TwitterにインスタにTikTokに……。SNSはバズで溢れている。

そんな中でも最近、人気があるのが「QOLが爆上がりするライフハック系のネタ」である。QOLとは Quality Of Life の略で、直訳すると「生活の質」ってこと。手軽にできて簡単に生活の質が上がる。そんなの理想的でしかない。

SNSにはそんな裏技めいたバズネタがあふれている……けれど、指先ひとつで「いいね」しただけで、実際にそれをやってる人は少ないんじゃないか。それに、バズネタの中にはウソ・大げさ・紛らわしいものだって紛れている可能性もある。

というわけで、バズったネタを実際に検証してみるのが本企画。初回は「帰宅してすぐに風呂に入るとQOLが爆上がりする」というネタである。

・金のかからないバズネタ

この「帰宅後即風呂」はここ数年で何度か見かけている鉄板のバズネタである。


「帰宅してすぐに風呂に入るとすべてがうまく回りだす」
「どんなライフハックより効果があった」
「まじで人生変わった」


などなど、家に帰ってすぐに風呂に入ることのメリットがやや大げさ気味に語られる。日々のルーティーンの順番を変えるだけでお金もかからないので、手軽なネタといえる。だからこそ、毎回とんでもなくバズるのだと思うが。

でも、それがなぜなのか、科学的な根拠であったり、それによって生じたメリットの具体例がそこまで書かれていない。


・なぜか面倒くさい風呂

で、これがなんとなく「効果がありそう」な気がしてバズるのは、多くの人にとって風呂が面倒だからに尽きると思う。

メイクを落とす、髪を洗う、体を洗う、さらに髪を乾かす……風呂ってとにかくタスクが多いし、意外と体力を使う。いけないとわかっていても、入るまでついダラダラしてしまう。私も基本的に風呂に入るのは寝る直前になってしまう。

あがったあとはサッパリして気持ちいいし「風呂に入らなくて後悔することはあっても、風呂に入って後悔することはない」のだが、なぜか風呂は面倒くさい。



・実際に1週間やってみる

やることは簡単。家に帰ったらすぐに風呂に入る、それだけである。実証期間は約1週間。日曜から実際にやってみたいと思う。

【日曜日】
家に帰ったらすぐに風呂に入れるように帰宅時間を21時に決めて、事前に予約タイマーで風呂をためた。この日は夏真っ盛りという暑さで、たくさん散歩して汗をかいた状態で帰宅し、即入浴。風呂からあがったらまだ22時。「私はすぐにでも寝れるんだぞ」という妙な自信にあふれていて、珍しく24時前に就寝。

【月曜日】
在宅勤務の日。下手すると一日家から出ないので「帰宅後即風呂」の概念が2日目にしてゆらぐ。とりあえず21時に風呂に入ると決めて、それまでに仕事と食事の支度を終えるように段取りを組んだ。風呂からあがると、平日の22時にすべてのタスクが終わり、寝るまでの自由時間を得たという解放感がすごい。24時にベッドに入れた。

【火曜日】
在宅勤務の日。早く起きた喜びで朝から喫茶店に行く。今日も21時に風呂に入る段取りにしていたが、仕事が夜になって立て込み、さらにパートナーの帰宅も遅くなると連絡が入り、夕飯の支度などすべてのスケジュールが狂ってしまった。結局、風呂に入ったのは23時頃。人と暮らしていると即風呂ルールはむずかしい。

【水曜日】
出社日。一応、風呂を21時にセットして出社。不規則な生活だと帰宅後即風呂が難しく、1日のスケジュールを完全に風呂中心で組んでいることに気づく。風呂に振り回されているといっても過言ではないかもしれない。急いで仕事を終わらせ、外食して帰宅後即お風呂。

【木曜日】
とりあえず時間は気にせず、帰宅したら即風呂に入るというルールをゆるめた。夏は汗をかくので早めに風呂に入ると疲れが取れやすい気がする。帰宅後即風呂にしてから、24時頃にはベッドに入れている。遅寝の自分としては奇跡的。だんだん早めに風呂に入る生活に慣れてくる。

【金曜日】
朝から取材で外出。とにかく蒸し暑い日で、外を歩き回って汗だくに。夕方頃、外出先から一度帰宅。仕事がまだ終わっていない場合の風呂ルールはどうするか……と悩んだ結果、シャワーを浴びて軽く汗を流すことに。

ドロドロの汗を流しただけで疲れが取れたので即シャワーは正解だった。その後は深夜まで仕事。髪を洗う気力はなく寝てしまったが、帰宅後にシャワーを浴びていたのでそこまで疲れた感じはない。

【土曜日】
休みの解放感もあって遅めに帰宅。「明日も休みだし、まあいいか」という気のゆるみと、歩き疲れたのでベッドでダラダラしてしまい、即風呂ルールが守れず。風呂が面倒になり、寝るのが遅くなってしまった。生活のリズムが崩れるのは良くない。



・メリットとデメリットは…

というわけで一週間やってみた感想をまとめると


【メリット】
・帰宅後、即風呂に入ることで疲れが取れる
・帰宅時間が早いほど風呂のあとの自由時間も増える
・寝る準備が整っているので早めに眠れる
・睡眠時間がしっかり取れるので次の日、寝不足になりづらい
・生活のリズムがととのいやすくなる


【デメリット】
・家族と暮らしていると帰宅後、即風呂に入るのが難しい
・疲れている日などは実行に鋼の意志が必要
・そもそもの帰宅時間が遅いとメリットが薄い
・在宅勤務や主婦(主夫)だと帰宅時間の設定が難しい


このメソッドがアリかナシかで言えば圧倒的にアリ! 早く風呂に入ることで24時頃にはベッドに入って寝るようになったので、生活のリズムが整ったのが最大のメリットだと思う。風呂に入らずに寝て次の日に体がバキバキになることや、慌てて風呂に入ることもなくなる。

ただし、帰宅して即風呂に入っただけで「人生のすべてが上手くいく」という程の効果はない。翌日に疲れを残さないという良さはあるけど、活力にあふれている……というわけでないし、子供がいる人や家族の世話をしている人は実践しづらいというのも気になるところ。

個人的に、早く風呂に入るよう習慣づいたのはいいことなので、このルーティンは続けていこうとは思う。


最終結論:生活の質はたしかに上がるけど「人生ぜんぶ上手くいく」はちょっと大げさ


と、こんな感じでじっくり検証していくので、バズネタで気になるものを見かけたら、リクエストボックスからの検証の依頼をお待ちしております。


執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.