2023年9月22日に公開が迫った『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』。あの世界一有名な亀ブラザーズの新作映画だ。
公開に先んじて鑑賞させてもらったのだが、これはCGを用いたアニメ表現の新時代か、あるいは最新の進化的な、なんかそういうモノな気がするぞ……!
例えば『スパイダーマン:スパイダーバース』でアニメ表現の新しさにビビった人なんかは、このタートルズ新作もブッ刺さるだろう。
・熟した作品
タートルズは84年に原作のアメコミがスタートして以降、あらゆる形式で関連作品が作られまくってきた。日本でも全世代がそれなりにどこかしらで触れる機会がある作品だろう。
登場人物の細かい設定は作品ごとに変わるが、タートルズが正義の味方として悪と戦うという展開は一貫していると思う。今作もその通りの内容なのだが、オリジナルの新要素も持ち込んでいる。
最も大きいのは、スーパーフライという蝿のミュータントがNYを牛耳る新ヴィランとして登場する点だろう。おなじみのシュレッダーではないのだ。
その他はビーバップ&ロックステディやレザーヘッドなど、お馴染みのヤツらが、だいたいは日本で90年代にやっていたTVアニメと同じような立ち位置で、しかしちょっと違う設定で登場する。
彼らはスーパーフライ率いるヴィラン軍団のメンバーで、タートルズが悪の企みを阻止するべく正義の味方として戦う。
そんな安定の展開の途中で、ちょうど良い塩梅に「あ、そうなるんすか」みたいな変化球が含まれているので、そこはお楽しみに。
・表現がやべぇ
ということでストーリーは、まあまあお約束なのだが、3Dアニメとしての表現はバチバチに新しいものだった。
『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』は、2D風テイストがマシマシな3DCGのアニメ。同じカテゴリーだと、『スパイダーバース』シリーズのスゴさが記憶に新しいと思う。
その『スパイダーバース』と比較して、『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』のセンスは、同等のキレ具合を有していると確信している。
ちなみに私は日本の深夜アニメを毎期全て3話までチェックし、そこから先は生き残ったものだけ見るタイプ。
アニメに関する経験値は平均的な消費オンリーのオタクレベルだと思うのだが、『スパイダーバース』の表現は、ちょっと今まで見たことがない代物だった。
そしてこの新作タートルズも、ちょっと今までに見たことがない代物だったのだ。
そうカメラを動かすってマジか!! とか、そこをゴリゴリにデフォルメして、そっちを描き込むのか!! とか、100分間ずっと自分の中に新しい表現の引き出しが追加されていく感じ。
しかもそれらが全て、見た瞬間にセンスの良さに一切の疑念がわかない説得力を有していてヤバいのだ。初体験の表現技法に1フレームで啓蒙させられるというのは、凄まじいことだと思う。
私がアンパンマンしか見たこと無かった年齢1桁のキッズの頃に、チャンネルを変えていて偶然マクロスの空戦を目にした時並みの、力強い初体験感があった。
ということで、『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』。シンプルにタートルズの新しい活躍を見たいファンや、初タートルズなキッズなどは普通によくできたアメコミヒーローアニメとして楽しめる仕上がりだ!
そしてアニメを見慣れている人は、視聴体験として「ようわからんけどなんかすげぇの見た」みたいな感想に至るのではなかろうか。亀の兄弟は突然変異止まりだが、本作の3Dアニメ表現は進化だと思う。
参考リンク:ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!、Instagram @paramount_japan
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.