何気なく過ごす日常の景色において、目にしているはずなのに見落としている。そんなことがよくある。たとえば、東京・渋谷スクランブル交差点の「天津甘栗」のお店だ。その看板を何度も目にしたことがあるはずなのに、私(佐藤)は近年まで甘栗を買ったことがなかった。
同じようなお店が上野アメ横にもある。アメ横を訪ねたことがある人なら、きっと目にしているはず。「都まんじゅう」の看板を。何十回、何百回と来ているのに、私は1度も食べたことがなかった。そこで、初めて都まんじゅうを買ってみた!
・ずっと見ていた看板
近年のアメ横は屋台型の飲食店が増えて、多国籍化が進んでいる。とくに中華系の店舗がかなり増えて、そのほかアジアを中心としたさまざまな国のグルメを楽しむことができる。コロナも明けて、以前の賑わいを取り戻したと言っていいかもしれない。
そんななかで、「都まんじゅう本舗 かるた家」は静かに営業を続けている。私の知る限り、10年以上はここでまんじゅうを販売しているはず。数なくとも、私が現職に就いてからの14年は間違いなく存在している。
たしかめてみると、2015年にアメ横を取材した時にもちゃんと看板が写っている。調べたところ、その昔は上野公園の近くに店舗を構えていたそうなのだが、2008年に現在の場所に移転。以来、この15年続いているのである。
・見ているはずなのに
アメ横を訪ねたことがある人なら、みんなあの看板を見たことがあるはず。そう考えた私は、編集部メンバーに「都まんじゅう、知ってる?」と尋ねてみた。すると知っていたのはP.K.サンジュンのみ。あとのメンバーは食べたことがなく、店のことも知らなかった。
ウソだろ!? アメ横に行ったら、絶対目にするはずなのに。食べたことがないのはわかるとして、見たことがないはずがない。中澤星児にいたっては、「僕は絶対見たことがないですねえ」と豪語している。
最近よくアメ横に行ってるやん。見てるんだよ、気づいてないだけなんだよ。変化の激しいアメ横の街にあって、かるた家はしっかりと地に足をつけて営業している。街の景色に馴染み過ぎていて、派手さに目移りする人には気づきにくいのかもなあ。
・素朴な美味しさ
販売商品は都まんじゅうのみで、最小単位の10個入りが税込600円。つまり1個60円である。
ということで、20個入り(税込1200円)を買ってきた。ちなみに賞味期限は常温で1週間とのこと。結構長くもつんだね。
「都まん」の焼き印の入ったまんじゅうは、かわいいひと口サイズ。カステラのようなふんわりとした生地で、ムラなく焼き上がった表面のキツネ色が美しい。
中には白餡がしっかり詰まっている。餡のキメはとても細かく、口に入れるとほのかな甘さを残しつつ静かに溶ける。1個食べるともう1個と、続けて手が伸びてしまう美味しさだ。
素朴で美味しいまんじゅうがこんなに身近にあったのに、その味を知らずに過ごしてきて、なんだか損をした気分だ。私と同じく、今まで素通りしてきた人は試しに購入してみてはいかがだろうか。1度食べたら病みつきになるぞ。
・今回訪問した店舗の情報
店名 都まんじゅう本舗 かるた家
住所 東京都台東区上野4-9-13
時間 10:00~20:00
定休日 火曜日
参考リンク:上野がすき、産経新聞
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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