「タマリンド」と聞いて、なんのことだかピンと来る人はいるだろうか。……いるとすれば、よっぽどのフルーツマニアか東南アジア在住の人であろう。
もちろん筆者(高木)は、実物を見るまでは存在すら知らなかった。
タマリンド、タマリンド。思わず口ずさみたくなるようなリズミカルな名前のこのフルーツは、一体どんな味なんだろうか?
・マメ科のフルーツ!?
さっそくだが、こちらがタマリンドの実物。
近所のスーパーで「南国で人気のフルーツです」と書いて売られているところを発見し、タイ語の表記に「何コレ!?」と一瞬で食いついてしまった。
価格は税込970円。思わず「高っ!」と口に出てしまったが、わざわざ海を越えてはるばるやって来たのだ。温かい気持ちで我が家へ迎え入れてあげようじゃないか。
さて、みかんネットみたいな防御力の低い包装は、ハンドボール1個分ほどのサイズがあるわりに非常に軽い。
中には細長く茶色い乾燥したものがギッチリ入っている。コレがそのタマリンドってヤツなのか?
初めて見た。初めて見たけど、コレって……
どう見ても豆、だな。
ソラマメをサヤごとカラカラに乾燥させたような見た目、といったら伝わるだろうか。いわゆる “トロピカルフルーツ” からは程遠い地味さである。
調べてみたところ、実際タマリンドはマメ科に属するのだそう。えっ、それって本当にフルーツっていう分類で合ってるの? 野菜じゃなくて!?
・食べてみた
初めて見るため、正しい食べ方がわからない。たぶん殻は剝かなきゃいけないだろうな……と力を込めてみると、いとも簡単にパキパキと割れていく。
おそらくタマリンドの殻は、落花生の半分以下の脆さだろう。発泡スチロールが少し堅くなったぐらいの強度しかない。
さらに「うへぇっ」と悲鳴が出たのが、果肉(?)の周りを血管のように囲む管である。
たぶん栄養や水分を運ぶための管、みかんで言うと白い筋のようなものなんだろうけど……果肉が干からびてる分、ミイラみたいで気持ち悪いよ~!
また「豆のクセに」といったら失礼かもしれないが、他の豆にはないような、甘くて素朴でなんだか懐かしい香りも漂ってくる。
うぅぅーん、未知の食べ物過ぎて口に入れるのが怖い! でも、買ったからには食べておきたい!!
葛藤の末におそるおそる口に運んでみると……
あっ、ちょっと待って、コレは美味しい!
美味しいし、食べたことのある味がする! めちゃめちゃ知ってる食べ物の味がする!!
殻と筋をすべて取り外したタマリンドは、ねっちりと粘り気のあるこしあんのような質感。
甘みと酸味があり、見ために似合わぬフルーティーさ。そして肝心のお味は日本の冬の心、なんと「干し柿」とソックリなのである!!
あぁタマリンド。距離にして約4000kmを移動してきたというのに 実家のような安心感。多くの日本人にとって、まったく嫌悪感や抵抗のない味であることは間違いないだろう。
ちなみに、果肉の中には薄皮と種が入っている。
果肉だと思った部分はおそらくワタで、そのなかに豆(種子)が包まれている構造なんだね。
名前と外見から、はじめは遠い存在に思えたタマリンド。しかし実際に食べて見ると、こうも似ている食品があるのかと思うぐらいに干し柿そのもの。
もしも機会があるならば、今度は逆に東南アジアの人に干し柿を食べてもらいたいと感じた次第だ。
……さて。ここから先は汚い話になるため、抵抗がない人のみ読み進めてほしい。
余談というか後日談なのだが、タマリンドを試食した翌日、筆者は異常なほどの快便を体験した。
どれぐらいかというと1日に5回。それも程よいサイズ・固さのブツがスッキリ心地よく、ほとんど気張りなく、である。
普段から便秘とは無縁の筆者にとってもコレは異常事態。「まさかタマリンドと関係が!?」と思って調べたところ、古くからタマリンドには 腸内環境改善の効能があるとささやかれているらしい。
もちろん食品であって薬ではないため、大きな効果があるとは考えにくい(実際別日に試したところ、それほど変化は感じられなかった)のだが……1回ぽっきりの快便マジックに、個人的には非常に好奇心が刺激されたところ。
今後も時々かじってみて、継続して腸の調子を観察していく所存だ。
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.