新宿を歩きながらこう考えた。かぶりついたら端が落つ。ソースに掉させば流れ出る。意地を通せばバラバラだ。とかくにハンバーガーは食べにくい。
・どうやっても食べにくい
食べにくさが高じると、こぼさないように食べてみたくなる。こぼれそうになったところから先に食べてみたり、フォークやナイフを使って食べてみたり……。これらは誰もが一度は試みることではないかと思う。
そして、どうやっても食べにくいと悟った時、私(中澤)はある素朴な疑問にぶち当たった。「なんでこんなに食べにくいのか」と──。
・油断してる
それはバンズとバンズの隙間がガラ空きだからだ。例えば、同じような構造の食べ物でもホットドッグやサンドイッチは食べにくくない。ホットドッグはちゃんとパンでガードされているし、サンドイッチは隙間が密着しており、なおかつ具も接着的な役割をするものが多い。
それに比べてハンバーガーはどうだ。大きいパティをバンズに接着するのに、あのちょっとしたケチャップは明らかに無理がある。パティが二段、三段になると言うに及ばず。もはや「こぼせ」と言わんばかりに脇がノーガードだ。お前、油断しすぎだろ。ボクサーだったら一発KOだぞ。
・矛盾
そもそも、手で持って簡単に食べられるのが特徴の料理なのに食べにくいってどういうことだよ? かぶりついてレタスが落ちる度、ソースが指につく度、そんなハンバーガーが内包する矛盾に打ちひしがれる。「この料理は本当にこれでいいのか?」と。
逆に言うと、ハンバーガーには絶対にもっと伸びしろがあると思う。ファストフードの代名詞的存在になっているから、みんな「そういうもんだ」と思っているだけではないだろうか。そして、ハンバーガー自身もこんなもんだと思っているのではないだろうか。
・諦めるな
それは違うぞハンバーガー。もっと冷静になれ。デカくなる以外にも成長の可能性は残されているはずだ。結果がついてこないこともあるだろう。今は自暴自棄になってヤケ酒の毎日かもしれない。ただ、それは周りが決めた限界であってお前の限界ではない。ハンバーガーよ、お前はもっとやれるはずだ。
と、そんなことを考えながら歩いていたらハンバーガーが食べたくなってきた。ちょうど目の前にはマクドナルド新宿南口店が。
・食べにくくとも
入店しててりやきマックバーガーを食べてみるとひと口目でレタスがこぼれた。ふた口目でソースとマヨネーズもこぼれた。やはり食べにくいが……ぽっかり空いた心の穴をまん丸なポークパティに埋められるようである。その柔らかい食感と甘辛いソース、マヨネーズの暴力的なコンビネーションに、これが食いたかった気さえした。
食べにくくとも、俺はこれで行く。そんな意志めいたものが伝わってきた。もはやハンバーガーに迷いは感じられない。OK、それならもう何も言うことはない。お前がそのやり方でどこまでやれるのか見守ることにしよう。
その瞬間、詩が生まれて画(え)が出来る。それがこの記事だ。余が胸中の画面はこの咄嗟の際に成就したのかもしれない。ハンバーガーウメェェェエエエ余オオオ!
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.