長かった……、この日を迎えるまでの月日は、途方もないほど長かった。2016年12月、43歳からポールダンスを始めて約8年の歳月を経て、私(佐藤)はついに念願のひとつが成就した。

それは、「縦開脚で太腿を床につける」こと。ついたんだよ、ついに太腿が床についたんだよ!

すぐそこにある、でも届かない……。始めた頃、私の太腿と床との距離は『永遠』とも呼べるほど遠く隔たれていた。何度諦めようと思ったことか、でも夢は叶う! 信じれば必ずその日が来るんだと、高らかに叫びたい! ウオーー!! 神様ーーーッ!

夢が叶い、その喜びをかみしめると同時に苛立ちも覚えている。世の安直なストレッチ動画に、一言いわせてもらおう! 「たったコレだけ!」とかカンタンに言うな!

・できるペースで続けることが大事

私は定期的にストレッチに関する記事を書いている。おそらく年に1本か2本程度の頻度で、自らの成果を振り返りつつ、柔らかくなりたい人を励ますつもりで、記事を書いているのだ。

なぜ、そのような頻度になるかというと、柔らかくなったことを実感できるのに、1年くらいかかるからである。それまではずーーっと変化を実感できない日々が続く。

そんな私のストレッチは、週3回。ポールダンスの練習の時に、ゆっくり1時間半くらいかけて行っている。念入りにやってそれだけの時間を要しているわけではない。スマホを見ながらダラダラダラダラやっているだけのことである。

そのストレッチ習慣も4~5年になるだろうか。正直にいえば、もっと高い頻度で真面目にストレッチをしていれば、8年もかかることなく、腿が床につくはず。毎日深いストレッチができれば、1年もかからないかもしれないのだが、結局続けなければ目的を達成できないので、できるペースでやることが、1番の近道だと私は考えている。



・年1回の実感

振り返ると、私が今の週3ペースでストレッチをやるようになったのは、2018年頃だったと思う。この頃、「ポールスポーツ」という大きな大会に出場し、精いっぱいやったのだが、不本意な結果となった。

これではいかん! と思い、練習の頻度を上げた覚えがある。


とはいえ一朝一夕に変化の出るものでない。なにしろ、運動経験ほぼゼロのおっさんなのだがら、メキメキ柔らかくなる! とはいかないのである。

「意地になってもしょうがない」と腹をくくって、ただ淡々と日課をこなす日々が続いた。

幸いなことに半年から1年に1回くらいで過去の写真を振り返ると、「あれ? 前より伸びてない?」というささやかな満足を得られ、そのおかげで自分の未来の姿を思い描くことができたのだ。


・新世界の扉が開いた

今年に入って、コンディションの良い日に太腿が床に触れている感触を得た。こりゃもしかして! と思い、写真を撮ってみるとめっちゃイイ感じ! キターーー!!


……と、素直に喜びたいところだけど、この写真はちょっとだけ「背伸び」をしている。というのは、つま先を外に開いて、脚を横倒しにしているのだ。純粋な縦開脚で床についているわけではないのですよ……


実際はこうです。しっかり真っすぐにすると、あと5センチないくらい! この距離が悩ましい!! チキショー!


右脚を前にした方が柔らかく、左脚を前にすると右脚の前腿がこわばって、さらに距離が開いてしまう


でも、わかって頂きたい

少し背伸びしたとはいえ、はじめて太腿が床に触れた瞬間は、マジで感動した! 見知らぬ世界の扉を開けたみたいに世界がほんの少し違って感じられたよ。これが新世界か~!

まだ完全ではないにしても、ほんの少し床に触れただけで、さらなる希望が湧いてきた。まだまだがんばれるぞ~ッ!!



・でも横開脚は……

とはいえ、横開脚はまったくといって良いほど成長できていない。頭が床につくようになってからすでに数年経っているのに、新しい扉が開く気配がないのだ。


昨年と比べても胸と床との間の距離は、縮まるどころか少し開いているような気さえしてしまう。横開脚は横開脚で、さらなるストレッチを模索する必要がありそうだ



・動画でカンタンに言うな

いずれにしても、続けることでしかたどり着けない領域に来ていると、私は信じている。本当に少しずつだが、柔らかくなっている。

そんな私は、一言いいたい! YouTubeやInstagramの安直なストレッチ動画に、一言モノ申す! だいたいどれを見てもほとんど一緒なんだけど、何でもかんでもカンタンに言いすぎでしょ


「縦開脚、たったコレだけで引くほど柔らかくなる!」
「1日3分で180度開脚!」
「柔らかくなるどころの騒ぎじゃない!」


尺の短い動画だから、できるだけインパクトのある言葉を詰め込んで伝えなきゃいけないのはわかるけど、そんなにカンタンじゃないでしょ?

あの手の動画を見て「そうか! やってみよ!」って思った人が「全然カンタンじゃねえ!」ってなって、続けられなくなることが問題なんですよ。とにかく飛びつかせて、そのあとは知らんってなってないですか?

そうじゃなくて、「時間がかかっても必ずできる」って伝えることが大事だと思うぞ!


人はそれぞれ、身体の特性が違うし、人生経験や生活習慣によって身体の使い方も違うし、身体の使いグセも違う。だから、「万能なひとつの方法」なんてないはず。だから「たったコレだけ」なんてのはないと思うよ。

柔軟は短距離ではなく長距離なんだから、その人のペースで長く続けることが結果的に近道なんじゃないかと私は考えている。

だから、その手の動画を作る人は、諦めずに続けられる方法も伝えてほしい。聞こえの良いものだけじゃなくて、多少は耳が痛いことでも、「大丈夫」って励ましてほしいんだよなあ。

中には「若返る」とか「内臓洗浄」とか、ストレッチでそこまで言っていいんか? と思う人もいるけど、できる限り誤解を与えないようにして頂きたい。



・大丈夫

少し話が逸れたけど、そんなわけで私の地道なストレッチはこれからも続きます。縦開脚でちゃんと太腿が床につくまで。横開脚で胸がちゃんと床につくまで

私は時間がかかっているけど、ダラダラしているから時間がかかっているので、もっと短時間で効率的にストレッチを続ければ、6年も7年もかからずに、できるようになるはず。だから、柔らかくなりたいとお考えの皆さんは、最初から「無理だ」と諦めないで。やってて成果が出ていなくても、日々の積み重ねを信じて、取り組んで頂きたい

大丈夫! だって、私でさえ柔らかくなってるんだから。


執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

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