関東と関西のつゆは色が違うというのはよく言われる。ゆえに、関西風つゆを名乗るところは色が薄めだったりするわけだが、大阪出身の私(中澤)は東京の関西風つゆの店であんまりピンと来たことがない。お湯みたいになってるところが多いのだ。
ちゃうねん。色と一緒に味も薄くなってるわけではないねん。確かにそういう店もあるけど、ウマイとこはちゃんと旨みもコクもあんねん。この度、意外なところでその味に出会った。
・マジ帰ってお布団にダイブしたい
ゲリラ豪雨の時期である。朝、家のドアを開けた時は晴れていたのに秋葉原で乗り換えようと思ったらヤバイくらい雨が降っていた。駅の外側に壁ができたみたいである。雨のウォールマリアや。
大気の乱れからかダルさも半端じゃない。もう帰っていいスか? 帰って寝ていいスか? このまま職場に行く気が完全に失せたため、先日見かけて気になっていた店で朝ごはんを食べてみることにした。
・おにぎり屋だと思いきや
確か、中央改札を出た右手、ヨドバシ側から電気街側に抜ける秋葉原駅東西自由通路にあったはず。ローソンを越えて通路の中頃で見たような……と歩いていると、あった。店頭のガラスケースに並んだ綺麗なおにぎり。ちょっと手間がかかってる最近流行りのおにぎり屋という感じ……
と思いきや、改めてよく見ると暖簾に「肉そば」と書かれていた。まさかそば屋だったとは。確かに、おにぎり屋のオマケみたいな感じで横に店内飲食スペースがある。どうやら店の名前は『一のや』というようだ。
・隠れ駅そば
秋葉原駅の駅そばと言えば、『新田毎』と『そばいち』、そして昭和通り口の『いろり庵きらく』が目立っているが、こんなところにもそば屋があったのか。秋葉原駅の隠れ駅そばと言えるだろう。
しかも、「肉吸い」まである。肉吸いとは簡単に言うと麺抜きで玉子を入れたもの。「大阪の庶民派グルメとして知られている」と、亀沢郁奈記者に発祥の店に連れて行かれたのは先日のこと。食べてきたばかりなので味の記憶は新しい。豚汁のお吸い物バージョンみたいな感じで朝食べたいと思ったんだよな。まさか、東京の駅そばで出会うとは。
・見かけによらない味
というわけで、「肉吸い(税込み670円)」を注文してみた。つゆの色はやはり透き通っている。とは言え、麺がなくて、よりつゆの味がメインとなるだけに、冒頭で述べたようなお湯系だった場合かなり微妙。心なしか博打感が出ている気がするのだが、はたして吉と出るか凶と出るか。食べてみたところ、ちょっとビックリした。
出汁の味がしっかりするばかりか肉の甘みまでするのである。ちゃんと味に奥行がある時点で、もうお湯系ではないことは確定なのだが、それにしたってガチ感がある。いや、ガチ感があるどころか、なんなら大阪で食べた肉吸いよりウマイかもしれない。
夏限定メニューとして「牛肉鬼おろしぶっかけ」などの冷やし系肉そばなども登場している『一のや』。港屋インスパイアではない、関西系肉そばの専門店と言っても過言ではなく、今まで秋葉原になかったタイプのそば屋である。これはうどんに変えてもイケるに違いない。
・憂鬱な朝に
結果として、頭がスッキリして出社する気になった私。駅を出ると雨は止んでいた。相変わらず雲は不穏だが悪くはない。曇り後雨でもいつかは晴れ間が見えるだろう。
憂鬱な朝にもぴったりなこの店。もともと、肉吸いを注文した吉本新喜劇の俳優・花紀京さんも、二日酔いで軽く食事したかったことが理由だというし、昨日の疲れが抜けない時の一杯にいかがだろうか。
・今回紹介した店舗の情報
店名 肉そばとおにぎり 一のや アキバトリム店
住所 東京都千代田区神田佐久間町1-6-5 アキバ・トリム1F
営業時間 7:00~23:00
定休日 無休
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.