皆さんはウランガラスをご存じだろうか?

19世紀から作られてきたウランガラスは、微量なウランを着色剤として使用している 黄緑色のガラス製品。紫外線を当てると鮮やかな蛍光グリーンに発光するという、まるで魔法のような特徴を持っている。

現在はごく少量のみが製造されているのだが……なんと、日本で唯一 “ウランガラスでグラス作り体験” をさせてもらえる施設を発見したぞ!

・岡山『妖精の森ガラス美術館』

やってきたのは岡山県の北寄りの街、鏡野町。国道179号線沿いにお目当ての施設『妖精の森ガラス美術館』はある。

妖精の森ガラス美術館は、世界的にも珍しいウランガラスをテーマとした美術館。

実は鏡野町は、日本で唯一ウランの露頭(地表に露出したところ)鉱床が発見された地域。そのことから、日本で唯一 国産ウランガラスの工房が置かれているのが、この妖精の森ガラス美術館なのである。


もちろん「美術館」という名の通り、歴史的・美術的価値を持つ数々のウランガラス作品の展示があり、館内のショップでは作品を買うことも可能。

ウランガラスファンにとっては まさに楽園のような施設なのだ!


・ウランガラスでグラスを作ってみた!

さて。一通り美術館の展示を見て回ったところで、今回のお目当て「ガラス体験」にいってみよう。


妖精の森ガラス美術館のガラス体験には「吹きガラス体験」「リューター体験」「サンドブラスト体験」の3つがあり、今回筆者が挑戦するのは吹きガラス体験。

名前の通りガラスを吹いて膨らませ、オリジナルのグラスまたは一輪挿しを作ってみようという体験なのである!

価格は透明ガラスが3500円(税込)でウランガラスが4500円(税込)。せっかくだから迷わずウランガラスを選択したぜっ!!


受付を済ませて料金を支払うと、さっそく美術館に併設された工房へと案内される。

真ん中に炉(グローリホールというらしい)が置かれた工房の中は暖炉の前のように暖かく……というかむしろめちゃくちゃ暑い。一瞬でじんわりと額に汗が浮かんだほどだ。


体験にかかる時間は30分ほどと意外にスピーディ。目指すグラスの形状を決めれば、早くも体験がスタートした。

まずは高温で真っ赤になった練り飴のようなガラスの塊を 金属製の棒(吹き竿)で取り出してもらい、息を吹き込んで膨らませる。力加減は風船よりも弱いぐらいかな。

溶けたガラスは形状が安定しないため、吹き竿をクルクルと回し続けなければ垂れてしまう。もちろん筆者一人では上手く作れないのだが、そこはスタッフさんが手厚くカバーしてくれるから安心だ。


続いて新聞紙を重ねて水を浸透させた「紙リン」という道具を使い、形状を整える。

薄い紙が重なっているだけなのに、まったく熱さが伝わってこないし燃える様子もない。紙と水の力って不思議だなぁ!


あとはグラスを好みの形に整えて、


飲み口の穴を開ければ……


オリジナルグラスの完成ですっ!!

次々と未体験の作業が舞い込むため、体感としては5分ぐらいで完成してしまった。あっけないけど面白かった~!


吹き竿から切り離したあとは、スタッフさんがバーナーで仕上げをしてくれる。底がツルッと丸くなったぞ!


完成直後のグラスは1000度以上のアチアチ状態だ。

急激に冷やすと割れてしまうため、最後は500度に熱された小型電気炉の中に収納される。そのままひと晩ゆっくりと冷やせば完成だ!


ウランガラスはもちろんのこと、吹きガラスの製作自体が筆者にとっては初めてのこと。太陽のようにブワッと熱を発するガラスは、吹き竿の分1メートルほど離れているとはいえ、ただそこにあるだけで恐怖を覚えるような存在感があった。

それが徐々に自分の手で形を変えていく様は、幼少期の粘土遊びが大人向けにバージョンアップしたみたい。

ぶっちゃけほとんどスタッフさんに手を添えてもらって形作ったワケだが、我ながらかなり可愛いフォルムのグラスが完成した……ような気がする。


完成したグラスは翌日以降に宅配便で発送してもらえる(翌日午後の持ち帰りもOK)。ワクワク、どんなグラスができたのかな~っ!?


・うわぁ! 光ったぁ~~っ!!

吹きガラス体験から2日後のこと。「ピンポン」と鳴ったチャイムに全力ダッシュし、荷物を受け取った。

中身はもちろん……

オリジナルグラスだぁ~~っ!!!!

今回は表面に気泡が入る加工を施したため、夏っぽい涼しげな印象の作品に仕上がった。洋ナシみたいなポテッとしたフォルムもたまらんぐらい可愛い!


おまけに、スタッフさんの仕上げにより底までツルッと艶やかで美しい。

市販品のグラスに比べるとぶ厚く重いが、それでも大満足の仕上がりとなった。あぁ~、作ってみてよかったぁ!!


──ここまでひと通り喜んだあと、次の欲望がムクムクと湧き上がってきた。

「せっかくのウランガラス。光らせてみたいっ!」


ってことで、今回作ったグラスと館内ショップで購入したぐい呑み・小物を並べて、


ジェルネイル用に使っているLEDライトを……


ポチっとな!

うおぉぉぉっ、光ったぁぁ~~~っ!!!!


「バルス」で輝く飛行石のように、作品たちが鮮やかな蛍光グリーンに光り輝いているのだ。

眩しい! けど、この眩しさは光だけが原因ではない!! 筆者の心の底まで明るく照らされているからより明るく感じられるのだぁ~~っ!!!!


普段使っている時は何の変哲もないガラス製品なのに、紫色のライトを浴びたとたん美しく発光する。あぁ、これをロマンと言わずしてなんと言おうか!

制作から光らせるまで唯一無二の体験ができたウランガラスの吹きガラス体験。筆者はきっと、これからもこのグラスを使っては 光っていた時の様子を思い出し、顔がほころばせることだろう。

・施設情報

施設名 妖精の森ガラス美術館
住所 岡山県苫田郡鏡野町上齋原666-5
開館時間 9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日 火曜日、年末年始(火曜日が祝日の場合は開館)
ガラス体験の開催は土・日・祝日のみ。予約優先のためご注意ください。

参考リンク:妖精の森ガラス美術館
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.

▼ここからは、妖精の森ガラス美術館での展示内容をご紹介しよう! 建物は2階建てで、1階は常設展・2階は企画展。

▼常設展ではいくつかの展示にボタン(写真赤の矢印)が設置されており、

▼ボタンを押すと それまで明るかった室内が暗くなり……

▼ウランガラスの作品が発光したぞ! う、美しい~~っ!!

▼製造年が明確なウランガラスとしては世界最古のミルクピッチャーや、ロシア皇帝のゴブレットなど、数多くの歴史的・美術的に素晴らしい作品を見学できる

▼ライトのスイッチがない作品も、レンタルのペンライトで照らして見学することができるぞ

▼館内ショップではウランガラス作品の他、透明ガラス作品も購入可能。どれも繊細で美しいものばかりだ!