長崎土産の定番「カステラ」。
その中でも、もっとも長崎市民に愛されているのが、今年2024年に創業400周年を迎えた「福砂屋」のカステラである。
同じ長崎名物でも「ちゃんぽんはリンガーハットでじゅうぶん」と寛容な姿勢を見せるが、なぜかカステラだけはこだわりが強く「カステラは福砂屋しか食べない」という人も多い。
その福砂屋から、ほうじ茶味のカステラが限定で発売されているではないか! こ、これは事件だ!
・超ストイックな福砂屋
400年にわたってカステラを作り続けている福砂屋。販売しているのは
・カステラ
・特製五三焼きカステラ(カステラの高級版)
・オランダケーキ(くるみとレーズンがのったココア風味のカステラ)
・手作り最中
の4種類だけ……という姿勢が長く続いていた。
ほかのカステラメーカーが別のお菓子や変わった風味のカステラを出す中、ストイックな姿勢を崩さない。
私の記憶では、ようやくカステラに切れ目が入ったのが約20年前。お土産用に2個入のカステラキューブが発売されたのが10年ちょっと前……という感じ。
カステラに切れ目が入ったり、2個入が出ただけで「あの福砂屋がついに」と、市民にはビッグニュースになるほどであった。
よく考えたら、切れ目が入るのに350年以上かかっているってすごくないですか。それだけこだわりが強いということだと思うけど。
・ついに限定味発売
そんななかで、ついに2024年8月10日に、カステラの限定味が発売されたのである。
しかも「ほうじ茶味」のカステラ。気にならないわけがない!
「フクサヤキューブ ほうじ茶カステラ」は2切れ入で378円。
現状、販売しているのは長崎県内の一部店舗のみ。レアなことは間違いない。
しかしいつ見ても「完売」の札が立っており、聞けば「入荷数が少ないので午前中には完売してしまう」ということで、朝イチで店舗に行ってようやくゲットできた!
・震える
あの硬派な福砂屋が出した限定味のカステラ……一体どんな味なのか。
説明によると、上質な一番茶の茎部分である「白折(シラオレ)」を選別し、強い火で焙じることで生まれる“浅炒りの焙焼香”が特徴……とのこと。
さらに、ほうじ茶の苦味を極力おさえて、甘さも通常よりも控えめにしてあるそうな。ちょっと今どきのカステラなのかな。
封を開けてみると、ほうじ茶らしい、茶色がかった生地の色が新鮮……!
さっそくお茶をいれて、どきどきしながら食べてみると……
口に入れた瞬間、ふわっとほうじ茶の香りがする。だけど、決してほうじ茶の主張が強くはないという上品さ。
そして、福砂屋のカステラならではの卵の香りとしっとりとした甘さが口の中に広がる……。
もちろん、底にあるザラメも健在。このザラメのシャリッと感こそが至宝である。
限定味だからといって、「ほうじ茶味ですよ〜!」みたいな強い主張はなく「ほうじ茶の香りを、つけてみました……(スッ)」というさりげなさ。
ほうじ茶の味がガツンとするほうが好きな人からしたら、少し物足りないくらいかもしれない。
だけどあくまでもうちの主役はカステラである、という伝統と誇りを感じる上品なバランスであった。
今年は400周年だからか、ほかにも期間限定で抹茶味やレモン味のカステラキューブも出すようで、そちらも食べてみたくなった。
福砂屋はカステラひとすじ400年。同じことをずっと、一定のクオリティで続けていくというのは難しいことだと日々、痛感する。
時代の流れもあって、変わらないというのは難しいけれど、流されることなく自分らしさを大事にする……ということを学んだような気がするのだった。