以前、私(耕平)が食べて衝撃を受けた、沖縄県石垣島のソウルフードと呼ばれている『オニササ』。

おにぎりと鶏のササミ揚げを、ビニールの中に入れてソースなどをかけてギュッとしてから食べるという、本土でもありそうでなかった斬新なソウルフードだった。

そして沖縄本島にも斬新な組み合わせのソウルフードがあるという情報が! その名も『いなりチキン』。いったいどんな味なのか? 確かめるべくうるま市に向かった──。

・ラジオパーソナリティの激推しグルメ

この『いなりチキン』を知ったきっかけ。それは私が毎週聴いている、日本最南端のコミュニティラジオ局「FMいしがきサンサンラジオ」で放送されている情報番組『よ~んな~ユンタク』だった。


MCを務める「こーずー」こと浦部こずえさんに「沖縄中部に初めて行くので、オススメのスポットやお食事処を教えて!」と番組内で質問したところ……


「中部に行くなら『いなりチキン』はマスト!」


と、教えてもらったことから始まった。果たして『いなりチキン』とは、前述したオニササのような沖縄県民以外の発想に無いような、隠れた “シンプルイズベスト” な激ウマソウルフードなのか?

それとも骨付きのガーリックチキンの先に、いなりを巻いているようなものなのか? そんなことを考えながら、うるま市に到着した。



・トラブル発生

その後『いなりチキン』について調べたところ、うるま市にある「丸一食品」という会社で作ったものが発祥ということが分かった。

しかし6月上旬の月曜日、「丸一食品」に向かおうとネットで調べたところ、なんと休業日!

東京にも専門店が1軒だけあったので、その店舗を訪問しようかと思ったが、今年2月に閉店していた。

帰りの便はその日の夕方。

「もしかしたら『いなりチキン』が食べられないかもしれない……」そんな思いを抱えながら、別件で取材があった「うるま市役所」に向かう。


そこで助けてくれたのが、広報担当の與那城(よなしろ)さんと野原(のはら)さんだ。


取材中に事情を話して「どこかで食べること、できないですかね……?」と尋ねてみると、うるま市役所内にある『うるマルシェサテライト店』にあるかもしれないということで、連れて行ってくれた。

しかし普段なら販売しているらしいが、「丸一食品」から仕入れているため、休業日で配達されていないとのことだった。

「もうダメなのか……」と半ば諦めていたのだが、その場でお2人が調べてくれて、市役所から徒歩で行ける範囲で「いなりチキン」を販売しているお店を見つけてくれたぞ!

いやー、お2人には本当に感謝しかない!!



そして、市役所から20分くらい歩いたところにある「あらかき天ぷら店」に到着。


店頭には、お目当ての品がズラリ! 他にも、天ぷらが数種類売っていた。


私が着いたのが昼時だったこともあり、地元の人たちがひっきりなしに訪れている。


そして、念願の『いなりとチキンのセット(各2個入り)』(460円)を注文。



・その視点は無かった

「いなりチキン」とはいなり寿司とガーリックチキンのセットであった。

しかし、いなり寿司はよくあるキツネ色ではなく、白に近い油揚げに包まれている。


形も関東で売られている俵型とは異なり、関西に多い三角形。ごまがかかっているが、具などは一切入っていない。


そしてガーリックチキンは、ガーリックの香ばしさMAXで食欲をガンガン刺激してくる。


ちなみにこのガーリック臭の強さは、室内にあったらその存在が一発でわかるくらい、パンチが効いている。ただ、ここまでは普通の関西風いなりと、ガーリックチキンがパックに詰められているだけ。


このまま普通に食べるということなのか? さっそく、ガーリックチキンから食べてみることに。


うん、冷めているが普通に美味しい。次にいなりを口に運ぶと……。

ん? これは……。


いなり自体は関東のものとは違い、油揚げの出汁の甘さが抑えられている。口の中に残っているガーリックの風味と、不思議なハーモニーを醸し出しているのだ。


これは、バクバク行けてしまうぞ!


その後、あっという間に2個ずつを食べてしまった。その後、無意識に私が取った行動。それは……。


お店に戻っていた。


そして、追加で『いなりとチキンのセット(各1個入り)』(230円)を注文。


今度は同時に食べてみる。


改めて、うめぇーー!!


ガーリックチキンといなり寿司が、こんなに合うと思わなかった。これが沖縄、しかも中部だけに広まっているのが、にわかに信じられない。

どうして、これが全国的に知られていないのか不思議だ。そんな疑問を抱えつつ、帰路に着く。



・自宅で試してみた

それでは、関東のいなりとガーリックチキンは合うのか? そう思いスーパーに行き、ガーリックチキン代わりの「にんにく醤油 鶏唐揚げ」と、いなり寿司2種を購入。


いなり寿司は、普通のものと「黒糖いなり」で試してみることにした。ちなみに条件を一緒にするため、チキンは温めず冷めた状態でいただく。


最初に、普通のいなりと一緒に食べてみる。


さっそく、口に運んでみると……。

……微妙。


ガーリックチキンの味は、あまり変わらなかった。が、正直なところ美味しくはない。沖縄で食べた一体感が、このいなりでは再現できていないように感じる。おそらく、油揚げに含んでいる出汁がガーリックチキンとの相性が良くないのであろう。


次に、「黒糖いなり」の方で試してみる。


こちらは、どうなのか?


おおおーーー!!!!!


こちらの方が断然うまい。黒糖の甘みとガーリックのパンチ力……一見相反するように感じられるが、予想に反して見事に口の中で融合している。沖縄で食べたあの意外性を黒糖いなりとの組み合わせによって、個人の感想だが再現できているように思えた。

そんなわけで、うるま市発祥のソウルフード『いなりチキン』は、関東でも「黒糖いなり」と組み合わせることで、かなり近い味になるのではないだろうか? という検証結果になった。

もし近所のスーパーのお惣菜コーナーで、この2つの食材が並んでいるようであれば、ぜひ購入して一緒に食べてみることをオススメしたい。新しい発見に出会えるぞ!


・今回ご紹介した店舗の詳細データ
店名 あらかき天ぷら店
住所 沖縄県うるま市田場138
時間 8:00~17:00
定休日 火曜日

執筆:耕平 
Photo:RocketNews24.