哲学者・数学者として名高く「人間は考える葦である」との名言を残したパスカルには、こんな逸話がある。


ある夜、激しい歯の痛みに襲われたパスカルは、その痛みを紛らわせるために数学の難問に取り組み始めた。そのうち本当に歯の痛みを忘れ、おまけに夜が明ける頃にはその難問も解けて一石二鳥でした……という。


なんでいきなりこんな話をし出したかというと、筆者がこんど歯の手術をするからだ。そしてそれがメチャクチャ嫌だからである。

・歯医者怖い

筆者も一応大人なので泣いたり暴れたりはしないが、嫌なもんは嫌。しかも今回の手術、詳細は省くがモロに切ったり縫ったりするヤツなので、少なくとも数日は痛いこと確定である。ヤダなー、怖いなー……


で、思い出したのがさっきの逸話だったわけだ。


歯が痛い時に数学やると、いつもより冴えてたりするのだろうか。歯が痛い時に数学やると、歯の痛みも忘れられたりするのだろうか……。



・パスカルに続け

というわけで試してみることにした。もうこの際なんだっていい、溺れる者は藁をも掴むのである。


まずなんといっても検証したいのは、「数学の問題を解くと歯の痛みは軽減するか」。あと、ノーマルモードと歯痛モードで「頭の冴え」が変わるのかも確かめたい。手術の前後で、所要時間と正答率も比べてみよう。


さて、それにあたってはまず数学の難問を用意せにゃならんわけだが、筆者は冗談じゃないレベルで数学が苦手。難しすぎて脳がストップしても意味がないので、中学3年生の問題をプリント3枚ほど見繕った。

手術前後で問題の難易度や数に公平性を期すため、各大問につき半分ずつ解く。あと、別に学力を測るためではないので「マジで分からなかったら公式などを調べてもOK」にした。



・手術前(no歯痛)

まずは手術前、まだ元気なタイミングで解いてみる。

では、始めます。うわー、この感覚懐かしい。



まてよ、平方根ってなんだっけ……


調べてもわかんねえ……! 飛ばす!


終わった! 一個飛ばしたけど!


かかった時間は14分19秒。丸つけしてみたところ2問ミス。平方根を検索したので時間を取られたが、正答率としてはまずまずではなかろうか(※良い大人が中3の問題を解いて何を言っているのか)


・手術後(with歯痛)

……さて……。


行ってきたよ、手術。筆者は偉いので この検証のために麻酔が切れるまで痛み止め呑まずに待ったよ。わざわざ。


マジで痛い。歯というかもう頭が痛い。この状態で数学解くの? アホなの?

とはいえ自分で始めた検証なので仕方ない。始めます。



クソ痛い。


早く痛み止めを呑みたい。それだけ。


終了。


かかった時間は12分ちょうど、3問ミス。このあと速攻で痛み止め呑んで寝た。



・出来るかこんなもん

さて……。おはようございます。寝たのでちょっとマシになりました。

あらためて結果を整理してみよう。


【no歯痛】所要時間14分、2問ミス
【with歯痛】所要時間12分、3問ミス


――出来るかァァァ!!!!!


確かに手術後の方が短時間で終わったが、多分それは前日に解いて慣れたからだし、ミスは後の方が多い。


あと言っとくが、痛みを忘れるか否かでいうと全ッッッ然忘れない。早く終わらせて痛み止めを呑んで寝たい、それだけのために解いていた。


というかこのあと好きな音楽を聴いていたら少し気が紛れたので、「単にパスカルが数学大好きだっただけ説」が有力になりつつある。知ってた。


結論、パスカルならいざ知らず、筆者のような凡人が歯痛を抱えたところで人類の叡智にはなんの役にも立たないし、数学は痛み止めにはならない。大人しくサッサと痛み止めを呑みましょう。苦しむのは筆者でたくさんだ。


参考リンク:ちびむすドリル【中学3年数学 総まとめ・総復習プリント】
執筆:砂付近
Photo:Rocketnews24.