趣味のお菓子屋巡りや、取材のためにグーグルマップで行きたい店を保存しているのだが、地図を見ながらあることに気づいた。
それは「荒川区がパリ化しているかもしれない」という疑惑である。
ここ数年で、ものづくりの町・蔵前や清澄白河におしゃれな店が増えてブルックリン化したのも記憶に新しい。ひょっとしたら次は「荒川区のパリ化」なんじゃないか……?
私は都電荒川線に飛び乗った……。
・荒川区のパリ化
いきなり「荒川区のパリ化」とか言われても何がなんだか分からないと思うが、荒川区周辺にオシャレな洋菓子店やカフェが増えているのである。
しかもフランス菓子の店とか、パリやヴェルサイユにあるパティスリーの日本支店、ティールームなど本格的な店ばかりなのである。
いったい荒川区で何が起きているのだ……?
【小台〜尾久周辺】
まず、アツいのが都電荒川線の小台駅周辺。
本格感のあるパティスリーやカフェはすべて駅からは離れていて、商店街や住宅街の中にあるのも特徴的である。
・メゾン・ラ・ヴァレンヌ
最近、スイーツ好きの間で話題となっているのが都電荒川線の小台駅から徒歩10分の商店街の中にある「メゾン・ラ・ヴァレンヌ」。
なんとこの店、パリとヴェルサイユに続いて、なぜか荒川区の東尾久にオープンしたという。職人さんなどほぼ全員がフランス人だという本気のフランス菓子店である。
訪れた日は運悪く伊勢丹の「フランス展」(2024年4月24日〜30日)出店準備のため臨時休業……。
伊勢丹の催事に出店するくらいガチなフランス菓子の店ってことなので、今度リベンジしたいと思う。とほほ。
・ベーカリーティールーム ニコ
こちらは小台駅から近い住宅街の中にある紅茶とパンの小さなティールーム。いろんな産地の紅茶を扱っていて、本格的な紅茶が楽しめるのが特徴。
国産紅茶の「牧之原」を頼んだのだけど、桃のような甘い香りで美味しかった。美味しい紅茶がポットにたっぷりはいって出てくる。
【町屋周辺】
もうひとつ、激アツのスポットが町屋駅である。町屋は駅前に長い商店街が続いているのだが、そこに突如としてパリの風が吹くのだ。
・Abbey
町屋駅から徒歩5分ほどの場所に突如として現れるめちゃくちゃオシャレなスコーン専門店「Abbey」。
スコーンならパリじゃなくてイギリスじゃないかと総ツッコミを受けそうだが、許してほしい。外観も内装も海外のよう……。
スコーンもジャムも砂糖ではなくラカントという甘味料を使っている。変わったフレーバーが多くてたのしいぞ。
・スカイプロバンス ベーカリーカフェ
町屋駅から徒歩10分ほどの場所にあるベーカリー。こちらは南フランスで修行したオーナーがカヌレやバゲット、シュトーレンなどを販売している。
店に向かう途中に、ここのパンを買ったと思しきヨーロッパ系の人とすれ違った。人気店らしく、夕方になると売り切れ多し。
いちじくとかナッツ、ハムなどを組み合わせた珍しいパンが多くて、レーズンパンを買ったら、洋酒ががっつりきいた大人の味でビックリした。
この他にも日暮里方面や南千住方面にもティールームやパン屋さんがたくさんあるのだが、スペースの関係上、別の機会に紹介したいと思う。
・フランス文化を伝える店で聞いてみた
さらに、町屋駅前にフランス文化を伝えるお店「La petite française」なるお店も発見。
ここではフランス人講師を招いたワークショップやフランス産のワインやチーズの販売をしているそうな。こんな店があるってことは、やはり荒川区にはパリの波が来ているのではないのか。
お店の方になぜ荒川区周辺にフランス系の店が増えているのか尋ねてみたところ……。
「荒川区は伝統工芸が多くて、フランス人はそういうのが大好きだから。紹介するとこの町に住みたがる人も多い」
という答えが返ってきた。フランス人はものづくりの町を愛する……ということか。勝手に荒川がまるでセーヌ川のようだから……などというアホな答えを期待していた。
・町の中に根付くフランス
印象的だったのは、今回訪れたお店の多くがよそ行きの店っぽくなくて完全に町に溶け込んでいる……という感じだったこと。
味は本格的でもインスタ映えのために訪れるカフェって感じじゃなくて、地域の人が普通にパンを買いに来たり、お茶しに来るような庶民的な店構えになっているのだ。
ハッ、そういえば都電荒川線も数年前に「東京さくらトラム」などという別称が付けられたけど、トラムってパリの路面電車のことじゃないか……!
さらに都電沿線はバラを植えてて、バラの名所でもあるんだよなあ。考えれば考えるほど、荒川区はパリっぽい気がしてきたぞ。
池田理代子先生の次回作は「ヴェルサイユのばら」ならぬ「荒川区のばら」だったりしてね……。
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.