
アルフレッド・ヒッチコック監督の代表作『鳥』。ストーリーは知らなくても、平凡な街を無数の鳥が不気味に占拠する場面カットは見たことがあるだろう。
『鳥』は凶暴化した鳥が人間を襲うパニック映画だが、青森県には島ひとつを埋め尽くすほどのウミネコと人間とが平和的に共存している奇跡の場所がある。
・ウミネコの繁殖地「蕪島」
写真は秋のものだが、海に突き出た小島「蕪島(かぶしま)」の頂上に、静かに鎮座する蕪嶋神社。青森県の太平洋側、八戸市にある。
浜辺から陸続きになっていて、徒歩で頂上まで登れる。祀られているのは弁財天で、芸事のほか漁業の神様でもあるそう。
八戸には過去記事で佐藤記者がレポートした「八食センター」もあり、とにかく海の幸が豊富なところ。のどかな港町という表現がぴったりだ。
しかし春から夏にかけて、この島の風景は一変する。7月の様子をご覧いただきたい……
奥に見えるのは休憩所。現役で機能しており、望むなら自由に中に入れる。しかし、それを阻むかのように広場でくつろいでいるのは無数のウミネコ!
ここ蕪島はウミネコの繁殖地。3月から8月にかけ、子育てのために集まるウミネコは3万羽とも4万羽とも言われる。もとから小さな島だから、足の踏み場もないほどのウミネコに埋め尽くされる。
ということは、数万羽分の排泄物が出されるわけで……地面はこの通り!
入口では無料で傘を貸し出している。使い道はもちろん日よけや雨よけではない。
神社に向かってみよう。すごいのが、繁殖シーズン真っ盛りでも境内の閉鎖などせずに、普通に参拝できるところ。鳥居がペンキを垂らしたように白く染まっているのがわかる。
階段、石灯籠、フェンス、鳥居……いたるところにウミネコがいる。手を伸ばせば届くくらいの至近距離(もちろんお触りは不可、観察時は距離をとるのがルール)。
人間を恐れる様子はまったくなく、むしろこちらが「あ、どうも、お邪魔しまぁす……」という感覚。
通常、野生動物の繁殖地というのは自然保護区だったり僻地だったりして、簡単には立ち入れない。しかしこの蕪島は、日頃から参拝者が絶えない場所。人の生活圏のすぐそばで、ウミネコが大繁殖しているのだ。
茶色いのはヒナ! 成長とほとんど同じサイズだが、鳴き声は「ピイピイ」と甲高い。
「小さい」とか「丸い」とか「ふわふわしている」とか、人が本能的に動物の幼体に感じる愛らしさはすでにほとんどないのだけれど、それでもなぜか、もんのすごくカワイイ! どこか表情や行動が幼い感じがする。
8月の巣立ちに向け、7月は飛ぶ練習を始める時期だそう。すでに海辺に集まっているヒナ鳥グループもいたが、親鳥(?)にくっついて歩いている子もいる。しきりに親鳥のクチバシをつついているのはご飯の催促?
しかし親鳥は塩対応で、ガン無視していた。独り立ちの準備なのだろう。厳しい。
神社の周囲は斜面になっており、普段(上写真は秋)は草に覆われた岩場が連なっている。
しかしこの時期、岩肌に見える白い点々……よ~く目をこらしてみるとすべてウミネコ!
一般的に「ミャアミャア」と表現されるウミネコの鳴き声だが、ここではもっと野太く「アアッ、アアッ」と聞こえる。何万羽もの大合唱だ。一日中聞いていたら、耳がキーンとしそう。
ところで、よく混同されるカモメとウミネコ。識別するひとつのポイントは、前述のように猫に似た鳴き声。もうひとつ、簡単に見分ける方法は「目」だと言われる。
カモメは目が黒っぽくて丸く見えるが、ウミネコは黄色い目に朱のラインが入って、鋭い顔つきに見える。
三白眼でちょっと怖いのがウミネコだけれど、よく観察してみると表情のキツい個体、優しげで愛嬌のある個体、いろいろな顔がある。知らなかった。
この時期、神社の周りの設置物はすべてウミネコのもの。社も石像もフンだらけだが、ここではそれが当たり前。季節が過ぎればまたきれいに清められる。
人をまったく怖がらないのは、誰も危害を加えず、大事にしてきた証拠だと思う。信頼関係といえば大げさかもしれないが、動物園以外でこんなに間近に鳥を見たのは初めてだ。ここは明らかに彼らのコロニーで、こちらが部外者。不思議な感覚だ。
もともと地球は動物たちのもので、後からニンゲンがやってきて、「まぁ、居ていいよ」と言われている感覚というか……。普段と関係性が逆転している。
なお、傘をさしたからといってブツの射出を防げるわけではない。けれど蕪島では、フンをかぶるのはまったく悪いことではない。
もし傘ではなく髪や服に「ウン」をつけられたら、頂上の蕪嶋神社の社務所に申し出るとよい。とても縁起のよいことで、開運のしるしだそう!
・8月は巣立ちのシーズン
この光景が見られるのもあとわずか。例年8月には繁殖シーズンを終え、もとの静かな島に戻る。
ちなみに蕪島に隣接して「蕪島プロムナード公園」があり、海水浴やバーベキューができる。信仰の場であり、野鳥の営巣地であり、くつろぎの公園でもあるというチャンポンっぷり。そこに地方都市特有の、のんびりとした時間が流れている。
こんな場所は日本中探してもないんじゃないか、と思えるほどユニークで魅力的なスポット。
頭蓋に響くウミネコの大合唱と、肌に感じる潮風、日常と信仰と自然とが入り混じる不思議な空間……ぜひ生命のエネルギーを感じてみて欲しい。
参考リンク:VISIT HACHINOH(蕪島・蕪島エリア)
イラスト・執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
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冨樫さや




















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