「饒平名」「仲村渠」「大工廻」……これが何のことかお分かりだろうか? そう、これらは沖縄発祥と言われている名字だ。ちなみに左から「よへな」「なかんだかり」「だいじゃく」と読むらしいが、同じ漢字でも複数の読み仮名が存在するとのこと。
沖縄では割と知られている名字だったりするが、本土の人間から見ると非常に珍しい名字だ。そんな名字の方々は県外を出てから普段の生活において、どのようなメリットやデメリットがあるのか?を調査すべく、珍しい名字を持つ沖縄出身のミュージシャンに話をうかがってみたぞ!
・沖縄地域限定のハンコがきっかけ
私(耕平)が沖縄の独特な名字に興味を持ったきっかけ。それは以前、石垣島に訪問した際にふと立ち寄った中心街のアーケード商店街「ユーグレナモール」内にある『タウンパルやまだ』という書店にあった。
その店内にあるハンコ売り場には、本土では見られない珍しい光景が! それは……
「沖縄県地域版」のエリア!
そこには「赤枠内は沖縄版の苗字です 本土姓は赤枠外をご覧下さい」と書かれている。
さすが沖縄だ。本土では既存品には無く、特注しなければならない名字がズラリ。
中には「西村」「新田」や「浜田」など、本土でも比較的メジャーな名字も並べられていた。
・約90000人に1人の名字の人に聞いてみた
その様子を見て、どうしても気になってしまったことがあった。それは……
「沖縄の珍しい名字の人って、上京したら日常生活にどう影響するのだろう?」
ということ。そんな疑問がずっと頭の片隅にあったのだが、先日ふとしたことがきっかけで、私が人生で聞いたことがない名字の方にインタビューさせてもらえることになった。
その珍しい名字の持ち主とは、石垣島出身のミュージシャン『平安山 高宏(へいあんざん たかひろ)』さんだ。
平安山さんは東京、大阪、沖縄を中心に全国各地で活動する音楽ユニット「ノーズウォーターズ」で『ヘンザン』という名前で、ベーシスト兼ボーカルを務めている。
他にも『ヘンザン☆タカヒロ』名義でソロ活動をしていたり、育児奮闘音楽ユニット『COSODATES(コソダテーズ)』のメンバーだったりと幅広く活動しているミュージシャンだ。
ちなみに「ノーズウォーターズ」では、昨年の11月に石垣島で1000人規模の30周年記念ライブを成功させたばかりだ。先日も東京の小岩にある、関東最大級の沖縄料理ライブ居酒屋「居酒や こだま」でライブを行ない、満席の観客を大いに沸かせた。
私も観客としてこのライブに参加して、この時に初めて「ヘンザン」さんの本名を聞いたわけだが、ネットで調べた情報では「平安山」という名字は、全国に約1400人しかいないらしい。日本の人口が1億2000万人強なので、だいたい90000人に1人という珍しい名字の持ち主だ。
しかも、そのうちの1300人は沖縄在住らしいので、本土には100人ほどしかいないとのこと。そうなると沖縄の人口は150万人に満たないくらいなので、本土では実に約120万人に1人という超希少な名字であることがわかる。
・珍しい名字で得したことと大変なこと
というわけで、ずっと疑問に思っていたことをうかがうべく、平安山さん(以下「ヘンザンさん」)に話を聞いていこうと思う。
耕平「それでは、よろしくお願いします! まず事前にネットで調べたのですが、『平安山』という名字は、日本で1400人くらいしかいないそうですね。ネットの情報なので、真偽は定かではないですが」
ヘンザンさん「そうなんですか? 石垣島に住んでいる時は、他にも平安山という名字の人は1人いて、当時は珍しいとは思わなかったですね。珍しい名字だな……と感じたのは上京してからです」
耕平「僕も初めて聞いた名字です。沖縄では北谷町(ちゃたんちょう)の方に多いみたいですね」
ヘンザンさん「ただあっちの方では、同じ漢字でも僕のアーティストネームである「ヘンザン」と読む方が多いみたいですね。「へいあんざん」は珍しいようです。僕自身も上京して30年近くになりますが、表札で同じ名字を1度だけ見たことあるだけで、実際に会ったことは1度もありません」
──ここまでお話をうかがっても、やはり希少な名字ということが確信できる。次に日常生活でのメリット、デメリットについて聞いてみた。
耕平「その珍しい名字で、得したことってありますか?」
ヘンザンさん「やっぱり “覚えてもらえる” ってことが大きいですね。「THE BOOM」とか憧れのバンドにお会いした時にも名字で覚えてもらえてて、それがきっかけでBOOMさんのラジオに出演させてもらったこともありましたから」
耕平「たしかに。僕も一発で覚えて今回インタビューさせてもらおうと思って、時間を作ってもらいました」
ヘンザンさん「他にもノーズウォーターズのライブのMCで、相方のマストがメンバー紹介で「名字が平安山って珍しいのに、名前が高宏って普通かい!」とか、「普通あだ名とかで、名字と名前で “キムタク” みたいな感じで略されるのを、平安山からヘンザンと略されても名字だけ」みたいにイジってくれることでお客さんが盛り上がってくれることですかね」
耕平「逆に大変なことなどのデメリットがあれば、教えてください」
ヘンザンさん「いろいろと面倒くさいことですね。そもそも「へいあんざん」って言いづらいんですよ。例えば、カラオケとかレストランで名前を書いて待たなくちゃいけない場所だと、連れに名前を書いてもらったりしています」
耕平「なるほど……確かに店員さんも一瞬「?」ってなってしまいそうですし、名前を呼ばれたら周りの人もザワつきそうな感じはします。それでも状況によって書かなくちゃいけない場合は、どうしているんですか?」
ヘンザンさん「身分証が必要な場所では、もちろん本名で書くんですが、そうじゃないところは「平安(ひらやす)」とか「平山(ひらやま)」とか偽名を使ってることが多いですかね」
耕平「いろいろと大変そうですね。でもインパクトに残るというのも大きいメリットだと思いました。今日は、ありがとうございました!」
──ということで、いかがだっただろうか? 私自身、ずっと気になっていた疑問が生で聞けたので、メチャメチャ勉強になったぞ!
今回の取材で沖縄独特の名字にもっと深掘りしてみたいな……と思ったと同時に、平安山さんの今後の音楽活動もウォッチしていこうと思った次第だ。
参考リンク:「ヘンザン☆タカヒロ」Instagramページ、「ノーズウォーターズ」Instagramページ
執筆:耕平
Photo:RocketNews24.
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