普段は自宅か会社で仕事をしている私(あひるねこ)。カフェやコワーキングスペースでは仕事をしないし、あまりしたいとも思わないのだが、一つだけ憧れている場所がある。それは温泉旅館である。

旅館に缶詰になって執筆作業するなんて、なんだか昔の文豪みたいでカッコイイじゃないか。そこで今回は、取材で温泉旅館に泊まるついでにガッツリ仕事をしてみることに!

・旅館で仕事

すでに関連記事を何本も書かせてもらっている「ぎょうざの満洲」の温泉旅館『東明館』。こちらは取材で訪れたのだが、撮影自体は割とすぐ終わって、当日はそれなりに自由な時間があった。


といっても、じゃあとりあえずゴロゴロするか……とは残念ながらならない。だってド平日ですもの。普通に仕事もしないとね。というワケで私が作業場に選んだのが……


旅館の「あのスペース」こと広縁である!

・一番好きな場所

広縁(ひろえん)とは、旅館やホテルの窓際にあるスペースの総称を指す。椅子と小さなテーブルが置いてあるだけで、ぶっちゃけ何のために存在しているのかはよく分からない。が、何とも言えない旅情を感じさせる空間だ。


時折、外の景色に目をやりつつ仕事をしていると、とても平日とは思えない穏やかな気分に浸れると同時に、いま自分は広縁をバッチリ活用しているという奇妙な満足感を味わうことができる。

もちろん音楽やラジオなんていらないし、今日ばかりは音がないことがまったくもって寂しくない。そう、無音こそ旅館における至高のBGMである。集中力もいつも以上に増すというもの。


ただ、さすがにテーブルが恋しくなってきたので移動した。我々は普段、デスクで仕事をすることに慣れきってしまっているが、旅館だと胡坐(あぐら)をかいて作業するのが基本スタイルだ。

ちょっと疲れるが、これもまた文豪っぽくて大変よろしい。


環境が変わると文体も変わる……のかどうかは分からんけども、いつもと違った独特のフィーリングを得られることは間違いない。仕事場所として、温泉旅館は自分にとても合っているような気がした。


ところが!


一点だけ注意というか、PCで仕事をする上で致命的な弱点が見えてきたので不本意ながら共有させていただく。端的に述べると……


コンセントがねぇ……!


・デジタルの敗北

いや、あるにはあるが離れすぎている。我々現代人にとって、電源の確保は必須アンド必要不可欠。ただ、延長コードを使うのはどうも無粋な気がする。旅館の部屋で使用するには、いささか生活感がありすぎるというか。その結果……


充電を口実に、ちょいちょいサボり呆けるなどした。致し方なし。ああ致し方なし。



さて、ここらで気分転換でもするか。


自宅だったらスマホをいじるくらいしかリフレッシュの術はないが、言うまでもなくここは温泉旅館。つまり、今の私ならできる。


エニタイムひとっ風呂……! からの……


エニタイムマッサージ……!!


やろうと思えばソロ卓球(壁打ち)も可ッッ! で……


夜になったらまたひたひたと廊下を歩いて……


背徳の極み自販機へ。

・最高の筐体(きょうたい)

もはや現金なんてほぼ使う機会はないが、ビールの自販機だけは現金で払いたい。いや、現金で支払わなければならない。

小銭をジャラジャラ投入しないビールの自販機なんてビールの自販機じゃないだろう。


これぞ! 旅館の醍醐味!!


ビールを買ったらすぐさま例のスペースへ。


夜の広縁で飲む缶ビールの趣深さときたら異常である。あとは眠くなるまでここでダラダラ仕事をするのみ。


私のこの仕事のやり方、人によっては極めて非効率に見えるのかもしれないが、旅館で効率なんぞ気にしたら負けである。これでいい。いや、むしろこれがいいのだ。



・もはや引っ越したい

旅館で仕事をするという行為に憧れを抱いている人は少なくないと思う。私もそうだった。で、いざ実際に仕事をしてみて分かったのは、温泉旅館という場所は我々が思っている以上に天国であるという当たり前の事実だった。


仕事内容はいつもと何ら変わらないのに、こんなに豊かな気持ちになれる場所が他にどこにある? ああ、なんかもうこの際、旅館に住みてぇなぁ……。

おそらくこれまでの人生の中でもっとも仕事が楽しく感じられる一日であった。旅館最高!

取材協力:ぎょうざの満洲 東明館
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.
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▼おまけ。旅館の「あのスペース」コレクション。

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