いきなり! ステーキ」でお馴染みの株式会社ペッパーフードサービスは2024年12月6日、つまり本日、新業態のお店「すきはな」をオープンした。1人1台鍋のあるすき焼き専門店ということらしい。

そういえば最近、いきステの話題をトンと聞かなくなった。一時は約500店舗を展開していたのだが、現在(2024年11月)は176店舗まで減っている。そんな同社の新業態とあれば、起死回生の一手に違いない! ってことで実際に行ってみたら、思ってたのと違って戸惑ってしまった……

・いきステのすき焼きの実力とやら

1人1台の鍋ということは、1人焼肉の「焼肉ライク」や1人しゃぶしゃぶの「七代目松五郎」に近い雰囲気だろうか。そうだとすると、1人1台はとくに目新しさを感じないけど、「1人すき焼き」はいまだ未開の分野になるかも。


すき焼きは日本人に馴染みの深い料理。それも「ご馳走」の部類に入るわけだが、いきステはどんな形で提供してくれるのだろうか?

余談だが、我が家(佐藤家)は大晦日にすき焼きをする習慣がある。あれを食べると年の瀬を快く締めくくれると共に、来年もがんばろう! という気持ちが芽生えてくるのだ。肉に舌鼓を打ちつつ、新年を迎えるのもいいもんですよ。

だから大いに期待している。見せてもらおうか、いきステのすき焼きの実力とやらを……


・いざ、入店

初日にお店へ行ってみると10人程度並んでいて、入店まで30分かかるとのことだった。で、その行列というのが、どうも取引先の人ばっかりだったみたい。

「関係者はレセプションに招けばいいのに」なんて思っていたら、漏れ聞こえるところによると、レセプションもあったらしい。つまり、取引先の方々が気をつかって開店初日に利用しにきていたようだ。まあ、いろいろあるわな。

そんなわけで30分経って入店。店内はコの字型のカウンターのみで、15席程度設けられている。カウンターの中には立派な盆栽が! 盆栽っていうのかな、コレ。とにかく高級感の演出がスゴイな。


着席すると、手元に盆があってその向こうにすき焼き鍋がある。たしかに1人1台制だ。座った位置からだと、鍋がちょっと遠いような気もするけど、届かなくはなさそうだ。


引き出しには、紙エプロンと手拭き、それからスプーンが入っている。スプーンはシメの卵かけご飯のためのものだ。


メニューはというと、3種のすき焼きセットのみ。国産牛・黒毛和牛・ブランド和牛でそれぞれ値段が異なっており、この日のブランド和牛は飛騨牛とのこと。

セット内容は共通で、ご飯・生卵・味噌汁・お新香・あおさ(のり)、デザートにミニソフトクリームがついている。ちなみにご飯と味噌汁は1回ずつおかわり可能だ。


注文したのは、国産牛セット(税込1980円)である。


・ワクワクするもののはず

スターターキットはこんな感じ。肉の大きな器と生卵用の小鉢、それからお新香・あおさ・味噌汁が出てきた。肉とご飯はまだない。


卵は「十六代真っ赤卵」というブランドのものである。読み方は「マッカラン」、口頭でその名前を言われたので、てっきりウイスキーにでも漬け込んだ卵かと思ったらそうじゃなかった。日本一黄身が赤いと言われる、青森のブランド卵でした。


少しして、肉がキター! このお店では肉の旨味に集中してもらうために、あえて野菜抜きにしているという。さみしい気もするけど、それで美味けりゃいいか。


では、焼こうかなと思ったら、お店の人が「まずは鉄板に牛脂を乗せますね」といって、調理を始めた。あれ? まさか、ここはやってもらえる感じ?


周りを見ると、スタッフが付きっ切りでそれぞれの鍋で肉を焼いている。そういう店だったのね! 1人すき焼きと聞いたから、セルフだとばっかり思ってたよ。スタッフは脂が馴染んだところでザラメを敷き……。


肉を半分投入した後に、頃合いを見て割り下を流し入れた。


薄切りの肉はまたたく間に色づいて、両面いい色合いになったところで皿に置いてくれる。ご飯が出てきて、すき焼きセットの完成です。


これがこのお店のすき焼きです。なんかやっぱり思ってたのと違うんだけどなあ。肉のみって割と殺風景な気が……


濃厚な卵に浸した肉を頬張ると、たしかに美味い。肉そのものの味もさることながら、ザラメも割り下も上品で、普段食べ慣れたすき焼きよりも繊細な味だ。


ご飯は北海道産の「ゆめぴりか」……、と仰ったと思ったけど、とにかく米も定期的にブランドが変わるそうだ。この米が美味かった。米の旨味が肉の旨味を少し上回ってしまってるくらいには、米を美味しく感じてしまった。


続けざまにスタッフが肉を焼いてくれて、先ほどの皿に投入。追加オーダーをしなかったので、私のすき焼きはこれで終わりだ。


やっぱりなんか違うなあ。すき焼きって、もっとワクワクが持続する料理じゃなかったっけ? これで終わり? 肉はたしかに良いものではあるけど、すき焼きを食べているというよりも、すごく薄いステーキを食ってる感覚に近いのは気のせいかな。

本気出したら2口で食べ終わってしまう。「すき焼き」を感じる時間がとても短かった……


最後に残った卵はご飯にかけて、あおさをふりかけて頂きました。


食後のデザートにソフトクリームを頂いて、すべて終了です。


・気になるところ

そのほかにも気になるところがあった。まずは提供に時間がかかる。スタッフが付きっ切りで1人ひとりに提供するそのホスピタリティは良いけど、新橋界隈の忙しいビジネスマンは「サクっとランチ」ってわけにはいかないかもな。インバウンド需要を見込んでいるらしいから、時間のある観光客を相手にするつもりなのかも。

それから私は勝手に自分で焼くと思っていたもんだから、人に焼かれると落ち着かない。自分の間で焼きたかったんだけど、それを望んだのが間違いだったか。

それと会計がセルフレジで、「そこはセルフなんだ」ってなっちゃいました


はたして、「すきはな」は「いきステ」に次ぐブランドになり得るのか? 今後の展開が気になるところである。


・今回訪問した店舗の情報

店名 すきはな 新橋銀座口店
住所 東京都港区新橋1丁目‐11‐5 コルティーレ銀座口ビル1階
時間 11:00~23:00(L.O.22:30)
定休日 無休

参考リンク:すきはなペッパーフードサービス
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24