スーパーに売られているカップ入りの玉子どうふは “オカズが1品足りない時のお母さんの救世主” みたいな存在である。自作できるなどと想像したこともなかったが、先日行った金物市で『玉子どうふ器』(税込1100円)というのを見つけた。
考えてみれば玉子どうふは結構シンプルな材料で作られているハズ。問題は「どうやって豆腐状にするのか?」という点だが、そこをオール解決してくれるのが『玉子どうふ器』に違いあるまい。ってことで即購入した結果……
オール解決には程遠かったけど、いい奥さんになれそうな気はした。
・簡単に言うけどさぁ
玉子どうふ器の全貌は、ステンレス製のトレイっぽいやつと仕切りっぽいやつ、それだけ。
材料は卵、だし、塩、うすくち醤油、みりん。ある程度の自炊はできるつもりだが、「うすくち醤油」を購入するのは人生初かもしれない。
それより問題は「だし」である。だしって……何? ワードとしてはよく聞くけど。昆布とかニボシとかを煮て作ることは分かるけど。結局なにがどうなった状態が「良いだし」なのか、和食初心者はイマイチよく分かっていない。
この玉子どうふ器はそんな和食初心者向けに作られていないようで、「だし」の作り方については100%省略してあった。幸い『味の素 ほんだし』の裏面に「だしの作り方」が記されていたためことなきを得たが、上京したての大学生ならこの時点でジ・エンドだろう。
基本のタネは5分で完成した。てっきりゼラチンとかを入れるのかと思っていたら、卵をといて調味料と合わせるだけらしい。
・だから簡単に言わないでってば
ただ、そこからも玉子どうふ器の素人拒絶ノリは相変わらずだった。「裏ごしする」「蒸し器に入れる」「ふきんをかぶせる」といった文言が当たり前のようにサラッと登場するのだが、こっちは裏ごしの方法もふきんのかぶせ方も分からない。もちろん蒸し器なんて持ってない。
ダイソーへ行ったらなんか使えそうな商品が売られていたので買った。使い方は分からんが、自力解決を試みることで女子力がグングン上がっていく音が聞こえる。
人生初の裏ごしチャレンジ。「ふきん」にタネを流し込んでしぼる。
お!!!?
案外いい感じかも!!?!!?
裏ごしの正解はよく分からなかったが、ふきんに卵のカスが残留していたことから、そこそこ成功とみていいのではないだろうか。女子力が、女子力が上がってゆく〜!
蒸し器もなんかそれっぽく鍋に収まってくれた。
あとは鍋を熱して蒸し布をかぶせ、フタをすれば「蒸し」状態が完成する……ハズである! お、早くも香ばしい匂いが!?
・過酷! 和食の世界
と思ったら、蒸し布がコゲている匂いだった。
「かぶせろ」と言われて素直にかぶせたら危うく大火事リスクとは、和食の世界はかくも厳しいものである。「弱火で15〜20分蒸す」とのことだが、好奇心と不安感から5分後にフタを開けてみたところ……
蒸し布が完全に浸かっていた。和食の世界厳しすぎだろ。
そして約束の20分後。どう見ても固まっていなかったので、蒸しの続行が確定。「約束の時間を過ぎても固まっていなかった場合の対処法」など当然書かれていない。そもそも火加減とかフタのずらし方も全然自信がなかったし、こればっかりは経験を積むしかないよなぁ。
蒸し始めてから30分後。ついに玉子どうふは固まった。固まり過ぎたと言っても過言ではないかもしれない。
・スゴかった
で、完成した玉子どうふがこちら。
「汚ねぇな」……そう思っただろう? まぁ待て。これには理由がある。
今度は加熱時間が長くてやや固まりすぎてしまったのだ。ステンレスのヘリにこびりついた玉子どうふをスプーンではがし、エイヤッ! とひっくり返す。
その結果がコレである。まぁ私は硬いプリンが好きだし、何も問題はないでしょう。
スーパーに売ってる玉子どうふと比較すると10倍くらいのサイズ感。
スーパーに売ってる玉子どうふの個人的な所感は「存在感のない食い物」あるいは「究極の箸休め」といったところだ。腹持ちが悪くて、味が薄くて、メチャクチャおいしいとかではない。なくてもいいけど、あったら嬉しい……それがスーパーに売ってる玉子どうふ。
対する手作り玉子どうふ。これはスーパーのとは全く別の食べ物と捉えていいだろう。腹持ちが良くて、卵とダシの味がドッシリ感じられて、メチャクチャおいしい。そう、例えるならズバリ……
「具のない茶碗蒸し」そのものッ!!!!!
今回は初挑戦のため若干手間取ってしまったが、玉子どうふは慣れたら非常に簡単な料理である。おまけに超ヘルシーで材料費も安いから、フトした間食などに最適。お世辞抜きで私は今後しばらく作りつづけると思う。
今「レンジでもできそう」と思った君へ。「だし」「裏ごし」「蒸し」という人生における重要な体験ができたという点において、私は玉子どうふ器を買ってよかったと確信している次第だ。まぁ最悪レンジでもいいから、みんな手作り玉子どうふを食べてみるべし! これはイイぞ!
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.