地元を出てから初めて気づいたのだが、お盆の迎え方とかお墓の形などは意外と各地域によって微妙に違う。
お盆に対する熱量の高さでいうと、おそらく長崎県は全国トップクラスなのではないか……。
さだまさしが『精霊流し』という曲を歌っているので、長崎はお盆に「精霊流し」というものをするらしいというのは、比較的知られていると思う。
実はお盆の墓参りや墓の形なども、長崎はけっこう特殊だということがわかったので紹介したい。
・お盆は墓で花火する
まず、一番ビックリされるのが「長崎はお盆に墓場で花火をする」ということである。
夕方くらいからお盆に親戚みんなで集まって、まだ日が高いうちは爆竹、やびや(ロケット花火)、パラシュートといった、音メインの花火を楽しむ。
日が落ちて暗くなってきたら、手持ち花火とか小型の打ち上げ花火、線香花火なんかを楽しむという流れ。
墓場のあちこちから花火の光と、子供のはしゃぐ声が聞こえる。写真は一見、火事のように見えるが墓場で花火を楽しむ姿である。
他県の人に「お盆に墓で花火なんて不謹慎な!」と驚かれるのだが、小さい頃からこれが当たり前で育っているので、逆に他県では墓で花火しないと言われてびっくりした。
だって、墓地にはバケツもあるし、線香に火を付けるためにロウソクもあるし、花火をするにはどう考えたって最適なのである。逆に他県の人はどこで花火をやっているのか。
親戚の子どもたちで集まって墓で花火をする……というのは、子供時代の楽しい思い出である。
・墓で酒盛りする
ちなみに、長崎では家だけではなく墓にも迎え灯籠をする。
初盆などは13日の夕方から15日の夕方まで、3日連続で墓に行って灯籠にあかりをつけて、夕方から夜にかけて墓で過ごすのだ。
2時間くらい墓にいるので、その間に大人は酒盛りをしたり、お弁当を食べたりして、故人の思い出話をしながらのんびり過ごす。
今年は猛暑で弁当が腐りそうだったので、母も好きだったポンパドールのパンを買って食べてきた。
墓で酒を飲んだり、弁当を食べたりするなんて、これまた不謹慎な……と他県の人には唖然とされそうだが、子供の頃からそれが当たり前で育ってきた。
ちなみに花火をしたり酒盛りをしたり……といったら、どんちゃん騒ぎをイメージされそうだが、あくまでもみんな「お盆の行事」としてやっているので、羽目を外して大騒ぎはしない。故人を弔う静かな賑やかさ……といったら伝わるだろうか。
・墓の構造からして違う
墓で花火をしたり酒盛りをしたりと、めちゃくちゃ長く墓にとどまるわけだが、それは長崎市の墓の構造自体が他県と違うからだ……ということに気づいた。
まず、墓の面積が広い。だいたい2〜3畳ほどのスペースがあって、隣の墓とは塀で区切られている。
パーソナル墓スペースが広いので、花火なんかをやってても他人の家の迷惑にはなりにくいのだ。
そして、墓の中に物置を兼ねた石のベンチがあって座れる。お金持ちの家の墓だと、ベンチとテーブルの両方が置いてあったりする。
ちなみに、墓地の床が石になっていて、雑草が生えていないのも、長時間居やすいのかなと思う。
・夜景がめっちゃキレイに見える
ちなみに、長崎は平地が少ないので墓地があるのはだいたい高台の斜面。
昼間の墓地からは長崎の青い海と空が見え、夕焼けが落ちる様が見える。
おかげさまで、夜になるとどこの観光地よりも墓場が夜景がキレイに見えるのだ。
故人を偲びながら、家族で夜景を眺めて、お酒を飲んで、花火をする……。
そうやって過ごしていると、亡くなった母や祖父母も一緒にそこにいるような気がしてきてけっこう楽しいのである。
お墓参りが苦にならないのは、楽しい思い出があるからなのもかもしれないなあと思うのだった。
・土地によってお盆の過ごし方は違う
冠婚葬祭などは自分の土地の風習がスタンダートだと思いがちだが、逆に長崎だとお盆に茄子やきゅうりで馬や牛を作ったりとかはしない。
お盆の過ごし方はその土地によって微妙に異なるのだと思う。
しかし、結婚して長崎県外に行った人などは、義実家の墓参りで気を利かせたつもりで酒や花火を買っていって顰蹙をかったりしていないか心配である。
ちなみに、墓参りで酒盛りしたり花火をやったりとにぎやかに過ごすのは、「精霊流し」の影響もあるのかもしれない。
さだまさしの歌のイメージとまったく違う、狂乱の精霊流しのレポートも掲載予定なのでお楽しみに(!?)
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
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