時前。
再び鹿児島中央駅に戻り、AIがオススメする次のスポット「城山展望台」に向かうべく、観光周遊バス「カゴシマシティビュー」に乗り込む。
ただ、ここで問題が起きる。AIの提案だと、ここで1時間半滞在する予定だがバス停から展望台まで約5分で到着。
桜島と鹿児島市内を一望できる絶景は素晴らしかったが、その他には何も無い。よって、1時間半滞在予定というのは無理がある。結局30分ほどで満足し、次のバスで退散。
改めて宿泊するホテル「グッドイン鹿児島」にチェックイン。しかし、まだ時間は15:30少し過ぎたくらい。
次の予定は、もう夕食だ。AIの指示に従って、鹿児島県最大の歓楽街「天文館」に着いたのは16:00。
AIが組んだ予定だと、ここ天文館には18:30着なので、2時間半も早く到着してしまった。
予算は3000円まで。この時間だと空いているお店も少ない。が、予算内で鹿児島の郷土料理が堪能できるであろう、居酒屋「立飲み屋キリツ」に入る。
立ち飲み屋だけに、値段はリーズナブル。さつま揚げや鶏刺しを堪能して、種子島焼酎「紫」でホロ酔いになる。
まだ予算が余っているため、名物デザート「白くま」を堪能すべく、向かいにある「天文館むじゃき」に入る。
噂の「白くま」が、テーブルに運ばれてくる。
山盛りで練乳たっぷりの真っ白なかき氷は、ボリュームの割に食べやすく気がついたらペロッと平らげてしまった。
ここで1日目の旅が終了。この時点でまだ18:00前。だいぶ時間が余ってしまった……。
・2日目
AIが提案した、2日目の旅のテーマは「桜島の大自然と薩摩の雅(みやび)」。
ワクワクしながらホテルを出発し、フェリー乗り場に向かうべくバスターミナルに9:00に到着。
約20分後に「桜島フェリーターミナル」に着いて、9:40発のフェリーに乗船する。
約15分の船旅を満喫して……
ここから10:00発の周遊バス「サクラジマアイランドビュー」に乗って、桜島を1周する……はずだった。が、下船時にフリーパス「CUTE」をアプリで提示しようとしたところ、Wi-Fiが繋がらず。そこで時間がかかってしまったこともあり、バスに間に合わないという失態を犯してしまう。
実は観光客で「CUTE」を利用していた人は、紙のフリーパスを利用していた人が多いような気がしていた。もしかしたら、電波が届かない場所などでの対策なのかもしれない。前述した間違いとは、まさにこのこと。AIの言うことを聞いておけばよかったと、後悔した次第だ。
結局30分待って、次の「サクラジマアイランドビュー」に乗車。いよいよ初の桜島周遊の開始だ。まずは最初の目的地、「桜島ビジターセンター」で桜島の歴史に触れる。
「溶岩なぎさ公園」の遊歩道を歩いて、溶岩と青い海のコントラストに感動したり……
海を見ながらの、足湯は最高だ。
「烏島(からすじま)展望所」で、桜島を一望して……
そこから10分ほど歩き、2004年に開催された「長渕剛 桜島オールナイトコンサート」の開催を記念して作られた「叫びの肖像」に圧倒されたり……
1番人気の観光スポット「湯之平展望所」から見る桜島に絶句。雄大な景観すぎて、ずっと見ていられそうだ。
そしてフェリーターミナルに戻り、帰りのフェリー内で昼食を取ることに。AIが提案した予算は1500円までなので、噂の名物グルメ「名物桜島うどん(1000円)」を注文。
出汁がしっかりと効いているが、あっさり目の味わい。景色を見ながら桜島を想像させるような、山盛りのごぼう天と一緒に食べるうどんは格別だ。
腹ごしらえが終わり、次にAIが提案するスポットは「仙巌園(せんがんえん)」と、フェリーターミナルから近くにある「いおワールド鹿児島水族館」だが、両方の入場料で3100円かかるとのこと。
AIの提案で「予算や興味に応じて、どちらか一方にする、あるいは両方訪れるかを判断しましょう。」とあり、個人的には水族館に興味が無かったため、今回は「仙巌園」だけを訪問することにした。
「仙巌園」は薩摩を代表する藩主「島津氏」の別邸庭園で、歴史を知るうえで外せないスポットだ。さっそくチケットを購入。
入場した瞬間、そこには緑あふれる壮大な光景が目に飛び込んでくる。
奥に進むべく、小京都みたいな街並みを歩く。
そして辿り着いた、世界文化遺産に登録された庭園の美しさ。さらに鹿児島湾を挟んで庭園から覗く桜島は、絶景以外の言葉が見つからないくらいの景観だ。
隣接する「尚古集成館(しょうこしゅうせいかん)」も見学。さらに薩摩の歴史を深掘りするため、薩摩藩の近代化事業について学ぶ。
ここで唯一AIの計画から外れて、フリーパス圏外の交通手段を利用することにした。それは開業したばかりの「仙巌園駅」から、電車で鹿児島中央駅まで戻るというもの。
ノスタルジックな駅舎から見る桜島も格別。駅から見る景色が、こんなに壮大なのは初めてだ。
そしてAIが提案する、2日目の夕食も「天文館」。今回は鹿児島が誇る「黒豚」を堪能すべく、天文館の名店「黒福多(くろぶた)」に訪問。
注文したのは、黒の衣が特徴的な「黒豚上ヒレかつ(1950円)」と、桜島で締めるという意味で「あらわざ桜島」という焼酎を注文。
もう鹿児島旅行を締めくくるにふさわしい、大満足の味。ちなみに夕食代は3020円だった。
2日目は、これにて終了。時間は18:00を過ぎたあたり。1日目に続いて、AIが提案した予定より早めに終了してしまった。
最終日の3日目は10:10鹿児島空港発の便に乗るため、観光地を回ることは無かったので割愛する。ただ、今までいろんな地方を回ったが、補助席も合わせて満席になるバスは初めてだった。
・結局楽しめたのか?
さて、今回AIが提案した観光コースを回ったわけだが、率直な感想を言うと100点満点だとしたら70点くらいの評価と言えよう。
そもそも日時と宿泊場所、往復の便の時間だけで、これだけのプランをわずか数分で提案してくれるのだから、すごい世の中になったと本気で感じた次第だ。
そして、気になる飛行機と宿泊代を除いた旅費の合計はというと……
1日目:7290円(空港バス1500円+昼食1100円+CUTE1900円+維新ふるさと館240円+夕食2550円)
2日目:5860円(昼食1000円+仙巌園1600円+電車運賃240円+夕食3020円)
3日目:1500円(空港バス1500円のみ)
なんと、驚愕の14650円だった!
正直、予算20000円というのは少し厳しいかと思っていたが、むしろ5000円以上も余らせてしまった。さすがAI! とはいえ、悪かった点をいうと「時間配分」これに尽きる。実は時間が余った分、追加の飲み代などで結局使ってしまい、合計で20000円から少し足が出てしまったという顛末だった。
そして今回の検証で分かったのは、AIは少ない情報でもそれなりのプランを作成できるということ。予算管理も完璧だし、観光スポットの選択も的確だった。
AIが組む観光プランは確かに優秀。ただ完璧に遂行するよりかは適度に脱線しながら巡るのが、AIでは導き出せない旅の楽しみ方なのかもしれないな……と気づかされた鹿児島2泊3日だった。
参考リンク:Google Gemini
執筆:耕平
Photo:RocketNews24.
▼AIが提案した観光施設、スポットの絶景、郷土料理はこちら
耕平



































































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